あび卯月☆ぶろぐ

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『七つの海よりキミの海』のニューウェーブっぽさの正体

2014-04-16 21:22:58 | 音楽・藝術
一年くらい前、『波打際のむろみさん』というアニメが放映されていた。
『週刊少年マガジン』(講談社)に連載されている名島啓二による漫画が原作だ。

人魚が大勢登場するギャグコメディなのだが、登場人(魚)物の名前が「むろみ」をはじめとして、「ひい」や大湊、大橋、春吉、住吉、冷泉、川端、宝満・・・と福岡の地名や川の名前が由来になっているものが多い。

『エクセル・サーガ』の六道神士もそうだったが、福岡出身の漫画家は郷土愛の強さからか、地元の地名などをキャラクターの名前につける人がいる。
名島啓二氏もそういう郷土愛を発揮したのだろう。
ちなみに、著者の「名島」という名前も福岡の地名にある。これもペンネームだろうか。

私も郷土愛が強い方なので、東京に住む友人から、「博多弁を話す人魚が主人公のアニメがある。あびさんは福岡県人でしょ?」と勧められ、
ほう、どれほどきちんとした博多弁を話しているのかと、早速、視聴してみた。

アニメでむろみさんの話す博多弁を聴いてみると意外や違和感がなかった。
それもそのはずで、むろみさんを演じる声優の田村ゆかりは福岡県福岡市出身。まさに博多弁を遣う地域に生まれた声優だ。
他にも、リヴァイアさんという北九州弁を話す人魚も登場するが、こちらも、福岡県北九州市戸畑区出身の中原麻衣が演じる。
制作スタッフのこだわりか。

さて、この作品を見て一番気になったのは、キャラクターの名前や方言も去ることながら、主題歌だった。
声優の上坂すみれが歌うこのアニメの主題歌『七つの海よりキミの海』を初めて聞いたとき、心に引っかかるものがあった。

「ニューウェーヴっぽいな・・・」

そういう想いに駆られた。
ニューウェーヴとは人によって微妙に定義が異なり、説明が難しいのだが、はてなキーワードがなかなか的を得た解説をしていた。
曰く、
「1970年代のパンク・ムーヴメントに対して、1970年代末から1980年代初頭にかけて発生したアーティスティック、革新的、実験的な側面を重きにおいた音楽の総称。総じてアンダーグラウンド志向であり」云々。
実に簡潔で的を得た説明だと思うが、実際にニューウェーヴをお聴きになったことのない方はそれでもわかりにくいと思う。
言い換えれば、アングラっぽくてサブカルっぽくて変わったパンクロックとでもなろうか。
曲の途中でやたらと、曲調が変化するものが多いのもニューウェーヴの特徴だ。
また、一般にテクノ系と呼ばれるバンドが多い。
代表的なバンドではハルメンズ、ゲルニカ、プラスチックス、ヒカシュー、P-MODELあたりがそうか。

では、なぜこの曲はニューウェーヴっぽいのか。

実は、上坂すみれが大のサブカル好きで、そして、この『七つの海よりキミの海』は上坂すみれが好きな戸川純が在籍していたバンド、ゲルニカの曲調を意識して作られている。
作曲者の神前暁もツイッターで公表しているが、Bメロ後半のD-Eb-F-Db-E-Aというコード進行は上野耕路の曲調をリスペクトしたものだという。
ゲルニカの曲でいうと『銀輪は唄う』や『工場見学』をお聴きただければ、その類似性を理解できると思う。 
上野耕路はサエキけんぞうと少年ホームランズ、8 1/2(ハッカニブンノイチ)、ハルメンズなどのニューウェーヴバンドで共に活動していた人で、これらの追っかけをしていた戸川純と、高校時代から交流のあった太田螢一とでゲルニカを結成し、ジャパン・ニューウェーヴ界の一角を担った。

ところで、ツイッター上で、この曲は「上野耕路というより伊福部先生を彷彿させる」という感想を見かけたが、それもそのはずで、学生時代の上野耕路は記譜法を中心に伊福部昭から指導を受けている。
上野自身は
「ゲルニカのファースト・アルバムの発売の次の年に、某雑誌のインタビューワーとしてお宅にお邪魔して以来、日本音楽界の重鎮的作曲家伊福部昭師からは、創作上の土台となる貴重な教えと幾つかの技術を授かった」(『ゲルニカ20周年記念完全盤』の謝辞より)
と述べている。

つまり、伊福部昭→上野耕路→神前暁という影響の流れ。それを上坂すみれが歌う。
音楽って面白い。

なお、ゲルニカは歌詞カードに正仮名遣いと正字を多用しているが、仮名遣いは「見てゐやう」「無ひ」「浮かべてみやふ」等々、出鱈目。
正仮名遣い界隈の人は、校正したい気持ちに駆られるに違いない。

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