TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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PFI方式による病院経営も経営難に-近江八幡の市立病院-

2007-11-23 21:14:12 | 病院経営
 滋賀県近江八幡市の近江八幡市立総合センターの経営が悪化している記事が「日経ビジネス・2007/11/26」にでていました。今日は、自治体病院の経営再生について思うところを書きます。

 記事によりますと、近江八幡市の病院事業会計は長く黒字が続いていたのですが、新しい医療センターが本格的に動き出した平成19年度の収支は24億円の赤字となる見通しとなるようです。旧病院の閉鎖に伴う固定資産除却損で赤字が膨らんだ面もありますが、その影響を除いても赤字幅は10億円を大きく上回ることになります。

 全国の自治体病院は赤字が圧倒的に多いので、なぜこの病院のことが話題になっているかというとPFI方式による病院だからです。PFI方式は、公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に、従来のような公共が直接施設を整備せず、民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法です。
 民間の知恵を生かすことで、自治体の財政負担軽減とサービスの向上を同時に実現する「魔法の杖」になるはずでした。

 近江八幡市は老朽化した病院の移転、新築を平成13年にPFI方式で行うことを決定しました。病院の建築と維持管理、医療行為を除く周辺業務の運営を民間の事業者に委託して、市が30年にわたってそのサービスの対価を払い、病院の根幹である医療部分は市が引き続き担うことにしたのです。

 市によると、当初考えてした事業の前提が大きく狂ったわけではないといいます。病院経営を成り立たせる経営指標は全国トップクラスだといいます。それではなぜ巨額の赤字となったのかは次のような記事が書かれています。

 建設物の保守管理費用が2564万円から2億289万円、設備の保守管理費用が3880万円から1億3343万円、リネンサプライ費用も3221万円から7990万円に膨らんだのです。旧病院に比べ建物と設備が充実したのだから、費用が増えるのはある意味当然ですが、豪華すぎる建物とサービスが病院経営の重荷になっているという指摘もあるようです。

 市は今後SPC(特定目的会社)と話し合い、市の負担の軽減につながる契約の見直しを求めていくようですが、SPC側が市の要望に応じられるか不透明です。記事では、長期契約を特徴とするPFIは当初の計画の甘さがあれば、後々悪影響が出てくる。財政負担を減らすはずのPFIが逆に財政を悪化させるという皮肉な結果を招くこともあると書いています。

 自治体病院の赤字の問題は地方自治が財政難になっている状況でおおきな問題です。全国の自治体病院への一般会計からの繰入金は5000億円を超えています。本来の収支を示す医業比率が100%以下の自治体病院がほとんどではないでしょうか。

 PFI方式は自治体病院の経営再生の切り札になる手法と思われているようですが、PFI方式で開業した高知医療センターの前院長が贈収賄で逮捕される事件も発生しています。この例のようにPFIの場合は官と民間企業の垣根が低くなり、癒着が生じやすくなるといわれます。
 また、雇用状況はSPCから下請け、孫受け状態で現場の労働者は低賃金に置かれる問題も生じているといわれています。このようにPFI方式にもいろいろ課題があります。

 自治体病院の問題は、住民への医療提供と地域財政という視点を常に考えていかなくてはなりません。公営企業の経営について今後も注目記事等を読んでいきたいと思います。