TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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「財務3表一体分析表」(経営がわかる決算書の読み方)を読む

2009-05-31 17:04:33 | 今週の一冊



 国定克則著「財務3表一体分析表」を読みました。この著者はベストセラーになった「財務3表一体理解法」を書いておりその内容は、決算書の仕組みについての本でしたが、今回は経営分析の本です。

 新書版なので手軽に読める本です。「財務3表一体理解法」はあまり参考になりませんが、この本はためになるいくつかの点がありました。

1 経営分析は4つの指標を確認する
 ①ROE、②レバレッジ比率、③総資本回転率、④当期純利益率の4つです。私は経営分析するときは、①ROEでしたが、その内容は総資本利益率でした。この指標は③の総資本回転率×④当期純利益から構成されています。2つの指標はカバーできるものだということです。
 しかし、この本の①ROEは、当期純利益÷純資産合計となっています。つまり、割るのが総資産か純資産かの違いとなっています。
 ②レバレッジ比率は、ギアリング比率として融資判断の時に活用した比率でした。
 
 比率は経営分析の目的にによって異なります。この本の4つの指標は株主の意思を重視したものというのが私の感想です。特に①ROEはその典型と言えるのではないでしょうか。

2 損益計算書と貸借対照表をBOXでビジュアルに理解する
 この本を読む価値があるのは、各企業の損益計算書、貸借対照表をBOXでビュジュアルに表し表現していることです。BOX表示することで資産、負債、資本、利益やその趨勢がざっくりと理解できます。数字を見て理解するより理解が速まります。

3 決算書はまず最初に「利益剰余金」と「有利子負債」とチェック
 優良企業は利益剰余金が積み上がっています。有利子負債も少ない企業が一般的です。この2つをまず見ることでその企業がどのような経営状態かがおおよそ理解できるということです。
 
4 総合商社は「投資家」の視点でビジネスを行っている
 この本では電機業界、飲食業業界、総合商社業界などをBOXで分析していますが、その中で総合商社に分析が私には新鮮でした。
 それは、最近商社は「投資家」としてのビジネスが全体の多くを占めていることです。三菱商事と三井物産の決算書の資産の部の「投資・長期債券」が30%を占めています。利益の30%が投資がらみの利益となっています。まさに投資ビジネスです。

5 経営分析して見えてくるのは「経営者の意思」
 ①無借金経営型(パナソニック、吉野家など)、②本業成長型(マツダ、伊勢丹、シャープなど)、③M&A拡大型(ソフトバンク、ゼンショーなど)、④投資家型(三菱商事、三井物産など)、⑤金融事業進出型(トヨタ、日産、ホンダ、ソニー、楽天など)、⑥事業再建途上型(三菱自動車、三洋電機など)
 
 決算書(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)には経営者の経営方針、経営戦略が反映しているのが読み取れるということです。

 この決算書から経営者の意思が読み取れるまでになれれば、経営分析に精通したと言えるのではないでしょうか。決算書は経営者の意思という指摘は、経営戦略中心の経営方法になじんできた私には、経営分析から経営戦略も見えるということでたいへん新鮮でした。