あび卯月☆ぶろぐ

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にわか反原発のヤな感じ

2011-04-18 01:54:22 | 社会・世相
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タバコの害についてこのごろ威丈高に言うものが増えたのは不愉快である。
いまタバコの害を言うものは、以前言わなかったものである。
いま言う害は全部以前からあったものである。
それなら少しはそのころ言うがいい。

当時何も言わないで、いま声高にいうのは便乗である。
人は便乗に際して言うときは声を大にする。
ことは正義は自分にあって相手にはないと思うと威丈高になる。
これはタバコの害の如きでさえ一人では言えないものが、いかに多いかを物語るものである。
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震災以来、雨後の竹の子のように原発の害を口にする輩が出始めた。
以前から反原発を訴えていた者をそれまで誰も注目しなかったのに、二流雑誌はこぞってそういう者を使うようになった。

上に掲げたのは稀代の名コラムニストだった山本夏彦さんの文章だが、文中の「タバコ」を「原発」に換えるとそっくりそのまま今の私の気持ちになる。
いま、反原発を叫ぶ人の何割が震災前から原発の害を訴えていたのだろうか。
震災が起きてはじめて害を叫ぶ人はかつての反原発運動のように時が経てば言わなくなるだろう。

思い返せば、チェルノブイリの時もそうだった。
日本のパンク・ロックシーンも反原発一色だった時期がある。
そのとき、ブルーハーツも「チェルノブイリには行きたくねえ!」(チェルノブイリ)と歌っていた。
その数年後には「どっかの坊主が親のスネかじりながら『原発はいらねぇ』ってよ どうやらそれが新しいハヤリなんだな 明日は一体何が流行るんだろう」(イメージ)と自らを戯画するように歌ったところがいかにもブルーハーツらしくて好きだった。
その他、反原発を歌っていたバンドやそのファンたちは時が経てばすっかり原発の害を口にしなくなった。
一過性のブームだったことが知れる。

例えば今回、斉藤和義が『ずっとウソだった』を歌った。

自身の曲である『ずっと好きだった』の替え歌で「この国を歩けば、原発が54基」と始まり、 「教科書もCMも言ってたよ、安全です。 俺たちを騙して、言い訳は「想定外」 懐かしいあの空、くすぐったい黒い雨」と続く反原発ソングだ。

いきものがかりの水野良樹さんは「斉藤和義さんの音楽が大好きだけど、「ずっとウソだった」は大嫌いだよ。」とツイッターに書いたが、私は水野さんに深く共感する。
というのも、以前から、核の害を歌っていた斉藤和義が歌う分はまだいいが、斉藤和義もロクに聴いていなかったのに『ずっとウソだった』を諸手を挙げて褒めそやす手合が大勢いる現状にウンザリするからだ。

こういう連中は反自民党・民主党ブームの時流に乗って民主党に票を入れ鳩山由紀夫、菅直人の醜態を見るにつけ、自らが票を入れたことを棚に上げ、これまた時流に乗って民主党の悪口を云っている連中と同一人物だろう。
終戦後に生きていたなら「聖戦なんてウソだった」「国に騙された」と云って共産党あたりに入党する人物だろう。

畢竟、騙されたとか平気で言える人は自分の頭で考えることが出来ない以上、一生騙され続ける。
少しでも自分の頭でモノを考える人は「騙された」なんて、ことは恥ずかしくて言えやしない。
百歩譲って恥を忍んでいっているならまだマシだが、いま騙されたと云っている人は寸毫も恥じることなく被害者ヅラして、怒りに任せて自らが正義になったと勘違いしている。

ブルーハーツは反原発ソングを歌った照れ隠しに『イメージ』を歌った。
あるいは、自らを客観視することができたから、『イメージ』を歌うことができた。
にわか反原発の連中はそれが出来ない人たちだ。

極端な話、時流に乗って、あるいは時流に乗らなければ声高に主張できない日本人の宿痾とも云うべきこの性質が結局は今回の事故を引き起こしたのではないか。

詰まりは、あんな不完全な原発を作らせたのもやはり同じ人なのだ。
いま、にわかに反原発を叫ぶ人たちがあの原発を作らせたのだ。
その自覚や自戒なくして反原発を訴えても片腹痛いと云う外ない。

ついでに云うと、「ロック=反体制、反権力、反核、反原発」なんて思っている者があるが、一体そんなこと誰が決めたんだ。
そもそも、ロックはそんな薄っぺらいものではない。
ロックをそんな枠に嵌めようとする者こそ、もっともロックから遠い思想の持ち主だ。
しいていうなら、ロックは反体制ならぬ反「大勢」であるべきで、今、大勢が反原発なら、いまこそ「原発推進」を歌うべきだ。

太宰治は終戦直後に「天皇陛下萬歳!この叫びだ。昨日までは古かった。しかし、今日に於いては最も新しい自由思想だ」と書いた。
この言葉の意味を『ずっとウソだった』に感動している人はじっくり考えてみるといい。