TSUNODAの経営・経済つれづれ草

身近な経営に関すること、経済に関することを思うままに

複合商業施設「トレッサ横浜」がオープンする-その施設が問いかけていること-

2007-11-30 22:21:36 | 経営全般
 今日は、12月5日に横浜市でオープンするトヨタ自動車の複合商業施設「トレッサ横浜」と、本日施行された改正都市計画法について思うところを書きます。

 「トレッサ横浜」はトヨタ自動車の関連会社㈱トヨタオートモールクリエイトが事業主体の大型複合商業施設です。12月にオープンする施設は全国3箇所だそうです。施設には、トヨタ系とダイハツ工業の計6販売店を集結させ、トヨタ車が購入・整備できる「オートモール」があります。また、衣料品店などの物販店のレストランなどさまざまの業種で構成されます。
 12月に北棟が先行オープンし、来年3月には南棟がオープンして220店舗全館オープンになります。年間1100万人の集客と350億円の売上高を見込んでいます。

 施設コンセプトは「暮らしにクオリティを求めるお客に発見・感動・集いの場を提供します。~クルマと愉しむ豊かな生活~」です。施設の外観は、横浜市の「緑のネットワーク」に呼応するように緑化に積極的に取り組むとともに、横浜市の姉妹都市であるフランスのリヨン市の街なみの雰囲気を取り入れ、内観は、自動車が入居する北棟の2、3階部分を吹き抜けとして、リヨンの街並みのイメージを表現しています。

 私がこの商業施設に注目したのは、トヨタ自動車が事業主体だからです。大型商業施設は自動車での来店が基本です。よく言われることですが、モータリゼーションの進展が郊外型大型商業集積の繁栄をもたらしました。そのモータリゼーションの進展は、日本の自動車メーカーの成長とともにあったと私は思うのです。自動車メーカーにとって、車で買物に出かける郊外型大型商業施設の興隆は望ましいことなのです。

 トヨタ自動車が複合商業施設を開発しているこちに、私はトヨタ自動車の意思を感じます。世界一のトヨタ自動車の経営課題は、今後も「成長」と「効率」を持続的に両立させていくことです。言い換えれば、今後も「世界一良いものを、世界一早く作り、世界一安く、世界一のサービスを提供する」ということになります。

 この「成長」と「効率」ということは、ワンストッピングで買物のできる郊外型商業施設に当てはまる言葉ではないでしょうか。

 一方、国は市街地の郊外への拡散を抑制し、街の機能をふたたび中心市街地に呼び戻すコンパクトシティの考えを打ち出しています。この考えの具現化がいわゆるまちづくり三法の見直しです。その三法の一つである改正都市計画法が本日、施行されました。
 内容は、延べ床面積が1万平方メートルを越すショッピングセンターなど大型商業施設の郊外への立地を原則禁止するものです。法改正で大型商業施設が出店できる用途地域は近隣商業、商業、工業の3種類に限定されました。立地が制限される土地の比率は改正前の13%から97%に拡大するそうです。

 私は、この改正まちづくり三法に中心市街地の活性化にどれだけ実効性があるか疑問です。日本は今までトヨタ自動車に代表されるように「成長」と「効率」を選択してきたのです。その結果がモータリゼーションの進展であり、郊外型商業施設の興隆だったのです。

 国を引っ張るリーディング業種として自動車メーカーに期待して、一方では自動車社会を抑制する改正まちづくり三法を立法する国の方針はどうゆうことなのでしょうか。

 トヨタ自動車の大型複合施設の建設は、成長と効率を国はとらないのですかと問いかけているように私には思えてならないのです。


地元企業サンデン㈱の牛久保会長がデミング本賞を受賞する

2007-11-29 22:51:35 | 地域産業
 総合的品質(TQC)の最高峰、デミング賞の本賞に地元企業サンデン㈱の牛久保会長が受賞したことに思うところを書きます。

 デミング賞は、日本管理技術の普及に努めたE・デミング博士にちなんで日本科学連盟が昭和26に創設した賞です。デミング賞の種類は、①デミング本賞(対象:個人またはグループ)、②デミング実施賞(対象:企業または企業の事業部)、③デミング賞事業所表彰(対象:企業の事業所)の3つあり、今回の牛久保会長の受賞は個人としての受賞です。

 サンデン㈱は、TQM(総合的品質管理)に力をいれている企業です。昭和61年に牛久保会長が副社長のときに全社を挙げてTQMに取り組み始めました。平成6年からはサンデン独自のTQMであるS・TQM(SANDEN・TQM)を始めました。平成10年にデミング実施賞を受賞、平成14年には実施賞から3年以上にわたってさらに向上した企業を対象にした日本品質管理賞を受賞しています。この賞は、サンデン㈱のほかにトヨタ自動車、新日本製鉄など20社が受賞している品質管理の最高の賞だそうです。

 サンデン㈱は伊勢崎市に住む者にとっては身近な企業です。私の近所にもサンデンに勤めている人が多くいます。サンデン㈱の下請企業も多く存在します。私は平成16年から18年まで業務で伊勢崎、玉村地区の企業を訪問していました。サンデン㈱についても、主にカーエアコン用コンプレッサーを製造している八斗島工場と主にショーケースを製造しているサンデンフォレスト赤城事業所を訪問しました。
 工場内には、QC活動のパネルが部署ごとに掲げられていました。たいへん熱心にTQC活動を実施している企業であるという印象を持ちました。

 それから、職場にはサンデン㈱を退職されたOBの方に労働相談員として仕事をしていただいておりましたので、サンデン㈱のことをよく聞かせていただきました。
 工場を見学したり従業員の話を聴いて、私はサンデンはトヨタ自動車をベンチマークしているのではないかと思いました。世界一のトヨタ自動車と企業規模は違いますが、両社とも愛知の田舎者と群馬の田舎者と言われることを喜んで受け入れる質素剛健を旨とするような企業です。

 牛久保会長は、非常にバイタリィティーに溢れる人だと聞きます。仕事で伊勢崎と東京を二往復するのも平気でこなしてきたと聞きます。英語も堪能で1人で海外に出張もしてきた人です。サンデンを統率してきた牛久保会長が今回の賞を受賞して、サンデンはより一層品質管理に力を入れていくことになると思います。会長のインタビュー記事でも、今回の受賞はお祝いでなく叱咤激励だと思い、改めて原点に立ち返り、「挑戦と改革」を実践していくと述べています。

 サンデンの成長は、従業員、取引企業、税収などいろいろな面で地元にとっては関わりのあることであります。企業として成長を続け地元貢献していってもらいたいものです。
 

 

 

日本マクドナルドが調理日時ラベルを改ざんした

2007-11-28 22:27:22 | 経営全般
 今日は、日本マクドナルドの都内フランチャイルズ(FC)店で調理日時のラベルを張り替えて販売していたことが明らかになったことに思うところを書きます。

 新聞報道などによると、日本マクドナルドがFC契約を結んでいる㈱アスリートが経営する都内の4店で、2年前から「サイドサラダ」などの調理日時のラベルを翌日のラベルに意図的に張り替えていたことが明らかになりました。
 マクドナルド本部は11月2日に改ざんを把握していたのですが、アルバイトは改ざんを認めたに対して、アスリート社員が改ざんを否定していたので公表をしていませんでした。しかし、27日にアスリート社員がラベルの張り替えを認めたため、FC契約を解除して、今後はマクドナルドが直営で店舗運営を行います。アスリート社員は、「廃棄するのがもったいないから」と理由を述べたと言います。

 日本マクドナルドの長田泳幸CEOは「もっと早い段階で確認できなかったことは残念。今回の出来事は偶発的な事故。」と述べ、組織的な関与は否定しています。

 10月末現在で、日本マクドナルドの直営店は2734店、FCは1063店で合計3797店あります。原田CEOは、直営店3、FC7の比率へと逆転させる方針を持っています。FCが拡大した場合には今回のような本社の目の届かないことが起きる可能性は残るのではないでしょうか。

 原田CEOは、日本マクドナルドを復活させた経営者です。その経営手腕はすばらしいもので名経営者と言われている人です。次のようなインタビュー記事(日経ビジネス・2007.4.2号、編集長インタビュー)を読みました。

1 「食の安全に関すること」について
 以下原田CEOの発言です。
 「そうです。安全という観点からすれば、14億人のお客さんのうち、1人でも事故があったら、会社が根こそぎひっくり返るリスクもあります。」
 原田CEOは「食の安全の信頼」がいかに大切であり、その信頼を失うことは企業の命運に関わることを十分に認識していたと思います。日本マクドナルドの食品管理はたいへん厳密ですので、今回のことは原田CEOには無念であろうと思います。

2「一度来店したお客を逃がさない工夫」について
 以下原田CEOの発言です。
 「最近になって、やっと商品のシナジー効果が出てきました。これまでは家族で来店した時に、お父さんと子供のメニューはあっても、お母さんの食べるものはなかった。そこで「サラダマック」を投入したわけです。すると「家族で行きましょう」となる。」
 この戦略商品のサラダにラベル張り替えの不正が判明したのですから、マクドナルドとしては痛手だと思います。

 今回の日時ラベル張り替えだけでなく、最近の一連の食品表示不正について、あまりに安全性に過剰になっているのではと思います。食べ物がなくてアフリカでは5秒に1人の子供が餓死している報道されています。安全性など関係ない地域もあるのです。
                     
 私たちは日本人は飽食の時代の真っ只中の生きています。その象徴が過剰な食の安全に対する反応ではないかと私は思います。  

 

 

「財務3表一体理解表」-決算表がスラスラわかる-を読む

2007-11-27 22:37:58 | 今週の一冊
今日は、国定克則の著書「財務3表一体理解表」-決算表がスラスラわかる-を読んだ感想を書きます。

 この本の見開きに、簿記を勉強しなくても会計の仕組みがわかる!ポイントは財務3表の5つのつながりと書かれています。この本の内容は、損益計算書、貸借対照表、キャシュフロー計算書がどのように繋がっているかをボックスで連結を示すことで説明しています。

 財務3表一体理解法は、取引が行われた時の3表(損益計算書、貸借対照表、キャシュフロー計算書)の関連をボックスを使い、いかに関連しているかで会計を理解しようとするものです。
 著者は簿記や仕訳を勉強しなくてもこのやり方で、理解が進むと述べていますが無理だと私は思います。私は簿記を勉強していますので、取引が生じた場合は頭に仕訳が浮かびます。「売掛金が現金で回収できた」は、現金×××円/売掛金×××円と仕訳して、同時に貸借対照表の資産の変動が思い浮かびます。費用や収益の取引の場合は、損益計算書の増加が頭に浮かびます。
 いずれにしろ仕訳がスタートなのです。仕訳ができて、それに伴う損益計算書、貸借対照表の変動が理解できると思います。

 著者の述べるようにこの本を読んですらすらと会計がわかるようになるとは思いませんが、私にとって勉強になったいくつかの点を書きます。

①「PL(損益計算書)は下から見るクセをつける」とコスト意識が身につく
 売上高営業利益率1%に企業にとって、営業利益3万円分を稼ぐためには、300万円を上げなければならない。1人3万円の研修を社員が受講することは、会社にとって300万円の売上を失うことに値する。
②「CSキャシュフロー計算書」は会社の基本的な活動を示している
 お金を集めて(財務CF)、何かに投資して(投資CF)、利益を上げる(営業CF)をCSは表している。
③CS見れば会社の戦略、状況がわかる
 CSの構成する営業CF、投資CF、営業CFのプラス、マイナスの組み合わせ(8通り)で会社の戦略、状況がわかる。たとえば、プラス、プラス、プラスの場合は営業活動で現金を生み出しているうえに借入などで現金を増やしている。さらに、固定資産や有価証券を売却している。将来の大きな投資に備えていることがうかがえる。

 それから、金融商品の時価会計、税効果会計、退職給付会計、減損会計、自己株式の取得(金庫株)について解説されていますので勉強になりました。しかし、税効果会計の基本について久しぶりに読みましたが難しいです。

 この本の「おわりに」で本書を読み終えた皆さんは会計の基本的な仕組みが理解できるようになったと思いますと書かれていますが、私はかなりの会計の知識がなければ本の内容を理解できないと思います。会計はコツコツと簿記を勉強し、財務諸表を勉強してわかるものだと思います。簡単に会計がわかるというこの本でさえ専門用語があふれているのですから、「会計に王道はない」と私はつくづく思いました。
 
 
 

障害者雇用率(群馬県)が1.4%と悪化したことに思う

2007-11-26 22:29:03 | 地域産業
 今日の朝日新聞に地元群馬県の障害者雇用率が前年度と比較して悪化した記事が載っていたことに思うことを書きます。

 群馬県労働局の発表では、県内の民間企業の障害者雇用率(19年6月現在)が1.48%(全国平均1.55%)で、前年同期比から0.04%下がったことがわかりました。新聞では、この数値は、20年前と同じ数字で、障害者雇用促進法の改正にかかわらず、就労の現場ではその雇用が進まない現状を浮き彫りにしていると書かれています。

 県内の事業所に雇用されている障害者は2,879人と発表されています。障害者雇用率を企業規模別で見ると、最も低いのは100人から299人規模の企業で、1.29%にすぎなかったことが発表されました。300人以上の企業に対しては罰金の規定があるのですが、その対象外であることも影響していると思われます。

 障害者雇用率とは、民間企業、国、地方公共団体に対して「障害者雇用促進法」に基づき障害者を雇用する割合が規定されているものです。一般の民間企業は(常用労働者56人以上の企業対象)は1.8%、国、地方公共団体は2.1%とされています。新聞の雇用率が1.48%ということは法定雇用率を下回っているということです。

 行政は、障害者雇用促進のために、「障害者雇用調整金」、「障害者能力開発助成金」などの支援策を実施しています。また、障害者雇用優良事業所表彰制度も実施しています。私は、業務で表彰対象企業の事前調査を行った経験があります。製造業の企業でしたが、計画的に法定雇用率を意識して障害者を雇用していました。障害者雇用のポイントはいかに適材適所に合致した人を採用できるかという経営者の話を聞きました。
 
 障害者の適材適所という観点から、特例子会社制度があるということも表彰式の記念講演で聞きました。三洋電機が創設した特例子会社の責任者の講演だったように記憶しています。新聞には、自動車部品大手のミツバが平成18年6月に障害者雇用する目的する「アムコ」を創設したと書かれています。この特例子会社により、ミツバは1.58%だった雇用率が1.91%になり、法定雇用率をクリアしました。
 
障害者雇用は、トイレ等の設備改修のハード面や業務訓練などのソフト面で企業にとっては、負担のかかることです。しかし、企業が社会的責任を果たすという点から知恵をしぼって障害者を受け入れてもらいたいものです。障害者雇用は企業にとって企業PRという意味では地味なことかもしれませんが、地道に、誠実に障害者を雇用しているような企業が長い目で見れば、地元の信頼を勝ち取っていくのではないでしょうか。
 
 
 
  

地元(群馬県)信用金庫の競争激化、再編が進んでいる

2007-11-25 18:31:24 | 地域産業
 今日は、地元群馬県の金融機関の競争激化、合併などの動向について思うところを書きます。

 11月26日に、かんら信用金庫(富岡市に本店)、ぐんま信用金庫(前橋市に本店)、多野信用金庫(藤岡市に本店)が合併して「しののめ信用金庫」は誕生します。この3信用金庫の中では預金量4100億円のぐんま信用金庫がトップです。しかし、主導権は預金量2800億円のかんら信用金庫が握りました。
 年度末決算で92億円の赤字を計上することになるぐんま信用金庫と、自己資本比率が16%以上のかんら信用金庫では必然的にかんら信用金庫が主導権をにぎることになったようです。本店も富岡市に置きます。

 平成18年12月に、アイオー信用金庫(伊勢崎市に本店)と館林信用金庫が合併することが発表されました。アイオー信用金庫の預金量2200億円、館林信用金庫の預金量1000億円合併することで、県内4位の信用金庫が誕生する予定でした。
 しかし、平成19年5月に合併の延期を発表しました。理由は、アイオー信用金庫の成果主義と、館林信用金庫の年功序列的な人事評価制度の調整がつかなかったためです。
 館林信用金庫の自己資本比率は12.8%、アイオー信用金庫は9.8%であり、9月末の買出金量が両信用金庫とも前年比8%という好調さがさしせまった緊張感を生まなかったようです。

 群馬県内には9信用金庫があります。しののめ信用金庫が誕生することにより7信用金庫となります。預金残高4100億円で2位の高崎信用金庫は、しののめ信用金庫が誕生することで地域的に包囲網の中に置かれる立場になり、競争が激化することが予想されます。
 預金残高3650億円で3位の桐生信用金庫は、伊勢崎市に昨年から積極的な店舗展開を図っています。昨年は伊勢崎市に3店舗出しています。今、アイオー信用金庫との競争激化が始まっています。

 私は今年の3月まで、制度融資の担当として信用金庫と付き合いがありました。私のそれぞれの信用金庫の印象を書きます。

 アイオー信用金庫は、堅実な信用金庫という印象を受けました。徹底した成果主義の信用金庫で、渉外手当ては毎月5段階で評価され、その差は年間50万円になるようです。達成度は賞与や昇進試験の立候補資格にかかわる厳しさです。職員は審査が慎重で、堅実という印象を私は受けました。申請などの対応も敏速でした。

 桐生信用金庫は、融資に積極的な金融機関という印象を受けました。職員についても中途採用者を受け入れていると聞きました。金融機関で中途採用する企業はあまりないと思います。融資に積極的なのはよいのですが、内容の吟味が少しおろそかになっている点もあるのではないかと感じることもありました。

 ぐんま信用金庫は、従業員同士の意思疎通がスムーズにいってないケースがたびたび見受けられました。合併を2度経ており、組織の統一性に少し問題があるのでしょうか。融資に対しては積極的な金融機関ですので、新規開業者や、新規事業展開する企業には力強い味方となる金融機関だと思いました。

 地元中小企業の資金需要に応えてくれるのが信用金庫です。7信用金庫が切磋琢磨して、地元中小企業の力となってもらいたいものです。

http://www.shinkin.co.jp/iseshin/main.htm
 ↑ アイオー信用金庫のHPです。

http://www.shinkin.co.jp/iseshin/main.htm
↑ 桐生信用金庫のHPです。

http://www.shinkin.co.jp/iseshin/main.htm
 ↑ ぐんま信用金庫のHPです。


 

 

「不思議な国のM&A」-世界の常識、日本の非常識-を読む

2007-11-24 21:40:34 | 今週の一冊
 今日は、牧野洋の著書「不思議な国のM&A」を読んだ感想を書きます。

 この本は日本経済新聞社の記者として、企業統治やM&Aの最前線を取材してきた牧野洋の著書です。企業合併、買収の記事が毎日記事になっています。私はその企業買収、合併の状況を知りたくてこの本を読みました。

 この本は、4章から構成されています。章ごとに内容をみていきたいと思います。

第1章 三角合併アレルギー
 この章は、平成19年5月に解禁になった三角合併アレルギーについて、日本経済界の解禁になるまでの動向を中心に書かれています。経済界は三角合併に外資による日本企業の買収を容易にするような制度改正であるので反対でした。
 しかし、経済界が懸念していたような状況はまだ起きていません。著者は、外国企業が日本で三角合併ををするためには、外国企業の東証への上場、合併企業の取締役会の支持も得ることが必要であるので、しっかりした順序を経なければ成功しないと論じています。

第2章 価格を知らずに企業を売買
 この章は、HOYAとペンタックスの合併、三菱東京と三井住友が争ったUFJとの合併、TBSと楽天の合併騒動が書かれています。著者は買収価格がこの三つの買収で議論されないのは問題であると論じています。
 確かに、買収価格での競争にならない企業合併、買収は日本だけの特徴かも知れません。しかし、ステークホルダーとして従業員を大事にする経営を実施してきた日本では、なんでもなんでも株主中心という考え方は私は納得いかないところもあります。


第3章 敵対的買収が成立しない
 この章は、王子製紙の北越製紙の買収、青山とコナカのフタタの買収争奪戦、旧ワールドコム買収合戦などが書かれています。王子製紙の北越製紙のTOBは記憶に新しいところです。著者は、北越製紙の買収にプレミアムを付けた王子製紙が三菱商事、日本製紙の対抗策に負けたのは株主の権利を損ねていると論じています。

第4章 本物のM&A
 この章では、元祖ハゲタカ外資と言われたリップルウッド・ホールホールディングスの旧長期信用銀行の買収のことが書かれています。著者は、「ハゲタカ」が日本を救ったと論じています。
 
 著者は、日本のM&Aはグローバルスタンダードでないと論じています。話題になった買収が説明されているのでおもしろく読みましたが、基本的知識がないので、著者の主張が正しのか私には判断しかねます。ただ、M&Aの外観が少しばかり理解できたのではないかと思っています。
 

PFI方式による病院経営も経営難に-近江八幡の市立病院-

2007-11-23 21:14:12 | 病院経営
 滋賀県近江八幡市の近江八幡市立総合センターの経営が悪化している記事が「日経ビジネス・2007/11/26」にでていました。今日は、自治体病院の経営再生について思うところを書きます。

 記事によりますと、近江八幡市の病院事業会計は長く黒字が続いていたのですが、新しい医療センターが本格的に動き出した平成19年度の収支は24億円の赤字となる見通しとなるようです。旧病院の閉鎖に伴う固定資産除却損で赤字が膨らんだ面もありますが、その影響を除いても赤字幅は10億円を大きく上回ることになります。

 全国の自治体病院は赤字が圧倒的に多いので、なぜこの病院のことが話題になっているかというとPFI方式による病院だからです。PFI方式は、公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に、従来のような公共が直接施設を整備せず、民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法です。
 民間の知恵を生かすことで、自治体の財政負担軽減とサービスの向上を同時に実現する「魔法の杖」になるはずでした。

 近江八幡市は老朽化した病院の移転、新築を平成13年にPFI方式で行うことを決定しました。病院の建築と維持管理、医療行為を除く周辺業務の運営を民間の事業者に委託して、市が30年にわたってそのサービスの対価を払い、病院の根幹である医療部分は市が引き続き担うことにしたのです。

 市によると、当初考えてした事業の前提が大きく狂ったわけではないといいます。病院経営を成り立たせる経営指標は全国トップクラスだといいます。それではなぜ巨額の赤字となったのかは次のような記事が書かれています。

 建設物の保守管理費用が2564万円から2億289万円、設備の保守管理費用が3880万円から1億3343万円、リネンサプライ費用も3221万円から7990万円に膨らんだのです。旧病院に比べ建物と設備が充実したのだから、費用が増えるのはある意味当然ですが、豪華すぎる建物とサービスが病院経営の重荷になっているという指摘もあるようです。

 市は今後SPC(特定目的会社)と話し合い、市の負担の軽減につながる契約の見直しを求めていくようですが、SPC側が市の要望に応じられるか不透明です。記事では、長期契約を特徴とするPFIは当初の計画の甘さがあれば、後々悪影響が出てくる。財政負担を減らすはずのPFIが逆に財政を悪化させるという皮肉な結果を招くこともあると書いています。

 自治体病院の赤字の問題は地方自治が財政難になっている状況でおおきな問題です。全国の自治体病院への一般会計からの繰入金は5000億円を超えています。本来の収支を示す医業比率が100%以下の自治体病院がほとんどではないでしょうか。

 PFI方式は自治体病院の経営再生の切り札になる手法と思われているようですが、PFI方式で開業した高知医療センターの前院長が贈収賄で逮捕される事件も発生しています。この例のようにPFIの場合は官と民間企業の垣根が低くなり、癒着が生じやすくなるといわれます。
 また、雇用状況はSPCから下請け、孫受け状態で現場の労働者は低賃金に置かれる問題も生じているといわれています。このようにPFI方式にもいろいろ課題があります。

 自治体病院の問題は、住民への医療提供と地域財政という視点を常に考えていかなくてはなりません。公営企業の経営について今後も注目記事等を読んでいきたいと思います。


丹羽宇一郎著「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」を読む

2007-11-22 22:43:59 | 今週の一冊
 今日は、丹羽宇一郎の著書、「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」を読んだ感想をを書きます。

 丹羽宇一郎は、平成9年に伊藤忠商事の社長に就任。平成10年に4000億円の不良資産を一括処理しながらも、翌年度の平成11年度決算では同社最高益を出した名経営者です。私は、丹羽の著書である「人は仕事で磨かれる」という本を読んでいます。この本で著者の本を読むのは二冊目です。

 この本は、丹羽の11の講演録をまとめたものです。内容は、格差社会の問題、M&Aのこと、エリート論、国際貢献、地域問題など多岐にわたっています。その中で印象に残るいくつかのことを書きます。

1 第二章「巣立つ若者たちに贈る」 中央大学伊藤忠協力講座での講演 テーマ「仕事と人生」(平成18年7月6日)

 以下引用です。 
・立派なことを言う経営者もたくさんいますが、その人の日々の行動を見る人が見たらわかるんです。こうした日常の生活態度に、人間の本当に姿が出ます。
・働くという言葉を、私は「傍(ハタ)」を「楽(ラク)」にすると解釈しています。だから「ハタラク」とは、お母さん、お父さん、周囲の人、つまり他人を楽にするということです。

 なるほどです。私が働くのは家族のためだということが、素直に納得いく言葉です。

2 第3章「M&Aとコーポレートガバナンスの行方」 オリコ・コンプライアンス・トップセミナー テーマ 「コーポレートガバナンスとトップの役割」(平成18年3月1日)

 以下引用です。
・経営とは、結局は「人を動かすこと」です。社長一人では経営できません。会社のビジョンなり、会社の向かうべき方向に、社員をどれだけ動かすことができるか。「動物の血」を持った社員を、これまた「動物の血」を持った経営者が率いて行く。これはじつに難しいことです。社長が「よし、やるぞ」と言ったとき、社員が、「よし、やろう」と思ってくれるような状態をいずれも一時的にだけでなく、維持しなければならない。すべては社長次第だと言ってもいいと思います。
 だから私は、コーポレートガバナンスもコンプライアンスも、すべて社長の責任だと思っています。どんなことが起きても、受け止める覚悟が必要です。

 船場吉兆、NOVAなどの経営者に読んでもらいたい言葉です。

3 第4章「企業改革に終わりはない」 電通役員拡大勉強会での講演 テーマ「終わりなき企業改革」(平成18年3月17日)

 以下引用です。
・権力を持ったトップと、権力を持たない部下が対話するとき、何が起きるか。部下は、皆、トップの前では化粧をします。いい点を欲しい、給料を増やしてほしい、偉くしてほしい、そうゆうことで、トップの言うことを「かしこまりました」答えるわけです。
・改革には「狂いに似た確信」がトップに必要です。一度決めたらなら、誰が何と言っても絶対やる。どこに遠慮はいりません。あちこちに遠慮しても、その人が助けてくくれるわけではないのです。遠慮して、重大な勝機を逃してしまっても、その責任をとるのはトップです。

 トップのあり方が語られています。権力者としてのトップの自覚を語った言葉ではないでしょうか。

4 第5章「エリートなき国は滅ぶ」 国家公務員合同初任者研修での講演 テーマ「21世紀 期待される公務員像」(平成18年4月6日)

 以下引用です。
・政治家や役人は、哲学や信念、倫理感、あるいは道徳心を持たなければなりません。
・国民は、公務員がどうゆう仕事をするのかということをちゃんと見ています。自分の利益のためなのか、人々のためなのか、国のためなのか。「村の掟に服従」している人に、国民の期待は集まらないし尊敬されません。
・本来の目的は何か。資料を完璧に作ることではない。本来、手段であるはずが、目的になってしまっている。
・どうやって自分を磨いていくか、次の3つのことを常に自分に問いかけて欲しいと思います。
 ①「君はアリになれるか」黙ってコツコツ、地道に働けるか
 ②「君はトンボになれるか」物事を複眼的に見る習慣をみにつける
 ③「君は人間になれるか」動物でなく人間としての心を育てる。人間としての能力は、どこで差がつくか。それは努力の継続です。

 公務員のあり方が語られています。防衛庁の守屋前事務次官に聞かせたい言葉です。

5 第8章「WFPの活動と国際貢献」 NPO法人国連WPO協会での講演 テーマ「アフリカの飢餓と国際貢献活動」(平成18年9月4日)
 
 以下引用です。
・今、干ばつ、エイズ、マラリアの三重苦にあえぐアジア・アフリカ地域では、5人に1人の割合で5歳以下の子供達が亡くなっています。今回、私が行ったアフリカ(ソマリア)の地域では、もっと速いスピードで子供がなくなっています。原因は、圧倒的に栄養不良です。

 丹羽氏は、国連WEF協会会長です。国際貢献についても力を入れています。飽食の時代を私たちは反省しなければななりません。

6 第9章「稼いだ金は、誰のものか」 青山フォーラム事務局での講演 テーマ「仕事と人生」(平成18年3月20日)
 
 以下引用です。
・仕事も勉強も、できるうちに徹底的にやること。「ここまでやればいいだろう」とか「これだけで十分だ」などと自分で限度をみけないことです。それは他人から見たら70%の努力に過ぎません。

 なかなか厳しい言葉です。丹羽は普段から猛烈に勉強してます。週末の勉強量は学者よりも勝っていると自負しているくらいですから驚きです。


 丹羽が書いた「人は仕事で磨かれる」を読んだ時の感想として、この人は「一本筋の通った人」だと思いました。従業員の気持ちを理解するため電車通勤していることがたいへん印象に残っていました。その時からこの人物には好印象を持っていて、今回この本を購入したのですが、購入して損はなかったと思います。 
 

今日も企業合併・買収の新聞記事(加ト吉)を読みました

2007-11-21 22:06:34 | 経営全般
 今日の新聞に、日本たばこ産業(JT)と日清食品が加ト吉を共同買収する記事が出ていました。毎日といっていいくらい報道される企業合併・買収に思うところを書きます。
 
 加ト吉は今年の3月に循環取引と呼ばれる不正経理が発覚、平成19年3月期決算で98億円の赤字を出して創業者の社長が引責辞任しました。ミートホープ問題にも関わっていたのではないでしょうか。
 JTは既に加ト吉の株式の約5%を保有、社長も送り込んでいました。今後はJTが友好的な株式公開買い付け(TOB)を行って加ト吉の全株を取得、その上で日清食品に49%の㈱を譲渡するもようです。買収額は1000億円近くになる見込みです。

 また、スチィール・パートナーズから買収提案を受けているサッポロホールディングは、買収防衛策に基づいて第三者による特別委員会を開催したことが今日の新聞に書かれていました。委員は、スティールの買収提案に対する評価を始めることが妥当との認識を示したと書かれていました。

 百貨店大手の三越と伊勢丹は20日に、それぞれ株主臨時総会を開き、来年4月1日で両者が経営統合することに株主が承認した記事も今日の新聞に出ています。両者をあわせて約1兆5800億円となり業界首位の百貨店が誕生する見込みです。

 このほかに住友信託銀行とあおぞら銀行の業務提携の記事、王子製紙と三菱製紙の業務提携の記事が出ています。

 このように、毎日、企業合併、買収、提携の記事がでています。その理由としてグローバル経済の進展により持ち株会社が解禁になったことや、商法改正により外資ファンドによる買収が容易なった背景があります。
 それから、私が思うに業界第一になることは圧倒的に有利な立場になります。だから業界第一を目指して企業合併・買収が活発化していると思います。また、持ち株会社にすれば、不採算部門の売却や有望分野への新規参入も容易に可能となります。

 私の住む群馬県でも、企業合併が活発化しています。ネギトロで有名な赤城水産(渋川市)は、ジャパンフードシステムのよるTOBが13日に成立し買収されました。ドラッグストア中堅のイイズカ薬品(前橋市)は、9月にスギ薬品(愛知県)に株式の85%を譲渡して、同社の傘下に入りました。かんら信用金庫(富岡市)、多野信用金庫(藤岡市)、ぐんま信用金庫(前橋市)の3信用金庫が26日に合併して「しののめ信用金庫(富岡市)」が誕生します。

 新聞の全国版に掲載される企業合併・買収から、地元地域で行われる企業合併・買収まで今後もこの動きが続くことが予想されます。そして、それぞれ業界の再編が5年以内になされるのではないでしょうか。

 都市銀行が、三菱UFJ、みずほ、三井住友に集約されたように、各業界でも企業が集約されると思います。そのことが私達の生活にとってよいことなのか、なにをもたらすのか私には、今のところ想像がつきません。

 
 

いよいよ足利銀行の譲渡先が決定しそうだ

2007-11-20 22:45:45 | 地域産業
 一時国有化されている足利銀行の譲渡先選定は、22日に2つの受け皿候補が買収額を提示する期限を迎えます。今日はこの足利銀行について、思うところを書きます。

 足利銀行は、平成15年11月に国有化されました。国有化されて3年近く経過した平成18年9月から国は足利銀行の譲渡先の選定作業を始めました。金融庁は、①金融機関としての安定性、②地域銀行としての役割、③破たん処理の国民負担最小化の3点を審査ポイントにして、事業計画を提出した7陣営から地銀連合と野村グループの2陣営に絞りこみました。
 
 地銀連合は、横浜、東邦、群馬、常陽、千葉、山梨中央、八十二、静岡銀行が中核です。野村グループは、企業買収を手掛ける「野村プリンシパル・ファイナンス」と国内投資ファンド「ネクスト・キャピタル・パートナーズ」が中核です。両陣営とも3000億円を超える額を示す見通しです。

 金融庁は、買収のための資金計画と事業計画の両面から選定作業を進め、年内に受け皿を内定する予定です。足利銀行は整理回収機構(RCC)に売却する不良債権と、譲渡先に引き継ぐ債権の仕分けをほぼ終えており、受け皿が決まれば、不良債権をRCCに順次引き渡すとみられています。

 足利銀行は、群馬県に住む私にとっては身近な銀行です。群馬県には13支店があるのはないでしょうか。あいまいな記憶ですが、桐生市役所の公金取扱銀行は足利銀行であったように記憶しています。足利銀行がメインバンクという県内企業も多いと思います。平成15年にその銀行が破たんし、地方銀行として初めて国有化されたのですから驚きました。
 群馬県では、足利銀行が破たんした時にすぐに「足利銀行対応相談窓口」を設置しました。セーフティーネット資金という足利銀行の破たん等に対応した制度融資も整備しています。
 
 地域銀行の存在は、地域経済にとって重要です。受け皿候補の地銀連合は、中小企業の支援や、経営不振に陥った取引先の再生など地域密着の経営方針を出しています。栃木県内企業による出資枠として100億円を設け、公募する考えもあるようです。
 栃木県も、地域経済の活性化につながる譲渡先を選ぶように金融庁に求めています。これらの状況から、私は地銀連合が受け皿として選ばれるのではないかと思います。

 野村グループはグローバルな企業です。グローバル企業は広い視野からの経営を展開していくことが予想されます。いろいろなシビアな合理化策も出されるのではないでしょうか。一方、地方銀行の連合体である地銀連合は、地域に根を下ろした地域密着の経営を展開していくことが予想されます。
 地域銀行には、地域銀行の組織風土がありますので、行員としてみれば地域連合のほうが働きやすいのではないでしょうか。

 いずれにいろ、地域経済活性化のために最善な受け皿が決まることを期待しています。

 

 

ハイテク産業のビタミン「レアメタル」が急騰している

2007-11-19 22:34:17 | 経営全般
 今日は、原油価格の上昇が話題になっていますが、原油同様に高騰しているレアメタルについて思うところを書きます。

 原油高や「サブプライム」で揺れる日本経済に、別の危機が忍び寄っているといわれています。レアメタルというハイテク製品の生産に欠かせない希少金属の確保が難しくなってきていることです。理由は、世界有数のレアメタル産地である中国が消費国としての存在感を高めているからです。

 レアメタルとは、工業向けの需要はあるが、存在量が少ないなどの理由で産出が難しい金属です。経済産業省の定義では31種類としています。液晶・プラズマディスプレイで利用されるインジウム、切削工具・金型や自動車電装部品に利用されるタングステン、デジタルカメラの工学ガラス・携帯電話の電池極材に利用されるレアアースなどです。いずれも、日本の主力産業の競争力の要となる資源です。

 しかし、これらの資源は中国を中心とする新興国の急激な経済成長で需給が逼迫して値段が高騰しています。たとえば、レアアースは平成14年には1キロ7.3ドルだったのが、平成19年には31ドルの4.2倍に、インジウムは1キロ85ドルだったのが720ドルに急騰しています。レアアースは93%、インジウムは55%が中国が産出している資源です。
 中国は、この数年でレアメタル輸出の方針を大きく変えました。レアメタルを大量輸出していた政策を改めて、精錬技術を高めるとともに、電子機器などの国内川下産業の競争力強化を図るという方針を打ち出したのです。その影響が如実にでています。

 国は「戦略物質」になりつつあるレアメタルの安定確保のために新たな政策を打ち出しています。資源エネルギー庁が所轄する総合資源エネルギー調査会レアメタル対策部会の平成19年7月の答申では、①レアメタル海外探鉱開発の推進と資源外交、②工程くずの抑制とリサイクルの推進、③代替材料の開発、④レアメタルの備蓄の4つの施策を打ち出しています。

 国は、脱中国依存を目指して、アフリカと中央アジアに狙いを定めてレアメタル外交に力を入れてます。しかし、レアメタルの有望な権益はすでに欧米が押さえていて、日本のレアメタルの探鉱・開発は容易ではないようです。

 日本にとっての現実な方法は、歩留まり向上や、リサイクルと代替材料の開発だといわれています。平成23年までに総額55億円を投じて、企業と学術研究機関が共同で代替材料の開発に取り組みます。リサイクルでも資源エネルギー庁が、インジウム、ニッケル、コバルトを回収・再生するナショナルプロジエクトを立ち上げます。

 好景気が続いていると言われている日本ですが、原油高騰の問題、レアメタル高騰の問題、サブプライムの影響などグローバルな問題から、地域格差の問題、業種間格差の問題など国内問題を考えると、景気回復がなり、しっかりした足取りになったと言われますが、今は綱渡りをしながらなんとか前に進んでいる状況ではないでしょうか。
                                
 今後5,6年間は幾度となく経済危機を克服してきた日本人の英知をまた結集していかなくてはならない正念場となる期間であるように私は思います。
 

 
 

 

私が出会った群馬の魅力的な商人

2007-11-18 17:48:43 | 地域産業
 平成8、9年度に群馬県の各地の若手商業者に集まっていただいて「チャレンジ商品ネットワーク支援事業」を実施していました。今日は、その中で活動が個性的で印象に残っている3人の方を紹介します。この3人のいずれの方は現在も、小粒でもピリリと光る商売をしています。

1 慶瑞あかまんまの田口さん
 田口さんは藤岡市の中心市街地で器とオリジナルの創作人形などを販売する店を出しています。田口さんは、新町役場の職員でしたが、結婚して妻の実家の店を継いだと聞いています。
 田口さんの店はもともとはひな人形店でしたが、田口さんはオリジナルにこだわりを持った店作りをしたいということで、「陶器」と「オリジナル人形」を扱うようになりました。藤岡の店は店舗外装も店舗内も魅力的です。店舗内は、常設の「陶器」が陳列されています。年10回ほどの企画展を行っています。

 田口さんの店は20坪程度ではないでしょうか。立地も衰退してしまっている藤岡の中心市街地にあります。しかし、田口さんの店は「ギャラリー」です。田口さんがほれ込んだ作家の陶器を陳列しており、作家の企画展も実施しています。そのため商圏はとても広い店となっています。

 私が田口さんを知ったのは平成8年でした。その時に、このような店で何年続けられるかと話していましたが、今でも群馬県の小粒でもピリリと光る店であり続けています。

http://www.akamanma.com/
↑ 田口さんの店「あかまんま」のHPです。

2 足利屋とアスクの松崎さん
 松崎さんはみどり市(旧大間々町)の中心市街地で足利屋とSCのさくらもーるでアスクの2つの洋品店の店を出しています。松崎さんがすごいのは毎月1回に発行する地域新聞「虹の架け橋」を147号発行していることです。私が松崎さんを知ったのは平成8年でしたが、その時にこの地域新聞を始めました。ネットワーク支援事業の集まりに「虹の架け橋」を持ってきてこんなことを始めたと話していたのを覚えています。

 「虹の架け橋」はB4表裏の新聞で10000部新聞折込で発行しています。内容は、店の広告はほんのわずかです。トップ記事は「小耳にはさんだいい話」、それから地域イベントの紹介などの記事がかかれています。地域ミニコミ誌としてたいへんおもしろいです。店の広告がほんのわずかというのがかいかにも松崎さんらしいです。

 松崎さんとは、大間々町のうどんによる街おこしでも一緒に活動させていただきました。松崎さんは大間々町駅のトイレ掃除の活動を実施する「郷土を美しくする会」の活動や、ながめ演芸場のながめ黒子の会の活動などの中心人物です。商業者という立場から地域をこよなく愛する人です。

http://www.sunfield.ne.jp/~yachan/niji/
  ↑ 松崎さんの「虹の架け橋」のHPです。店の紹介リンクもあります。

3 タルサタイムとクロスロードの山崎さん
 高崎市の中心市街地で古着の店タルサタイムとクロスロードを出す山崎さんは、若者のファッションリーダーです。山崎さんは大学生の時から、母親が出していたジーパン店の手伝いをしていました。山崎さんは、仕入れのため年数回アメリカに行っています。そのため、品揃えが他店にないものになっています。

 山崎さんで印象に残っていたのは、高崎市の中心市街地にこだわっていたことです。ロードサイドに店を出す考えはなかった人でした。高崎の街のもつ自由闊達さのファッションにこだわっていたのではないでしょうか。

 山崎さんについては高崎の慈光通りの四つ角に立って通行客をずーと観察していたのが印象に残っています。若者のファッションを見ていたのでしょう。山崎さんの店は4店舗ありました。タルサタイム、シェーン、イグアナ、クロスロードでした。それぞれが客層を絞りこんだ店でした。今はタルサタイムとクロスロードを出しているようです。

http://www.tulsa-time.jp/tolsa_town2/tennai.htm
 ↑ タルサタイムのHPです。

 
 

 



[M&A時代の企業防衛術」を読む

2007-11-17 20:01:44 | 今週の一冊
 今日は、津田倫男の著書「M&A時代の企業防衛術」を読んだ感想を書きます。

 ここ数年は企業合併、企業買収が日常茶飯事になってきています。都市銀行は合併が相次ぎ、昔私達が知っていた銀行がどのようになったかわからない状況です。製造業、流通業も合併、買収が活発に行われています。
 M&A、TOB、MBO、LB0など新聞に頻繁にでてくるのですが、意味がよくわからないこともあり図書館でこの本を借りてきて読んでみました。まだわからないことが多いのですが、この本の章を追って理解できたことを書きます。

1章 狙われる企業の非効率、不透明経営 
 この章では、スティール・パートナーズのよるブルドックソースやサッポロホールディングスの買収を巡る動向が書かれています。株主の利益が確保されていないというスティールの主張ですが、会社それぞれの事情もあります。
 敵対的買収にさらされる企業の共通点として著者は7つ上げています。①時価総額が相対的に低い、②粉飾を長年行ってきた企業、③現預金を持ち過ぎている、④経営者が頻繁に交代する、⑤長年、規制に守られてきた企業、⑥不祥事が発覚した企業、⑦買収に失敗、合併に失敗した企業です。
 
2章 実践的企業防衛術
 この章では、経営者が敵対的買収をはねのけようとする場合の具体的、現実的な対処法を論じています。よく使われる防衛手段として、①ポイズンピルの導入、②ゴールデンパラシュートの採用、③クラウンジェエルの売却、④委任状争奪戦に勝つ、⑤非上場の選択が上げられています。
 ここで考えなくてはならないことは、会社はだれのものかということです。株主だけでなく従業員、顧客、さらには地域社会も考慮して企業の存在を考えて、敵対的買収が悪かを考えなければならないと書かれています。このことに私も納得です。現在話題になっている買収には、経営者が自分の地位を失うから反対しているのではないかと思われるものをあります。

3章 現代の暖簾わけMB0の薦め
 MBOは大企業から中小企業が平和的に分離独立する、江戸時代から続く「暖簾わけ」に似たような形態であると著者は書いています。そいて、MBOを成功させるための要件として、①事業部門長、子会社社長の「熱意とビジョン」、②親会社を説得し、安く会社を譲り受ける工夫の「親会社対策」、③部下への対応が書かれています。

4章 真に役立つMBOとは
 この章では、悪いMBOとよいMBOについて著者は論じています。具体的事例として①牛角のレックス・ホールディングス、②日産陸送が社名変更したゼロ、③すかいらーく、④東芝セラミックス、⑤サンスターが上げられています。MB0は経営陣、従業員、投資家のみならず顧客、取引先、地域社会、政府が満足するものでなければならないと書かれています。突き詰めて以下のように集約しています。
①経営者が思い切った戦略を取れるか、より長期的な視野で経営できるか
②従業員に夢と希望を与えられることができるか、少なくとも長い間、迷惑をかけ続けることはないか
③顧客に迷惑をかけないか、より一層指示されるようになるか
④取引先や仕入先にも指示されるか、短期的な不便を忍んでもらえるか
⑤地域社会を納得させることができるか、MBOの意義を理解してもらえるか
⑥そして、株主に長期的なリターンを約束できるか、少なくともその道筋を説明することができるか
 
5章 経営者が変わる、経営を再構築する
 この章では、株主に偏重しない経営として、①競争相手を活用する、②将来顧客を取り込む、③NPO・NGOを自社のファンにさせる中立をたもたせることが書かれています。そして帰るべき経営の基本モデルとして、「社会(世間、お客様)と社員(身内、擬似家族)を大切にする経営」としています。

6章 企業防衛は、新しい日本的経営モデルで
 この章では、著者が提唱する経営モデルとして「しなやかさ」「独創性」「被差別性」「善意」を上げています。従業員にとっても、顧客や社会にとっても有益な存在としての企業であれば、企業防衛に対処できると論じています。

 この本を読んで勉強になったのは、MBOやTOBの意味や今話題になっているブルドックソースなどの買収事例がどのようなことなのかを理解できたことです。
 それから、企業はだれのために存在するかを考えて経営すればおのずと企業の方向が見出せるということです。企業は株主だけのものではありません。敵対的買収を仕掛けてくる企業が株主が利益が損なわれているという主張は一見正しいようですが、それのみでの買収はまやかしであることが理解できました。

 
  
 
 


「ニトリ家具」の快進撃に思う

2007-11-16 23:03:17 | 経営全般
 今日は、私の住む伊勢崎市にも店舗を持つ「ニトリ家具」について思うところを書きます。

 ㈱ニトリは20期連続の増収増益を続けている企業です。平成19年2月期は連結売上高が1891億円で前期比21%の増でした。連結経常利益は231億円と前期比21%増でした。売上高は過去5年で2.4倍に増加しています。
 今週、村上龍が司会をしているテレビ番組「カンブリア宮殿」に㈱ニトリの似鳥社長が出演していました。低価格で商品を売るという経営哲学を話していました。㈱ニトリは、今ほんとうに勢いのある企業です。
 
 ㈱ニトリの快進撃の要因については雑誌などで次のことが上げられています。

1 自社工場を持つ製造小売業であること
 ㈱ニトリはベトナムに二つの自社工場、中国、東南アジアに300以上の提携工場を持つ製造小売業者です。工場には似鳥社長自ら出向き、コスト削減に指示を出しています。コスト削減の徹底によりニトリの工場では仕入れた木材の95%を使用しています。通常の工場では50%程度ということですから、コスト管理の徹底さがわかります。
 また、工場では、部品の作り過ぎないように「カンバン方式」を導入しています。
 製造部門を持つことにより、企画から商品を製造できる強みを持ち、それにより低価格で商品を提供できる強みを持っているわけです。

2 全国に物流倉庫を6ヶ所もち物流の効率化を高めている
 関東物流センター(埼玉県白岡町)は、約1万6000坪の広さの敷地の中に、ビル6階建て分の高さに匹敵する約30メートルの自動倉庫があります。
 自前の物流センターのにこだわるのは物流の効率化で商品回転率を高めるためです。物流センターの整備により、平成15年の商品在庫回転率が5回転だったのが、平成19年2月期には6.4回転に高まっています。
 業種は違いますが、業務で自動ピッキングし出庫する自動倉庫を見たことがあります。投資額が巨額ですが、効率化にはどうしても必要なことだという説明をその会社の専務から聞いたことがあります。ニトリも物流センターは物流の効率化のために必要な投資であり、その効果が増収増益という結果になっているのでしょう。

3 顧客に効率的に買ってもらう店舗の仕組み作りをしている
 ニトリの店舗では、キッチンやダイニングというように場面ごとにコーディネートして販売しています。店舗は3,6メートルの広い通路と5メートルの高い天井が特徴です。これは顧客の買物のしやすさを考慮した店舗レイアウトです。
 大きな家具が並んでいても圧迫感がなく、カートを引いていても邪魔にならない工夫がされています。顧客が買いやすい売り場を作ることで、店員の作業負担も減っています。
 私は、ニトリ家具には3回ほど買物に行ったのですが、広い通路で確かに買物がしやすかったです。それから、店員が寄ってこないのが良かったです。好きに商品を選択できる店の魅力があります。商品構成は家具だけでなく、生活用品も販売していて、インターネットで調べましたら、ホームファニシング(家具+ホームファッション)という業態だと記載されていました。

 ㈱ニトリは、製造(工場)→物流→小売という複合体の企業なのです。
 
 私は業務の大店立地法の現地調査で伊勢崎市にニトリが店舗進出の時に、社員の人に業界での競合他社がどこですかと聞いたことがあります。ニトリの商品構成や製造小売業態が目新しく、どこをライバルとしているか聞いてみたいと思ったのです。
 返答は、日本には競合する企業はなく、外国のイケアという企業だと話していました。ニトリはすでに日本に敵はなくグローバルな戦いを意識しているのかと思いました。その時はこれほど革新的な企業とは知らず、急成長中で少し自信過剰になっているのではないかと内心感じたのでが、どうやらニトリ今まで日本に存在しなかった「革新的な家具店」であるようです。

http://www.nitori.co.jp/
  ↑㈱ニトリのHPでdす。