TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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リストラなしの「年輪経営」を読む

2009-05-17 11:22:48 | 今週の一冊


長野県伊那市にある業務用粉末寒天製造メーカーの「伊那食品工業」の塚越寛代表取締役会長の著書「リストラなしの年輪経営」を読みました。

 この企業は、会社は社員を幸せにするためにあるという経営理念を持つ企業です。塚越会長は、二宮尊徳の言葉「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」という言葉にあるように「遠きをはかる」ことを経営戦略に据えて経営を実践しています。つまり、短期的な利益に固守するのでなく、長期的な企業の成長を志した企業経営です。

 それを「年輪経営」と塚越会長と呼んでいます。木の年輪のように少しづつですが、前年より確実に成長していく企業です。その年の天候によって大きく育つこともあれば、小さい時もありますが、年輪の小さく狭い部分は硬くて強いという経営です。

 そんな経営を実践してきた伊那食品工業は、48年間増収増益を達成し、2007度の売上高は約165億円(自己資本比率73%)を達成しています。

 この本のエッセンスは以下のとおりです。

1 人の犠牲の上にたった利益は利益でない
 利益至上主義に陥ると、利益を生み出すためになんでもやってもいいとなってしまう。利益のために社員が犠牲になってしうのは手段と目的が逆転してしまっている。

2 人件費はコストでなく、会社の目的そのものである
 報酬を減らして、会社の利益を増やしても、事業を起こした意味がない、みんなで一生懸命働いて、より多くの報酬を得て幸せになるのが事業を起こした目的

3 年功序列制度で社会の「和」を保つ
 成果主義や能力給といった最近流行の人事制度に組しない。成果主義や能力給は、個人の実績を評価基準とする、、少し広げてもチームとか部署である。しかしし、業績の多くは、これまでの積み重ねの上に花開いたものだからである。従業員が安心して仕事をできるように、年功序列制度を堅持してる。

4 安いからといって、仕入先を変えない
 経営に対する基本的な考え方は「継続する」ことである。仕入先はほとんど変えない。仕入先を大切に扱えば、相手もこちらを大切に扱ってくれる。仕入先とは末広がりに繁栄できるような関係でありたい。

5 経営戦略は「進歩軸」と「トレンド軸」を見極めて
 商品開発に限らず、経営戦略を立てる時は、まず「進歩軸」に合致しているかどうかを見極め、さらに「トレンド軸」に乗れるように考えることがポイント。

 塚越会長の「企業価値を図る物差しは社員の幸せ度」という信念がこの本の文面にはあふれている本でした。