あび卯月☆ぶろぐ

あび卯月のブログです。政治ネタ多し。
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ブログ凍結の辞

2019-04-28 22:41:36 | 雑記
あと二日ほどで平成が終る。
これまでの人生のほとんどを平成に生きた私としては、やはり感慨深いものがある。

十代の頃から、平成が終るそのとき、どのような気持ちでそれを受け入れるのだろうかと想像していた。
当然、天皇陛下の崩御と共に御代がわりを迎えるのだろうと思っていた。
つまり、改元は悲しみと共に迎えるものだろうと。

が、今度の改元は生前退位によるものだ。これは発表されるまで予想だにしなかった。
はじめ、生前退位のことを聴いたとき、やはり違和感があった。
崩御によらない改元なんてあり得るのか。まさか。でもあり得たのだ。

考えてみれば、崩御ではなく生前退位による改元はめでたさしかない。
新しい時代を悲しみを伴わず、慶祝の気持ちだけで迎えることが出来る。
昭和の終りにあったような自粛ムードもなければ、経済の停滞もない。
うん、悪くない。

いうまでもなく、生前退位は天皇陛下の御意志によるものだ。
不敬な云い方であるが、このような雰囲気のもと新しい時代を迎えることができるよう御意志を表明してくださった陛下に感謝している。

新しい時代はどんな時代になるだろう。
一つ云えることは、人間はいつの時代も変わらないので、人間のやることも変わらないだろうということ。
私自身も平成と同じように喜び、悲しみ、そしていつもと変わらぬ歩幅で道を歩くだろう。

さて、平成の半ばを過ぎた頃―平成十七年に開設し、駄文を発してきたこのブログも今年で十五年目を迎える。
といっても、平成二十二年ごろから記事の投稿数は激減し、いまやすっかり過疎化してしまった。
その原因は二つあって、一つは社会人になって学生時代に比べ暇な時間が少なくなったこと。
もう一つはツイッターを始めたことにあると思う。
特にツイッターがブログ界に及ぼした影響は少なからざるものがあると思う。
何か書きたいこと(発信したいこと)があるとき、かつてはブログに書いていたが、いまはツイッターでつぶやけばそれでコトが済んでしまう。
私に限らない。盛んにブログを更新していた人がツイッターに流れ、ブログの更新を止める又は閉鎖するという現象を多く見てきた。
ツイッターは個人運営のブログを殺したのである。

いま、このブログの記事を読み返してみると、恥づかしく思うものの方が多い。
いわば、学生時代の恥を曝け出しているようなものだが、過疎化がすすんでもこれまで閉鎖せずにいた。
平成が終ると同時にこのブログも終りにしようかと思ったが、青春時代(?)の記録として、それなりに愛着もある。
そこで、ブログを「凍結」するという恰好で一旦区切りをつけたい。

では、令和の時代にまたお逢いしましょう。
それまで、しばしの別れ。

福岡県知事選挙が分裂しているワケ

2019-02-12 21:40:28 | 政治・経済
福岡県知事選で自民党が分裂している。
先月末、自民党本部と自民党福岡県連が現職の小川洋知事(69)を推薦せず、新人で元厚生労働官僚の武内和久氏(47)を推薦したからだ。
小川知事は過去2回の知事選で自民党の支援を受けているにもかかわらず、一体何があったのか。
テレビや新聞の報道ではこの辺の事情が今一つわかりにくいが、一言でいえば、麻生太郎(衆議院議員、福岡8区選出、副総理)と小川知事の対立だ。
もう少し実態に即して言えば、小川知事が麻生太郎から嫌われたことが原因であり、さらに、その裏には麻生と武田良太(衆議院議員、福岡11区選出)の対立がある。
この二重構造が福岡県知事選挙における自民党の分裂をややわかりにくくしている。

小川知事は元経産官僚。麻生内閣のときに内閣広報官を務め、2011年の福岡県知事選のとき、麻生から推される恰好で知事になった。
実はこの知事選のとき福岡県連は福岡県議会のドンと呼ばれる藏内勇夫県議を推薦候補としていた。
そこに横やりを入れ、小川洋の擁立を強要したのが麻生だ。
これを受けて、当時県連会長だった武田良太は分裂選挙を避けるため藏内を説得してやむなく出馬を辞退させた。

麻生が横やりを入れたのには理由がある。
同年1月、武田良太が県連会長に就任しているのだが、本来、県連会長には麻生の就任が有力視されていた。
ところが、古賀誠ら県連内の反麻生派が武田を推して会長に就任させたのだ。
このことで、麻生と武田の関係が悪化。麻生の横やりはその意趣返しではないかといわれる。
以来、麻生と武田はことあるごとに対立することになる。(註1)
ともあれ、麻生の強固な後ろ盾があって、小川は福岡知事になったといえる。
麻生太郎こそが「小川県政の生みの親」と謂われるほどだ。

そんな麻生と小川の関係に亀裂が入ったのが2016年の衆院福岡6区の補欠選挙。
この選挙区から当選していた鳩山邦夫の死去に伴うもので、鳩山邦夫の二男・鳩山二郎と前述の藏内勇夫の長男・藏内謙が争った。
このとき、武田は鳩山二郎を支援し、麻生は藏内謙を支援した。(ここにも武田と麻生の対立の構図があることに注目)
なお、県連は藏内謙を推しており党本部に公認申請したが、党本部は自民党分裂を避けるため、どちらの候補も公認せず、当選した候補を追加公認する方針を示した。(註2)
この選挙戦で麻生は小川に藏内候補の出陣式への出席を要請する。麻生にしてみれば当然、小川は出席するはずだった。
ところが、小川は腰痛悪化による入院を理由として出陣式を欠席したのだ。
小川としては、どちらの味方もせず敵も作らないようにと安全運転したつもりだったのだろうが、これが裏目に出た。
小川のこの対応に麻生は激怒し、県議会でも麻生派の県議から「入院した事実自体が疑わしい」という声が上がるなど紛糾した。
しかも、選挙結果は鳩山に4倍以上の差をつけられて藏内が大惨敗。法定得票数すら取れなかった。
飼い犬に手を噛まれ顔まで潰された格好となった麻生の怒りは凄まじく、この件以来、小川からの面会は一切謝絶。アポすら取れない状態だという。

そして、今回の知事選である。
何としても小川を再選させたくない麻生は対抗馬として元厚生労働官僚の武内和久を立てた。
今や麻生派が多数派を占めるようになった県連も武内氏を支援。
一方、党本部は2019年1月中旬に実施した輿論調査で小川が武内を大幅に上回る結果が出ていたことから、武内の推薦に否定的な声が根強かった。
さらに1月28日には小川支持に回った武田ら県選出国会議員三名が二階俊博幹事長に対し、小川氏推薦を直訴するという動きもみられた。
しかし、その日の夜、麻生は安倍首相、甘利利明選対委員長と会談し安倍に「(武内氏の)推薦が取れないなら副総理を辞める」とまで云って、武内の推薦を直談判した。
「小川さんが強いみたいだけど・・・」推薦を渋る安倍首相に対し、麻生は「負けてもいいから勝負させてくれ。(武内に)推薦を出して戦わないと、勝てる選挙も勝てなくなる」と反論。
安倍首相も最後は言葉を飲み込み、会談後「あとは幹事長室と選対でやってください」と周囲に伝えた。
二階幹事長は「調査では現職が圧倒してるじゃないか」とやはり渋ったが、麻生派の甘利と萩生田光一(幹事長代行)が二階を説き伏せた。

こうして1月30日、自民党は武内の推薦を決定したことを発表し、名実ともに分裂選挙となった。

早速、反麻生の武田議員は「県内自民党の分裂を招き支援団体の信頼を損ねた」と不満を表明し、自民党県議からも「与党として支えてきた知事を支援しないことを支持団体や有権者が納得してくれるかどうか」と戸惑いの声も聞こえた。
そういう声に対抗するかのようにその後も麻生は小川批判を繰り返している。
「伸びているのは福岡市だけ」と云ったり、麻生渡・前福岡県知事の自動車産業振興といった実績を並べた上で「(小川県政の)2期8年で、今云ったような話一つでもありますか。ぜひ聞かせてくれ」と云ったり・・・。
また、反麻生の武田議員が小川氏を支援していることに対しては、麻生側近の大家敏志(参院議員、党本部選対委副委員長、県連選対委員長)に「安倍総裁、二階幹事長のもとで決まった。それ以外の候補者を応援するのであれば、党を出ていっておやりになればいい」と云わせて牽制し、「具体的行動があれば、しっかりとした対応をしたい」と処分も匂わせた。

更に今月に入って、麻生渡・前福岡県知事が武内候補の後援会長に就任することが分った。
麻生渡にとって小川は大学も出身省庁も同じ経歴をたどる直系。小川知事誕生の際には麻生太郎と共に支援に回っていた。
しかし、その後、麻生渡は「助言を素直に聞き入れない小川知事に感情的反発を抱えるようになっていた」(県幹部)らしく、周囲に「最大の失敗の一つは、小川君を後継者にしたことだ」と話すほど関係は悪化。
昨年春には小川に2期8年での退任を促したこともあったという。
麻生太郎にとっても前知事の応援は有難い。
なぜなら、自民党内には「(麻生太郎は)私怨で県政をゆがめている」という批判があるからだ。
前知事が反小川を表明することによって「俺の私怨じゃない。小川の県政と政治姿勢に反対しているのだ。ほらみろ、前知事も批判してるじゃないか」というわけだ。
麻生渡の後援会長就任の報に対し、小川は「私の何がいけないんだろう」と驚きとともに周囲に漏らしたという。

たしかに、どうしてこうも小川は嫌われてしまうのか。
一言でいうと、小川は政治家ではなく、役人だからということに尽きると思う。
小川県政は良く言えば、安全運転で無難。大きな失政もない。有能で真面目な役人という印象だ。
が、裏を返せば、リーダーシップがなく、面白みに欠け、八方美人で政治的な動きができない。
定例記者会見でも「国の動向を注視する」「情報収集に努める」など、役人が云いそうな常套句が並ぶ。
踏み込んだ発言をすることはほとんどなく、誰かさんと違って失言とは無縁だが注目を集めることは少なく「地味」との評価が一般的だ。

しかしそういう役人らしい振る舞いが前述の6区の補選の騒動のときのように裏目に出ることもある。
例えばこの選挙戦でも小川は、自民党が武内氏の推薦を決定した直後、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本維新の会、社民党に依頼していた推薦の取り下げを要請した。
与野党対決と思われると不利になるという思いがあってのことだろうが、まさに役人の対応だった。
麻生太郎の言葉を借りれば「言われた側はふざけるなと思う。役人としては良いが、政治家としていかがなものか」ということになる。
すぐに武内氏を推す県議からも「節操がない」と批判が出た。
既に推薦を決めていた立憲民主党からは「ひどい話だが大人の対応をしたい」(県連幹部)と困惑気味に話し、国民民主党の県連幹部は「きちんと見極めて行動しないから節操がないと云われる。とんだ茶番だ」と呆れてみせた。
麻生渡も2月8日の記者会見で「与野党対決の構図を避けたいからと、公党との約束をああいう形で下げる。政治的に確たる信念がない」と批判した。

しかしだ、小川県政の評価は決して悪いわけではない。
2期約7年半の間に目立った失政はなく、「県連が対抗馬を擁立しても小川氏に勝つのは難しいのではないか」と話す県議もいる。
人柄についても常に低姿勢。小川の人柄を悪く云う人に会ったことはない。
知事が県内各地に出向き地元民と意見交換を行う「知事のふるさと訪問」では時間オーバーしても県民の話にじっくり耳を傾けるなど、住民に寄り添う姿勢を評価する県民も少なくない。(無論、政治家はあくまで政策と実績で評価するべきだと個人的には思うが)
それに、県民にとっては、自民党内の争いなど知ったことではない。
麻生太郎と県連は対抗馬として武内和久氏を立てたが、福岡のテレビ番組でコメンテーターを務めていた人物とはいえ知名度はゼロに等しい。
元厚労省官僚という経歴も弱い。なにより政策がまったく見えてこない。
また、今回の分裂騒動は麻生と県連による小川知事いじめと見る県民もいる。そうすれば、同情票も集まる。
小川を推す武田議員も「勝負にならんよ」「党の推薦に反し、小川氏を支援しても処分は下されない。県民感情を逆なでする裁定が出た中、小川知事への同情、支援の声は広がっている。納得しない決め方には、立ち上がることが自民党だ」と自信をにじませる。

私個人の予測としても、おそらく武内は小川には勝てないと思う。
県民にとって現職の知事である小川洋のことは知っているが、武内のことは知らない。「一体どこの誰だ?」という感覚だ。
有権者は無党派層が圧倒的多数。自民党本部と県連、そして麻生太郎が推しているからという理由で武内に票を投じる県民が多いとも思えない。
それに、この分裂選挙は政策論争による分裂ではない。小川と麻生の個人的な感情のもつれと、自民党内のお家騒動が招いたものだ。
そんな茶番劇に付き合わされるまっぴらごめんだというのが多くの県民の本音ではないだろうか。

さて、自民党本部は麻生のごり押しで勝算度外視で武内への推薦を決めた。
問題は県連だ。本当に勝てる見込みがあって武内を推しているのだろうか。
負ける覚悟で武内を担いだとも思えない。あるいはただの楽観論か。
じっさい、県連も一枚岩ではない。
「心情的には小川。表立って応援はできないが、積極的に武内を支援することもしない」「下手に動くと大やけどする。知事選は語らず、自分の選挙だけやる」と心情を漏らす県議もいる。
麻生はそんな県議の心の内を知ってか知らずか「保守分裂は瞬間的には間違いなく自民党が弱くなるが、競争も生まれる。競争をしない時に自民党は最も弱くなる」と余裕をみせる。
彼にしてみれば、どちらの候補が勝つのかはあまり大きな問題ではないのかもしれない。
麻生にとって重要なのは小川に推薦を出さないこと。これに尽きるのではないか。
そう、6区の補選のときもそうだった。小川知事と違って麻生太郎は「政治家」である。
最後に麻生太郎が6区補選当時、ホテルのバーの席で若手議員に対してこぼした言葉を紹介してこの稿を終えたい。

―おれは蔵内謙が勝っても負けても困らない。勝てば息子は麻生派に入り、父親はおれに頭が上がらない。負ければ父親は失脚して県議会は大人しくなるだろう。所詮、6区なんか関係ない。


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(註1)その後、第二次安倍内閣が成立し、麻生が副総理に就任すると県連内も麻生派が優勢となり、2013年3月に武田は県連会長を辞任している。
(註2)この選挙以来、自民党内で公認候補が割れた場合、いづれの候補者にも公認を出さず、当選した議員に対し追加公認を出す方式を「福岡方式」と呼ぶようになった。


【おまけ:福岡県知事選 両陣営支持者一覧】

小川洋支持・・・武田良太、鳩山二郎、宮内秀樹、菅義偉(官房長官)、山崎拓、古賀誠、太田誠一、立憲民主、社民党、県医師連盟、連合福岡、農政連、JA福岡中央会

武内和久支持・・・麻生太郎、大家敏志(参院議員)、甘利明(衆院議員、選対委員長)、麻生渡(前福岡県知事)、自民党本部、自民党福岡県連、県看護連盟、県商工政治連盟

中立・・・公明党、国民民主党、維新の会

「日本映画批評家大賞2016アニメ部門」授賞式(ガルパン関連箇所)書き起こし

2016-06-16 21:39:42 | 漫画・アニメ
平成28年5月25日に行われた日本映画批評家大賞2016アニメ部門の授賞式の模様をガルパンに関連する箇所だけ書き起こしました。
敬称は省略しております。

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(前略)

【司会(吉川美代子】
さぁ、お待たせいたしました。いよいよ、第25回日本映画批評家大賞授賞式へ移ります。
まづ最初の賞です。新人声優賞の発表です。
(SE)
新人声優賞は2015年、数多く上映された作品のなかで、素晴らしい魅力と実力を開花させた新人声優の方に贈られる賞です。
本年度は二名の方が受賞されています。ではまず、お一人目の新人声優賞は。

【司会(江木俊夫)】
ガールズ&パンツァー劇場版!渕上舞さんです!

(拍手)

(※劇場版CM VTR流れる)

【司会(吉川美代子)】
では、新人声優賞の選考理由を川崎由紀夫さんから一言お願いいたします。

【川崎由紀夫】
はい、川崎でございます。この度はおめでとうございます。
渕上さんの作品を色々観させていただきまして、なんと云ってもですね、この可愛らしい声のなかにどの役をやっても、一本筋が通っているというか、非常に幹の強さを感じさせてもらいます。
やはり、天性のものとですね努力が作品に表れているというふうに思いまして、今回受賞となりました。
おめでとうございます。

(拍手)

【司会(吉川美代子)】
渕上さんには、ガールズ&パンツァー劇場版の舞台となった茨城県大洗町の小谷隆亮町長と大洗町商工会事務局長の坂本博様、さらに大洗町のゆるキャラ・アライッペがお祝いに駆けつけてくれました。
(※アライッペ登壇)
大洗町はシラスが特産ということで、はい、アライッペはシラスを纏っております。
では、大洗町の小谷町長、一言お祝いの言葉をお願いいたします。

(※小谷町長、坂本事務局長登壇)

【小谷隆亮 大洗町長】
御紹介をいただきました茨城県大洗町長の小谷でございます。
このたび、第25回日本映画批評家大賞において、各賞に受賞された皆様、まことにおめでとうございます。
心からお喜びを申し上げる次第であります。
そして、大洗町が舞台となっております『ガールズ&パンツァー』の劇場版において主人公である西住みほ役を演じられました渕上様がですね、名誉ある日本映画批評家大賞において、新人声優賞を受賞されましたことは心からお祝いを申し上げる次第であります。
地元といたしまして、大変嬉しく、大きな喜びを感じてるところであります。
改めてお祝いを申し上げます。
思い起こせばですね、5年前、東日本大震災により大洗町も地震、津波などによります、被害が色濃く残っている2011年の秋に大洗町を舞台としたアニメを制作したいと、作品のプロデューサーであります、現在は大洗大使としても御尽力いただいております杉山様から申し出をいただきました。『ガールズ&パンツァー』と大洗町の出逢いであります。
アニメ放映当時より全国各地から多くのファンの皆様方が当町の方にお越しをいただいておるところであります。
その勢いは劇場版上映によりまして一層強まっているところでありまして、町民ひとしく大きな喜びを感じているところであります。
お越しいただいたファンの方々が舞台となっている商店街などに訪れることによりまして、地域の方々との交流が生まれておりまして、地域の活力へとつながっているところであります。
この賑わいを全国的な取り組みである地方創生の原動力へと繋げられるよう町としても力を注いで参ります。
こうした賑わいに繋がったのも関係者の皆様方のお力添えの賜物でありまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。
渕上様におかれましては、町の一大イベントであります、あんこう祭、あるいは商工祭、あるいは海楽フェスタなど、色々なイベントに御出演をいただいておりまして、様々なメディアを通じて大洗町の魅力を発信していただいているところであります。
『ガールズ&パンツァー』の西住みほ役以外にも様々な作品において御活躍されていると伺っております。
今後ますます御活躍をお祈り申し上げます。そして、大きな喜びでお祝いの言葉とさせていただきます。本日はまことにおめでとうございます。
(拍手)

【司会(吉川美代子)】
では、小谷町長より渕上さんに新人声優賞のトロフィーが贈られます。

(※小谷町長より渕上舞さんへトロフィーを贈呈)

【司会(江木俊夫)】
それでは、受賞された喜びのコメントを渕上さんよりいただきたいと思います。

【渕上舞】
御紹介にあずかりました渕上舞です。この度は本当に素敵な賞をいただいてまことにありがとうございます。
思い返せば、『ガールズ&パンツァー』そして、主人公の西住みほと出逢ったのは、もう4年近く前になってしまうんですけども、その当時は、色々と自分のまわりのこと、プライベートだったり仕事だったり、うまくいかないことがとても多くて、『ガールズ&パンツァー』はそんな中で、「これが私にとって声優人生最後の作品だな」と思いながら臨んだ作品でした。
そこからというもの・・・こうやって、こんなに華々しい場で私自身が立たせていただいているっていうのは奇跡だなぁって、毎回毎回本当に思わせていただいております。
それ以降、他の作品だったりいろいろとお仕事をさせていただくなかで『ガールズ&パンツァー』もそうなんですけれども、大切な作品、そして大好きなキャラクターたちと出逢うたびに、「あぁ、あの時辞めなくてよかったなぁ」って、すごく幸せを噛みしめる毎日です。
これから『ガールズ&パンツァー』劇場版がこうやって公開され、たくさんの方々に愛され、応援していただき、とても嬉しく思う毎日ではあるんですけど、ここから先も出来れば一日でも長く西住みほと共に毎日を過ごしていけたら嬉しいなと思っております。
ここから一歩一歩、もしかしたらゆっくりかもしれないですけども、一つ一つ階段を、声優という階段を一歩一歩踏みしめながら、毎日幸せに生きていけたら嬉しいなぁなんて思っておりますので、是非、応援してくださる皆様、引き続き応援していただけたら幸いでございます。
そして先輩の皆様、これから何かと御指導いただけたらとても幸いでございます。宜しくお願いいたします。
改めまして、本日はまことにありがとございました。渕上舞でした。
(拍手)


<中略>


【司会(吉川美代子)】
さぁ、続きましては、サンクチュアリ作品賞の発表です。
(SE)
この賞はアニメーションによって、地域活性化となる聖域を作りだした作品に贈られる賞です。
では、サンクチュアリ作品賞は。

【司会(江木俊夫)】
『ガールズ&パンツァー劇場版』です!

【司会(吉川美代子)】
本日は、大洗町クリエイティブマネジメント代表・常盤良彦様とバンダイビジュアル株式会社プロデューサー杉山潔様にお越しいただいております。
(SE)
(※ガルパン劇場版CM VTR流れる)
さぁ、スタッフの皆さんも、そして、新人声優賞の渕上様もアライッペも、どうぞもう一度ステージの方にどうぞ。
(拍手)

【杉山潔】
大洗の人たち上がってください。

(※各員登壇)
(※小谷町長、アライッペに軽く握手)

【司会(吉川美代子)】
さぁ、それではガールズ&パンツァーの選考理由を川崎選考員よりお願いいたします。

【川崎由紀夫】
おめでとうございます。(杉山Pに対し)えー、お仕事の方は大丈夫・・・?
すみません、余計なことを(笑)
えー、おめでとうございます。あの、この作品はですね、非常にセリフのテンポの良さ、それから戦車の描き方の精密さ、そして大洗の非常にリアルさですね。
これが非常にファンの人たちの気持ちをしっかりと捉えて、映画としてのクオリティも非常に高いものだというふうに思いました。
やはりあの、番組を映画化するときに一番悩むのは、ファンの人たちの期待値が映画の場合は非常に上がりますので、その期待にやはりあの見事に応えられたというふうに思っております。
これもスタッフの方々の熱意とこだわりの、非常に勝利と言いますか、そちらを感じた次第でございます。
本当におめでとうございました。

【司会(吉川美代子)】
では、常盤様、杉山様には川崎選考員よりトロフィーが贈られます。

(※川崎選考員より常盤さんにトロフィー贈呈)

【司会(江木俊夫)】
では、受賞された喜びのコメントを常盤様、杉山様宜しくお願い致します。

【杉山潔】
はい、えー、バンダイビジュアルのプロデューサーを務めております杉山と申します。宜しくお願いいたします。
今日は本当にどうもありがとうございました。

【常盤良彦】
その杉山さんと一緒に大洗町と『ガールズ&パンツァー』のパイプ役といったらいいんですかね?

【杉山】
そうですね。はい。

【常盤】
はい。というと、綺麗なんですけども、杉山さんにこき使われています。(杉山:いえいえ(笑))
大洗クリエイティブマネジメントの常盤と申します。宜しくお願い致します。

【杉山】
えっとー、サンクチュアリ作品賞ということで地域との活性化という話はいただいているんですけども、ちょっとあのー、きちんと御説明を短時間でしなきゃいけないかなと思っているんですが、実は元々、その、今となっては、地域振興の一つのモデルケースみたいに言っていただくことが多いんですけれど、元々はそういうつもりではまったくなくて、私どもとしてはリアリティを追求するために実在の町を壊す必要があったものですから、壊させてくださいというお願いに行ったというのが最初ですね。

【常盤】
そうですね。それで、私が各役場とか公共交通機関にお願いしにいったという形ですね。

【杉山】
なので、最初は、みなさん地域の方々も、ま、このおじさんもですね・・・

【常盤】
おじさん云わないでください。この場で。

【杉山】
(笑)えー、町を使わさせてくださいと云ったら、「は?」っていう感じだったんで、多分、何が起きるか全く分かってなかったと思うんですけども。
でもまぁ、どうですか?でも、正直ですね、TVシリーズを始めるときには、まったく原作のない作品だったので、いま非常にその沢山のお客・・・ファンの方が大洗来てくださっているんですけども、現状のようになるなんてまったく予想もしてなかったんですけども。

【常盤】
あのー、すみません、この場で云うのも何なのですが、普段、こんな堅い二人じゃないんです。ですから、今日、すごく緊張してまして。

【杉山】
そうですね。

【常盤】
いつのも通りいったらいいんじゃないですか?

【杉山】
あぁ、そうですね(笑)

【常盤】
あのー、とても、この作品はですね、私が一番思うのは、ファンの方に、ファンの方と町の商店街の方が一緒に楽しんでいただいているというのが一番嬉しいです。

【杉山】
そうですね。元々はね、作品としてやっぱり・・・作品として認知されて人気が出ないと、そこに行ってみたいという風には思わないと思うので、やっぱり今回の劇場版も、大変ありがたいことに先日、興行収入で20億を超えるというですね、(常盤:はい、おめでとうございます)まったく予想をしていない事態になりまして。
それはとても嬉しかったんですけど、それはやっぱり、いい作品を創ったファンの・・・あ、ごめんなさい、スタッフの努力の賜物だったと思うんです。
で、その作品の舞台になった大洗に遊びに行きたいと思って、行ってくれたファンの人たちを大洗の人たちがですね、実はここにいっぱい並んでるんですけど、これ、大洗の商店の皆さんだったりするんですね(笑)
この方々が・・・普段こんな恰好してないんですよ?もっとラフな格好してるんですけど、やってきたファンの人たちをとてもフランクにもてなしてくださるという。実は商店のおばちゃんおじちゃんまで、作品のことちゃんと知ってて、キャラクターの名前も知っていて、どういう物語か、特に先程、そこにいらっしゃるですね・・・大里さん、大里さん。(大里さんを手招きする)
戦車が突っ込んだ肴屋本店という割烹旅館の若旦那なんですけど、この割烹旅館は劇場版を社員研修として、全員で観に行ってくださったりとか。そうやって、地域で非常に盛り上げてくださったということなんですね。
いまちょっと、写真が出たりするんですかね?はい。これは、今年のね・・・

【常盤】
海楽フェスタですね。3月20日にやったイベントですね。

【杉山】
これだけのお客様が来てくださるようになりました。
でも、こんなことホントに思ってなかったですね。

【常盤】
予想もしてなかったですね。

【杉山】
もう一枚ありますね。もう一枚あると思うんですが。
はい。あ、これは、去年のあんこう祭。

【常盤】
なんか、一番こちら側にちょっと違う方が映ってますけども。

【杉山】
格闘家の蝶野正洋さんも応援大使ということで、応援してくださっているんですが、こういう形でイベントをするたびに、これだけのお客様に来ていただいているんですけど、これもやっぱり町の人たちが支えて下さったからだと思うんですね。

【常盤】
はい。杉山さん、たくさん伝えたいことあると思うんですけど。

【杉山】
はい、時間が無いですね。

【常盤】
おそらく時間が結構押していると思うので。

【杉山】
まぁ、でもホントに一言いまの、この状況になったことに対して一言ちょっと。

【常盤】
あ、はい。えっとー、私、アニメのことをなにも知らずに、杉山さんのお手伝いをするうちにですね、ファンの方、そして商店街の方、みなさんと仲良くなれて。
で、渕上さんも私たちのことホント信頼してくださって、いつも大洗町に来ていただいてありがとうございます。
そして、私たちの活動にいつも快く協力していただきます大洗町の小谷町長と商工会の坂本事務局長、本当にありがとうございます。

【杉山】
で、あの、もう一つ附け加えます。商工会とそれから商店の方々だけではなくて、地元の若い人たちが、いまはKGOと云っていますが、当時「勝手にガルパン応援団」というですね、ボランティア組織を作って、キャストの皆さんのアテンドなんかを全部やってくださっています。
えっと、KGOは何人か来てるのかな?はい。KGO前に出て。
(※KGOメンバー一礼)
こういう人たちがですね、本当に無給で、なにくれとなく、朝から晩まで色々準備をしてくださっています。
こういう人たちに支えられていただいた賞だというふうに理解していますので、是非、ちょっと気になった方は大洗に来てください。
美味しいものいっぱいありますので。

【常盤】
そうですね。

【杉山】
はい、温泉もありますのでですね。
それと、商店街歩いていただければ、映画で壊された場所がいっぱい出てきますので。
是非、そちらの方を楽しんでいただければと思います。
本当にこの度は素晴らしい賞をいただきまして、ありがとうございました。

【常盤】
ありがとうございました。

【杉山】
心から感謝します。ありがとうございます。

【常盤】
あと、花束の方は。

【杉山】
あ、そうだそうだ。いけない。忘れてた(笑)
渕上さん、誕生日なんですよね?

【常盤】
27日ですか。

【杉山】
27ですけど、はい。
(※坂本事務局長が渕上さんに花束を渡す)
いけないいけない、大事なことを忘れてました(笑)
それともう一つ大事なことを忘れていました。今日、25日ですけども、27日にブルーレイとDVDが・・・

【常盤】
あ、宣伝ですね。ここでね(笑)

【杉山】
ちょっと、出して下さい。すみません、私の仕事なんで。こういう形であさってBDとDVDも発売になりますので、(常盤:楽しみにしています)是非、お買い求めいただければありがたいです。宜しくお願い致します。はい(笑)
本当に今日はどうもありがとうございました。

【常盤】
ありがとうございました。

【司会(吉川美代子)】
常盤様、杉山様本当におめでとうございました。そして、渕上様も御誕生日おめでとうございます。
スタッフの皆様、大洗町の皆様、そしてアライッペ、ありがとうございました。それでは、皆様どうぞお席へお戻りください。

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以上です。

渕上舞さんにおかれましては、第25回日本映画批評家大賞新人声優賞受賞、まことにおめでとうございます。
また、杉山潔さん、常盤良彦さん、大洗町の皆様、そして『ガールズ&パンツァー劇場版』関係者の皆様におかれましては、サンクチュアリ作品賞の受賞、まことにおめでとうございます。
いちガルパン、大洗ファンとして改めて心よりお慶び申し上げます。

渕上さんのコメントを聴いていると、胸が熱くなる思いがしました。
また、杉山さんが仰っていましたが、サンクチュアリ作品賞はガルパン関係者とそして大洗町の皆様とそられを愛するファンの方々が紡ぎだして受賞した賞のように思えます。
それら人々の「想い」を御推察するとたいへん胸が熱くなる次第であります。

ガルパンという素晴らしい作品と大洗町という素晴らしい町に出逢えたことを関係者の皆様に対し、心より感謝申し上げます。

末筆ながら、皆様のこれからのますますの御活躍と御健勝を、そして大洗町のますますの振興・発展を衷心よりお祈り申し上げます。

『ガールズ&パンツァー 劇場版』感想

2016-02-01 23:08:03 | 映画・ドラマ
昨年の天長節。
早起きして、皇居の一般参賀の列・・・ではなく、映画館のチケット売り場の列に並んでいた。
午前八時五十分から上映される『ガールズ&パンツァー 劇場版』(以下、ガルパン劇場版)を観るためである。
休日に早起きするのは何年ぶりだろう。
もともと、映画館にはほとんど足を運ばない。
観たい映画は旧作になったときにDVDで借りて家でゆっくり観る。
ガルパン劇場版もDVD化されたときに見ればいいやと思っていた。
が、映画のパンフレットを手に入れたくなって、それならついでにと映画館で観ることにした。
アニメの映画を自分でお金を出して観るのは生まれて初めてだ。
果たして、映画館でガルパン劇場版を観たのは大正解だった。

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映画館で観て良かったと思えた理由。
ベタなんだが、まづ音が凄い。
映画通の人でなくても「映画は劇場で観るに限る。音が違うから」などと言っているのをよく耳にする。
確かにそうなのだけど、これまで劇場で映画を観るたびにそれほどでもないと思っていた。
画面は大きいが音はDVDで観るとのそんな大差はないと。(註1)
しかし、このガルパン劇場版は違っていた。素人でもわかるくらい音圧が普通の映画と違う。
戦車から砲弾が放たれるたびに、音が体に響いてくる。
ツイッター上で、映画に詳しい人だろうか「音響的に言うと、これだけ音圧の高い日本映画は今まで無いんじゃないかと思います」(註2)という感想を目にしたが、砲弾が本当に飛んで来やしないかと焦るくらい音圧が凄かった。
戦車のエンジン音もリアル。それも戦車ごとにエンジン音が違う。
また、履帯のたわみもリアルに表現されていた。
本当に近くに戦車があるようで、のっけから作品に引き込まれた。
水島努監督が「『ガールズ&パンツァー』には映画の大画面と音響がよく似合う、とTVシリーズをつくっている当時から感じていました」と述べていたが、正にガルパンは映画に似合う作品だということを終始実感できた。

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(以下、ネタバレ含みます)

ガルパンをTVシリーズで初めて観たときから「なんて荒唐無稽な設定だろう」と思っていた。
乙女の嗜み戦車道なんてツッコミどころ満載である。設定を聞いただけで笑ってしまいそうになるのだけども、一度、慣れると何も感じなくなるから不思議だ。
映画の冒頭にSD風の西住みほたちが登場し、初めて観る人のために「戦車道とは何か?」とTV版のストーリーを三分程度で説明するのだけど、本当に初めて観る人は面喰うんじゃないだろうか。(劇場で初めてガルパンを観る人は少ないと思うけどね)

しかし、ガルパンが凄いのは、設定こそ荒唐無稽で現実にはあり得ないのだが、内容は実に正攻法だということだ。
SFチックな展開があるわけでもなく、いたずらに萌えに頼るわけでもなく、セカイ系のように複雑な精神面を描いたり、裏設定があるわけでもなく、実に直球なスポ根友情モノだ。
飛び道具を使わず裏技を使わず、直球勝負。それゆえにストレートに感動してしまう。
いや、戦車なので飛び道具を使うといえば使っているんだけど。

よく、ガルパンはミリオタ向けのアニメとかキャラクターの造形から萌えアニメだと勘違いされがちだが、違う。
ドイツのアニメ雑誌『アニマニア』の『ガルパン』に対する有識者のコメントで「正直、人間ドラマとしての深みは無い。しかし、みほの可愛さは【萌え】的に必見だよ!」(註3)というものがあったそうだが、お前は一体何を観たんだと云いたくなる。

シリーズ構成の吉田玲子さん「道を見失った人が、再び自分の道を歩き出す。その過程をきちんと描きたいと思っていました」と述べておられるように、TV版は戦車や萌えよりもそういった人間ドラマに感動できる。
ミリオタでも萌え豚でもない私は、初めてTV版のガルパンを観たとき、少女が戦車に乗っている時点でマジキチアニメだと思っていたけれど、熱い友情や人間ドラマに感動したクチだ。
特に主要メンンバーはそれぞれのキャラクターの背景が描かれていて物語に深みを持させてくれている。
(あ、ミリオタでないのは本当だけど、萌え豚ではないってのはちょっと嘘つきました)

無論、細かい書き込みや作りこみがなされた映像の素晴らしさも多くのファンを惹きつける要因であることは云うまでもない。
TV版からそれは顕著だったが、劇場版では更に上をいくクオリティで圧倒された。
いま云ったことを否定するようだが、劇場版は映像と音を見聞きするだけでも十分楽しい。
誰かが云っていたが電子ドラックのようなもんである。

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この映画、ざっくりいうと三部構成になっている。
一部はこれまでTVシリーズで闘ってきた高校との親善試合。
二部は大洗女子生徒による小学校の廃校舎での共同生活。
三部は大学選抜チームとの闘い。

一部の時点でこれまでのメンバーが勢ぞろい出てくる。まさに劇場版という感じでこの豪華さにそれだけで感動してしまう。
秋山優花里役の中上育美さんが、本来泣くような場面ではないのに各校の登場シーンで泣いてしまったと述べておられたが、この気持ち本当に良く分かる。
かくいう私も泣きそうになった。
特にプラウダ高校の登場シーンは音楽の効果と相まって無性に目頭が熱くなった。敵なのにね。
泣きそうになった理由を何度も自問自答するのだけども情けないことにちょっと説明がつかない。
甲本ヒロトの言葉を借りるなら「いまにも目からこぼれ落ちそうな涙のわけが言えません」(『僕の右手』より)となろうか。

この親善試合は、はじめゴルフ場が舞台なのだが、その後、大洗町へ移動。
TVシリーズでも破壊された肴屋本店が今回はもっと派手に破壊されるし、大洗町役場も砲撃を受け、破壊されていた。
プロデューサーの杉山潔さんの話によると、役場を壊すのは、「さすがにここまでやっていいの?」という不安もあったので、町長に直談判に行ったが、わりとあっさり「いいですよ」みたいな感じだったという。
行政と作品とが良好な関係を築いていることが伺える。
また、その他の施設については「うちに一発ください」という依頼が多くあったとか。
そのこともあってか、劇場版では前述の肴屋本店や役場のほか多くのお店や施設が派手に「一発」もらっていた。
TVシリーズよりも明らかに火薬の量が多い感じで、なかなか楽しかった。

三部はTVシリーズで戦ってきた各学校とタッグを組んで大学選抜チームと闘う。
なにやら週間少年ジャンプあたりの漫画によくある、これまで敵だった者同士が協力し合って強大に敵に挑むというような展開で、なんとも感動的ではないか。

はじめ大学選抜チームと闘うのは大洗女子のみだった。ところが、急遽、各高校が応援に駆けつけてくれたのだ。(しかも、大洗女子の制服を着て!)
そのときの各高校の頼もしさといったら無い。涙なくして観られないシーンである。 

で、なぜ大学選抜チームと闘うことになるかというと、勝たないと大洗女子学園が廃校になるから。
私だけでなく多くの皆さんも「えー!また廃校!?」と思ったはずだ。
戦う理由はまたもやTV版と同じ。廃校免れたんちゃうんかいと関西弁でツッコミそうになるんだけども、戦う目的の設定はこれでいいかとも思う。
あまり深い理由を組み込まれるとかえって物語に集中できなくなるからね。

そういうわけで、二部で失意のどん底に落とされる大洗戦車道チームだが、そこで腐るわけではなく、各々自分が出来ることをしっかりやろうとしている姿勢が良かった。(一部例外あり)
特にアリクイさんチーム(ネトゲ女子ども)はこの機会にと体を鍛え始め、その効果が大学選抜チームとの戦いの折に遺憾無く発揮されていた。
ウサギさんチームはやたらと釣りが上手くなっていた。(戦車道とは関係泣けどね)

そうそう、あのポンコツでおなじみの桃ちゃんが他の誰よりも気丈に振る舞っていて、目頭が熱くなった。
桃ちゃんもTV版を通して生徒会役員として成長したことがうかがい知れる。

そして、会長がやはり立派だった。その理由として、下記のような意見を目にしたが、こういう上司にはついて行けるよね。

ガルパン劇場版、角谷生徒会長は実に指揮官として立派だったなと。
・常に自分から余裕を失わない(外見上)
・常に生徒たちに当面の目標と希望を与え、自暴自棄と堕落を避ける
・正論のみを叫ぶのはなく、他人を頼り、自分の足で外交的寝技に駆け回る
・実戦では口を出さず、責任だけを引き受ける
https://twitter.com/uchidahiroki/status/676945540920295425より

例外は、あの風紀委員の面々。すっかりやる気をなくしてやさぐれてしまっていた。
あのそど子が寝坊するわ、買い食いするわ、挙句の果てには他校の生徒と喧嘩をするわで(田舎のヤンキーか!)、完全に自堕落な人間になってしまい、冷泉麻子から叱責されていた。
いつもと立場が逆である。
ふだん、硬い人間ほど折れやすいというが、風紀委員の面々はまさにそんな感じ。
気持ちはわかるけどね。

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それにしても、文科省の役人、実に嫌な奴ですね。
七三に眼鏡という如何にも役人の風貌で言葉遣いや態度も冷徹。
上からの指示なのだろうが、大洗女子を廃校にするため細かい画策をする。
なんというか、世間一般の役人の負のイメージを具現化したようなキャラクターだ。
ガルパンは反官僚映画である。
いま内務省が存在していたら多分、検閲が入ったろうね。(ないない)

一方で、戦車道連盟の理事長はどうも頼りない。
見た目は「一人一殺」で有名な井上日召のように厳つく、黒幕然とした風貌なのに。
文科省の役人に毅然と意見する西住しほの方がよほど男らしかった。
秋山夫妻にしてもそうだが、この作品では、男より女の方が強い。
ま、あまり男が登場しない作品ではあるが。

余談だが、戦車道連盟の事務局をしほたちが訪れたとき、お茶受けとしてシベリアがだされていて、『風立ちぬ』を思い出した。

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劇場版では初登場する高校がある。

一つは知波単学園。
これまでも設定資料等では言及があったようだが、実際に描かれるのは初めて。
この学園はその名のとおり、九七式中戦車(チハ)を使用する。
九七式中戦車とは1930年代中後期に開発・採用された大日本帝国陸軍の中戦車だ。(ミリタリー知識がないので、ウィキからの受け売りである)
それゆえか、生徒の気風も旧帝国陸軍のそれに近く、なにかとすぐに突撃したがる。
それも状況や跡先を深く考えずに特攻したがるので、突撃という名の玉砕だ。
だいたい、有利な戦況なのに「突撃して潔く散りましょうぞ!」って、それは、土壇場に追いつめられた側が云うセリフだ。
他の場面でも、福田が突撃を止めようとしても上官ならぬ先輩から「突撃は我が校の伝統だ!」と反論される。
合理性を無視して伝統を墨守する感じとかも、まさに旧軍の悪弊を象徴するような気風をもっているのが妙に可笑しい。
戦闘は頭脳と精神のバランスが大切。西住みほも「精神“は”参考になった」みたいなことを云っていたが、精神だけでは戦闘に勝てないという反面教師のような学園だ。
でも、日本をモチーフにした学園とあってどうも憎めないのが憎いところだ。(?)
退却を「転進」「後退的前進」「退却的前進」などと言い換えるところもまさに旧軍のそれで、もはや微笑ましくもあった。

ところで、前述の福田は知波単学園に在籍するおさげ髪の眼鏡のかけた小さな生徒なのだが、モデルは司馬遼太郎(本名:福田定一)なのだという。
司馬遼太郎もまさか死後に女子高生として描かれるとは夢にも思ってみ無かっただろう。
泉下で司馬大先生がどのような顔をしているか想像すると楽しい。
なお、作中に福田が戦車をヤスリで削るシーンはない(笑)
(意味が分からない人はぐぐってみましょう)

また、隊長の西絹代はバロン西がモデルと云われている。
黒髪ロングの和風美人で明るく素直で快活な性格なのだが、どうやらアホの娘らしく、「退却」を「突撃」と聞き間違えたり、3部の戦いに参戦するときも持ってくる戦車の数を間違えてダージリンに叱られていた。
これも、兵隊の士気は高いが、参謀がアレだった旧軍を想起させる。
なお、入浴シーンでかんざしをしていたり、紅茶を呑んだことなかったりと、古風な女子を通り越しておばあちゃんのような娘である。(私は好きですが)

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もう一つは継続高校。

知波単と同じく名前からして変わっているのだが、これはフィンランドが祖国防衛のためソ連と戦った「継続戦争」が由来になる。
つまり、高校のモチーフはフィンランド。
生徒が三人登場するが、どこか飄々としている。
特にチューリップハットをかぶったアキは浮世離れしているというか悟っているような雰囲気でしばしば哲学的なことばを口にする。
どこかで見たことあると思ったら、このキャラ、『ムーミン』のスナフキンなんですね。
よって、あとの二人はムーミンとミィがモデル。ミィの子は名前も「ミッコ」だし。
『ムーミン』がフィンランドの作品ということで生徒もムーミン一味になったのだろう。
それにしても、この高校の戦いっぷりのカッコよさは何だ?
とにかく圧倒的な強さと個性的な戦車の動かし方に圧倒される。
アキが奏でるカンテレからつむぎ出される音楽の効果もあいまって、特に印象に残るシーンだ。
履帯が外れて戦闘不能かと思いきやここからも強かった。
「天下のクリスティー式をなっめんなよー!」と操縦主のミッコが叫び、ハンドルを差し込むシーンが抜群にカッコいい。
なお、「思想脳労」子の解説によると、クリスティー式が採用された戦車は履帯装着時は左右のブレーキレバーで操作し、履帯撤去時はハンドルで操作するので、ハンドルを差し込んだ演出は事故で外れたのではなく、履帯なしで走るために操縦系統を切り替えた演出であるとのことだ。(註4)

さて、作中に一瞬だけ映し出される戦車道ニュースWEB版の記事見出しに「継続高校保有のKV1にプラウダ高校が異議申し立て」というものがあった。
このネタは、継続戦争において、ソ連軍の戦車をフィンランドが鹵獲して自国の戦車として使ったことによる。
記事本文には「昔から因縁のある両校にまた新たな火種が生まれた」とあって、やはり、プラウダと継続にはソ連とフィンランド同様に因縁があるようで思わずニヤリとさせられる。
こういう小ネタを挟んでくるところが、ガルパンの魅力の一つである。

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三部の大学選抜チームと大洗連合軍との戦いは正にこの作品の一番の見せ場なのだが、火薬の量が多くてほとんど戦争のような光景だった。
カール自走臼砲による攻撃なんて、確実に死者が出る規模だよ。
カール自走臼砲は大会直前になって使用を許可したらしく、明らかに文科省官僚の工作なのだが、あんなの戦車として許可しちゃ駄目でしょ。
ガルパンのツッコミどころとして、結構、ルールがざっくりしているところがある。
戦車の数も上限だけ決められていて、同数でなくてもOKだったり、あまり公平や平等は重視されていない模様。

三部では、大洗女子の面々もそれぞれ活躍するのだが、二部の逆境を乗り越え、少し成長した姿を見せてくれた。
アリクイさんチームのももがーは片手で砲弾を装填するし(どんだけ鍛えたんだ)、そど子は「ルールは破るためにあるのよ」と風紀委員らしからぬ発言をする。
大人の発言ですね。一度、苦境を味わい、視野が広くなった証拠だろう。

アヒルさんチーム(バレー部)が「本家参上!」と云って、知波単学園の戦車を率いて戦っていたが、「本家参上!」というのはアヒルさんチームが乗る八九式中戦車が国産初の戦車であることにちなむのだろう。(言うまでもなく、知波単が使う戦車はその後の日本国産戦車)
八九式が九七式を率いる光景は親鴨とそれに附いてゆく小鴨の行進のようで可愛くもあった。

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さて、秋山殿である。
TV版ではミリオタでみほの忠実な犬であり、スパイもやってのける秋山殿だが、劇場版では大活躍・・・!というより、一人超然と各状況を楽しんでいた印象。

冒頭の知波単学園が無暗に突撃するシーンからして他の大洗勢は「おいおい・・・」と呆れた表情をしていたのに、秋山殿だけは「わはー」と明るい顔で嬉しそうにしていた。
試合の結果そっちのけで戦車の突撃を喜ぶあたり実にミリオタの秋山殿らしい。

その試合中に華さんが「お茶でも飲みましょうか」と云い、麻子は「ミルクセーキがいい」という。
試合中にんなもん、あるか!と思いそうになったところで、「クーラーボックスに玉子を入れてきましたので、作れますよミルクセーキ」と秋山殿。
遠足でもなかなか持ってこないよ、玉子。相変わらず用意が良すぎる。

大洗女子学園が廃校になるという事実に直面し、一同、沈み込んでいる時も秋山殿は、いつも持ち歩いているサバイバル道具を駆使して、迷彩柄のエプロンまで附けて料理を始めていた。
普段より活き活きとしていないか、秋山殿。
同じことをみほだか沙織につっこまれていた。

活き活きしているといえば、3部の戦いで大学選抜チームがカール自走臼砲を使用している事実が判明した時も、焦るのが普通だと思うのだが、秋山殿は眼を輝かせていて、死者が出るんじゃないかという状況なのに、ミリオタの鏡のようであった。

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この劇場版の感想としてよく目にするのが「プラウダ高校のシーンが泣けた」というもの。
大学選抜チームとの戦いで、プラウダ高校のクラーラやノンナたちがカチューシャのために捨て身戦術をとる場面がある。
隊長のために自らが犠牲になるその崇高な精神には敬服するほかないが、これには伏線がある。
戦いの序盤でみほの作戦に対して疑問を持つまほに対し、カチューシャはノンナも巻き込み次のようなやり取りをする。

カチューシャ「あなた自分の妹を信頼してないのね。私が雪が黒いといえばノンナも黒って言うのよ!ね、ノンナ!」
ノンナ「はい」
まほ「信頼と崇拝は違う」
カチューシャ「(ぐぬぬ)」

このやりとりで、まほはノンナのカチューシャに対する態度は信頼ではなく崇拝であり、加えて、暗に戦車道に必要なことは崇拝ではなく信頼であることを指摘しており、カチューシャはそれ以上反論できなかった。
しかし、その後、ノンナたちはまほの後半部分の指摘に対し、言葉では反論できなかったカチューシャに代わって行動をもって反論したのではないか。
崇拝は決して信頼に劣るものではないと。あるいは、これが我々のカチューシャへの信頼の証であると云いたかったのかもしれない。
ノンナ以下数台の戦車が犠牲になったときの今までに見せたことのないカチューシャの表情は実際に崇拝を行動で示されたとき、喜びよりも苦しみの方が強いことを物語っている。
そして、自らの発言の重みを省みているようにも思える。
信頼も崇拝も言葉でいうのは簡単だが、行動で示した時にはなかなか重いものになる。

まほに対する反論を行動で示したノンナたちの痛快さ、崇拝による犠牲の精神の崇高さと悲しさ。
多くの人が感動したという所以はこのあたりにあるのかもしれない。

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この劇場版で描かれていたものとして、西住姉妹の和解がある。
TV版でも最終話でちらっと描かれていたが、本作ではその後の姉妹の関係性を補完してくれた恰好だ。

みほが保護者から転入届の書類を貰う為、熊本の実家に帰省したおり、犬を散歩して家に帰宅するところの姉まほに会う。
このときの姉の表情は以前のそれとは違う柔らかいものになっていて、過去のわだかまりが解けていることを示している。
そして、まだ母とは完全に和解できていない妹のために、母の代わりに転入届にサインと判子を捺印するまほ。
普段、クールなだけに余計にこの優しさが泣ける。(公文書偽造ですけどね)

その後、大学選抜チームの試合にもみほの為に駆けつけてくれるし、ここではすっかり妹思いのお姉ちゃんになっている。
ところで、作戦名を決める時、「ビーフストロガノフ作戦」(カチューシャ)、「フィッシュ&チップス&ビネガー作戦」(ダージリン)、「フライドチキンステーキwithグレイビーソース作戦」(ケイ)、「すき焼き作戦」(西)、「アンコウ干し芋蛤作戦」(杏)、などとボケをかます他校にまじって、まほも「ニュルンベルクとマイスタージンガー作戦」としっかりボケていたくだりを見て、意外と妹と一緒で天然なところがあるのではと思った。

みほが天然?と思われるかも知れないが、みほも戦車道以外では通学中によそ見して電柱に頭をぶつけたり、机から落ちたものを拾おうとして、机の下にもぐったら机の上のものを全部ぶちまけたりと、結構抜けているところがあるし、フツーの人が見たら悪趣味ともいえるボコを偏愛するところなんかもちょっとメンヘラの匂いがする。
あの母親に育てられたんだから、姉妹揃ってフツーでないことは確かだろう。

とまれ、戦いの最後も姉妹の協力で幕を閉じる。
そしてエンドロールでもまほがみほに何か語りかけている。
しほ(母)がこの試合のために裏で工作したことやそれを踏まえて一度実家に帰って母にお礼を云ったらどうか?なんて言っているんじゃないかとあれこれ想像出来るが、実際はどんな会話を交わしていたのだろうか。
次回作があるとすれば、みほとしほの和解が描かれることを期待したい。

大学選抜チームとの戦いを終えたシーンで、あんこうチームの戦車にペイントされたあんこうの絵がアップになる。
激しい戦闘を物語るかのように、ひどく擦れている。これが実に良い味を出していた。
TVシリーズを含め、これまでの彼女たち、そして水島努監督をはじめ関係者の努力の跡がここに結集されている気がした。

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(最後に蛇足)

なんだかんだで、初見から一ヶ月以上が経った。
その間、さらに二回劇場に足を運んだ。
アニメの映画を自分でお金を出して観るのは生まれて初めてだ、と冒頭に書いたが、同じ映画を二回以上劇場で観るのも初めてである。

本日(2月1日)、本作の興行収入が10億円を突破したことが公式に発表された。
深夜アニメの劇場版としては異例のロングランとなっているが、本作の中毒性ゆえかリピーターとなっている人も多いのだろう。
リピーターもいいが、本作は是非とも多くの方々に御覧になっていただきたい作品だと心から思う。
興行収入がいい映画が良作であるとは限らないが、ガルパン劇場版は多くの人を惹きよせる確かな理由がある。

なお、2月20日からは「4DX」での上映も決定している。
いまから楽しみである。

よし、“あの言葉”を使わずに、感想を書き終えた(笑)

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註1:ただし、『マッドマックス 怒りのデスロード』は例外で、この迫力は映画館でないと味わえないと思った。
もっといえば、他の作品でも確かに劇場で観るのとDVDで観るのは音も当然違うし、雰囲気など、そういう点が違うのも理解できる。理解できるのだが、1,800円も払っても・・・というのが正直な感想である。
註2:https://twitter.com/namisuke1073/status/666692882833670144
註3:https://twitter.com/marei_de_pon/status/680591449180794881より
註4:思想脳労『全話解説本シリーズ VOL.XX ガールズ&パンツァー劇場版 解説本』(2015年12月29日)8頁

『秋刀魚の味』感想

2015-09-01 00:20:11 | 映画・ドラマ
一年に二回以上はブログを更新せねばと思ったが書きたいことがない。
そこで、某所で綴った雑文をここに転載しておこう。
ところどころ文章がまづいが、暇があれば加筆修正したい。


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小津安次郎監督の『秋刀魚の味』を観た。

一言で云うと妻に先立たれた夫(平山周平)が娘を嫁にやるっていう話なんだけど、色々思うところがあった。
娘や妹を嫁にやるのはやはり辛いよ。

娘を演じるのは岩下志麻。
驚くほど美人で美人嫌いの私でも兜を脱ぐような美人。
あんな娘だと余計に嫁にやりたくないのではないか。

周平を演じるのは笠智衆。
のちの笠よりも若くいかにも昭和の年配のサラリーマンという感じがする。
周平の友人たちの会話が楽しいが、今の同年代のサラリーマン同士の会話に比べ随分上品に感じる。
当時としても上品なサラリーマンを描いていたのか。

また、言葉遣いや話し方も平成の今とはかなり違う印象を持った。
いかにも淡々とした会話。
これも当時そういう会話が一般的だったのか、映画だからそうなのかはよくわからない。

よくわからないことはもう一つある。
それは、この映画のタイトルだ。
『秋刀魚の味』というタイトルにもかかわらず、この映画には秋刀魚を食べるシーンは一切でてこない。
話によると、秋に作った映画だからだとか、秋刀魚の味のようなほろ苦い人生を描いているからだとか色々云われているようだ。


印象的なシーンがある。

周平は戦時中は軍艦の艦長だった。
周平は中学時代の恩師のラーメン屋でかつての部下(坂本、演じるのは加東大介)に偶然出会う。
坂本は周平をバーに誘い軍艦マーチを流してもらいながら酒を呑み交わす。

坂本は云う。
「ねぇ艦長、どうして日本は負けたんですかねぇ?」

周平「うん・・・ねぇ・・・」
坂本「御蔭で苦労しましたよ。帰ってみると家は焼けてるし。喰い物はねぇし。それに物価は上がりやがるしね」
(略)
坂本「けど艦長、これでもし日本が勝ってたらどうなっていたんですかねぇ?」
周平「さぁ、ねぇ」
坂本「勝ったら艦長、今頃あなたも私もニューヨークだよ。ニューヨーク。パチンコ屋じゃありませんよ?本当のニューヨーク。アメリカの。」
周平「そうかね」
坂本「そうですよ。負けたからこそね、今の若けぇ奴ら、向こうの真似しやがってレコードかけてケツ振って踊ってますけどね。これが勝っててごらんなさい。勝ってて。目玉の青い奴が丸髷かなんか結っちゃってチューインガム噛み噛み三味線引いてますよ。ざまぁみろってんだい。」
周平「けど、負けて良かったじゃないか」
坂本「そうですかねぇ。・・・うーん、そうかもしれねぇな。馬鹿な奴らがいばらなくなっただけでもね。艦長、あんたのことじゃありませんよ。あんたは別だ」

この会話には戦争に負けた悲哀を越えて、それを冗談にして酒の肴にしつつ、まだ戦争が遠い記憶でもない戦後17年という時代の「微妙」さをよく表現していると思う。
周平の「負けてよかったじゃないか」という言葉は、負け惜しみでなく達観であろう。
また、かつての上官と部下の関係性が実にいい味を出している。
最後の「艦長、あんたのことじゃありませんよ。あんたは別だ」というセリフが上官部下を超えた男同士の絆のようなものを感じざるを得ない。

本編のストーリーとはあまり関係ないシーンかもしれないが、『秋刀魚の味』というタイトルを体現しているシーンのようにも思えた。

『七つの海よりキミの海』のニューウェーブっぽさの正体

2014-04-16 21:22:58 | 音楽・藝術
一年くらい前、『波打際のむろみさん』というアニメが放映されていた。
『週刊少年マガジン』(講談社)に連載されている名島啓二による漫画が原作だ。

人魚が大勢登場するギャグコメディなのだが、登場人(魚)物の名前が「むろみ」をはじめとして、「ひい」や大湊、大橋、春吉、住吉、冷泉、川端、宝満・・・と福岡の地名や川の名前が由来になっているものが多い。

『エクセル・サーガ』の六道神士もそうだったが、福岡出身の漫画家は郷土愛の強さからか、地元の地名などをキャラクターの名前につける人がいる。
名島啓二氏もそういう郷土愛を発揮したのだろう。
ちなみに、著者の「名島」という名前も福岡の地名にある。これもペンネームだろうか。

私も郷土愛が強い方なので、東京に住む友人から、「博多弁を話す人魚が主人公のアニメがある。あびさんは福岡県人でしょ?」と勧められ、
ほう、どれほどきちんとした博多弁を話しているのかと、早速、視聴してみた。

アニメでむろみさんの話す博多弁を聴いてみると意外や違和感がなかった。
それもそのはずで、むろみさんを演じる声優の田村ゆかりは福岡県福岡市出身。まさに博多弁を遣う地域に生まれた声優だ。
他にも、リヴァイアさんという北九州弁を話す人魚も登場するが、こちらも、福岡県北九州市戸畑区出身の中原麻衣が演じる。
制作スタッフのこだわりか。

さて、この作品を見て一番気になったのは、キャラクターの名前や方言も去ることながら、主題歌だった。
声優の上坂すみれが歌うこのアニメの主題歌『七つの海よりキミの海』を初めて聞いたとき、心に引っかかるものがあった。

「ニューウェーヴっぽいな・・・」

そういう想いに駆られた。
ニューウェーヴとは人によって微妙に定義が異なり、説明が難しいのだが、はてなキーワードがなかなか的を得た解説をしていた。
曰く、
「1970年代のパンク・ムーヴメントに対して、1970年代末から1980年代初頭にかけて発生したアーティスティック、革新的、実験的な側面を重きにおいた音楽の総称。総じてアンダーグラウンド志向であり」云々。
実に簡潔で的を得た説明だと思うが、実際にニューウェーヴをお聴きになったことのない方はそれでもわかりにくいと思う。
言い換えれば、アングラっぽくてサブカルっぽくて変わったパンクロックとでもなろうか。
曲の途中でやたらと、曲調が変化するものが多いのもニューウェーヴの特徴だ。
また、一般にテクノ系と呼ばれるバンドが多い。
代表的なバンドではハルメンズ、ゲルニカ、プラスチックス、ヒカシュー、P-MODELあたりがそうか。

では、なぜこの曲はニューウェーヴっぽいのか。

実は、上坂すみれが大のサブカル好きで、そして、この『七つの海よりキミの海』は上坂すみれが好きな戸川純が在籍していたバンド、ゲルニカの曲調を意識して作られている。
作曲者の神前暁もツイッターで公表しているが、Bメロ後半のD-Eb-F-Db-E-Aというコード進行は上野耕路の曲調をリスペクトしたものだという。
ゲルニカの曲でいうと『銀輪は唄う』や『工場見学』をお聴きただければ、その類似性を理解できると思う。 
上野耕路はサエキけんぞうと少年ホームランズ、8 1/2(ハッカニブンノイチ)、ハルメンズなどのニューウェーヴバンドで共に活動していた人で、これらの追っかけをしていた戸川純と、高校時代から交流のあった太田螢一とでゲルニカを結成し、ジャパン・ニューウェーヴ界の一角を担った。

ところで、ツイッター上で、この曲は「上野耕路というより伊福部先生を彷彿させる」という感想を見かけたが、それもそのはずで、学生時代の上野耕路は記譜法を中心に伊福部昭から指導を受けている。
上野自身は
「ゲルニカのファースト・アルバムの発売の次の年に、某雑誌のインタビューワーとしてお宅にお邪魔して以来、日本音楽界の重鎮的作曲家伊福部昭師からは、創作上の土台となる貴重な教えと幾つかの技術を授かった」(『ゲルニカ20周年記念完全盤』の謝辞より)
と述べている。

つまり、伊福部昭→上野耕路→神前暁という影響の流れ。それを上坂すみれが歌う。
音楽って面白い。

なお、ゲルニカは歌詞カードに正仮名遣いと正字を多用しているが、仮名遣いは「見てゐやう」「無ひ」「浮かべてみやふ」等々、出鱈目。
正仮名遣い界隈の人は、校正したい気持ちに駆られるに違いない。

「終戦の詔書」の謎~国立公文書館にて~

2014-01-18 16:54:58 | 歴史・人物
少し前にNHK「探検バクモン」で爆笑問題の二人が国立公文書館を訪れていた。
これが、実に興味深い内容だった。
国立公文書館は国の重要な公文書を保存しているところ。

古いものでは織田信長や豊臣秀吉、徳川家康の書状も保存されている。
信長の書状には「天下布武」の押印があった。
丸印で天下布武の字をデザイン化したものだが、先進的なデザインでいまも色あせてない。

文書だけではない。我が国の元号が平成に改元された時、当時の小渕恵三官房長官が掲げたあの「平成」の額も保存されている。
あの額はここにあったのか!と「あの人は今」で懐かしの人に出会った感じがする。

さて、公文書館に保存されている重要な公文書では、例えば、日清戦争の「宣戦ノ詔勅」がある。
国務大臣の署名欄をみると、内閣総理大臣の伊藤博文をはじめ外務大臣・陸奥宗光、農商務大臣・榎本武揚などそうそうたるメンバーの花押(註)がある。
そういう歴史好きにはたまらない貴重な文書がごまんと保存されているのだが、当然だが「大日本帝国憲法」や「日本国憲法」の原本も保存されている。

以前、民法で放映している池上彰の番組で日本国憲法の特集をやったときに、国立公文書館を訪れていたが、そのときは原本ではなくレプリカ(複製)しか撮影されていなかった。
ところが、この番組ではふつうに原本が出てきたのでちょっと笑いそうになった。
流石、NHKは違う。国立公文書館にとっても、民放は所詮は民間人だが、NHKは同じ役人仲間という感覚なのだろう。

大日本帝国憲法の原本は上質な紙を使っていて、条文も筆で綺麗に書かれている。
国務大臣の署名をみると、黒田清隆、伊藤博文、大隈重信、西郷従道、井上馨、山田顕義、松方正義、大山巖、森有礼、榎本武揚と豪華すぎる名前が並ぶ。
森有礼の署名は達筆で一瞬、読めない。大隈重信の字はあまり巧くない。
大日本帝国憲法の原本を目の前にしたとき、あの傍若無人な太田光も「ちょっと緊張しますね、これ見るだけで」と真剣な顔をしていた。

一方で、日本国憲法の原本は裏が透けるようなボロい紙を使っている。
日本の一番重要な書類なはずなのに、敗戦後の混乱をしのばせる。それにしてももうちょっといい紙を使えばいいのにと思うほどの質で、学校で使うわら半紙を想像すると早い。
毛筆で書かれた本文の後には印刷文(内容は本文と同じ)がついているが、この部分の紙は透けるような薄い紙を使っている。

上質で紙を使った立派な大日本帝国憲法に比べ、粗悪な紙を使った薄っぺらい日本国憲法。この対比が面白かった。

この公文書館には、なんと「戦争終結ニ関スル詔書案」も保存されている。
そう、大東亜戦争終結時に流れた玉音放送の原案だ。
詔書の文章は揉めに揉めて七回も書きなおされた。このあたりのドラマは『日本の一番長い日』に詳しい。

興味深いのは完成した「終戦の詔書」だ。これには天皇の御署名が入っている。
ところが、この詔書は一部分、紙を削り取って上から書きなおしている。
天皇陛下から御署名をいただく文書に、こんなことは通常あり得ない。
なぜか。詔書作成作業がおこなわれている当時、広島と長崎に原爆が落とされ、ソ連が突如参戦した。
事は一刻を争う。そこで、議論の決着を待たずに清書作業が行われた。
そこに、修正の連絡が入る。一から書き直す時間は無い。そこで紙を削り取るという処置をとったわけだ。

この詔書にはもう一つおかしなところがある。
文書の最後には天皇の「裕仁」との御署名があり、その下には御璽が押印される。
ふつう、文書の最後の行から七行分空けるのが通例になっている。
ところが、この詔書では、天皇の御署名までに二行しか空いておらず、御璽は最後の行の文字に被っている。
いかに急いで詔書を作成したかがわかる。

こういう当時の息遣いは活字にしてしまうとわからない。
公文書館が公文書の原本を保存する意義がここにある。

***************************************
註:花押(「かおう」と読む)というのは、サインのようなもの。大抵は名をくずして書く。平成の今も国務大臣の署名は花押で書かれることが多いようだ。

ところで、重要な公文書は手袋で扱うイメージがあるが、近年では手袋だと却ってすべるので、よく洗った手で扱うことにしているという。

愛国者としての河上肇

2013-11-07 22:35:21 | 歴史・人物
牧野邦昭『戦時下の経済学者』(中公叢書)を読んでいる。
タイトル通り、戦前の経済学者のことについて知れてなかなか興味深い。

例えば、『貧乏物語』で現在でも有名な河上肇。

河上肇はマルクス主義者として知られており、日本共産党に入党した後、昭和八年に治安維持法で検挙されていることから一般に左翼と思われている。
実際に左派から人気が高い人物だが、愛国者としての側面はあまり知られていない。

河上は岩国の武士の家に生まれ、吉田松陰を敬愛していた。
大正二年からブリュッセルに留学し、翌年パリに移り、そこで作家の島崎藤村と出逢う。
藤村は姪との関係を清算するため、大正二年から五年までパリに滞在していたのだ。

河上は藤村としばしば激論を交わしたが、あるとき藤村が「もつと欧羅巴(ヨーロッパ)をよく知らうぢや有りませんか」とたしなめたことに対し、河上は「愛国心といふものを忘れないで居て下さい」と叱っている。

同じくパリに来ていた物理学者の石原純が「日本人があまりに他の模倣を急ぐ」と批判したことに対しても、どんな国の文明でも他の模倣から始まらないことはなく、日本人は模倣するだけでなくそれを自分のものとしてそこからさらによいものを引き出す、と反論している。

また、彼の『自叙伝』には


私はマルクス主義者として立つてゐた当時でも、曾て日本国を忘れたり日本人を嫌つたりしたことはない。
寧ろ日本全体の幸福、日本国家の隆盛を念とすればこそ、私は一刻も早くこの国をソヴィエト組織に改善せんことを熱望したのである。
(『全集』続5巻、140頁)



との記述がある。

日本全体の幸福や国家を隆盛する手段として国家をソヴィエト組織に改組することが正しい手段だとは思わない。
代表作『貧乏物語』でも、貧困を解決する手段として「富者による自発的な奢侈の廃止」を訴えているが、これも方法としてどうか。

しかし、河上の国を思う気持ちには深く共感する。

現在の日本共産党は公式サイトで「河上肇は、戦前の絶対主義的天皇制が支配した暗黒の時代、非合法下の日本共産党にすすんで加わった誠実な経済学者です」と書いているが、愛国者としての河上をきちんと理解しているだろうか。
どうも、自党の宣伝の道具にしているような文面に思えてならない。

たしかに、TPPや新自由主義政策を痛烈に批判しているいまの共産党には、河上の精神が受け継がれているようにも思える。
河上は当時、自由貿易を主張していた田口卯吉の『東京経済雑誌』を批判し、保護貿易を主張していたのだ。

マルクス主義者で共産党員というと現代の基準でも左翼に分類されると思う。(私はそうは思わないが)
そして、一般的に左翼というと反日的なイメージがある。
が、左翼=反日ではないことを河上は如実に示してくれている。

高らかに愛国心を鼓舞する言論には辟易させられるが、それ以上に感情論に立脚した反日的な言論は不快である。
左翼・左派であっても反日的である必要は無い。

一部の左派が反日を生き甲斐とし、日本および日本人を貶める言論に精を出しているのは残念である。
そういう人に「日本国を忘れたり日本人を嫌つたりしたことはない」という河上肇の言葉をなんどでも聴かせたい。

『池上彰の参院選ライブ』における発言録まとめ(後半)

2013-08-02 20:36:41 | 政治・経済
前半の続き。


■細野豪志(民主党・幹事長)

池上「今回の選挙は、こういう言い方は失礼かもしれませんが、民主党がどれだけ負けるかという選挙だったと思うんですね。それでいいますと、とりあえず20議席で何とか踏みとどまりたいという思いを持っていた人、多いと思うんですが、どうもそれを割り込みそうな勢いですねぇ。こうなると責任問題が出てくるのではないですか?」

細野「選挙のすべての責任は幹事長である私にあります。(略)」

敗者にも容赦のない池上さん。細野幹事長の目が本当に涙目で赤くなっていた。


■丸川珠代(自民・東京)に関する解説

池上「なんと、ニックネームが「ヤジ将軍」ということなんですね。」

VTRでは、2010年5月21日の国会で当時の鳩山首相に対して「ルーピー!ルーピー!」と野次ったり、同年3月25日の委員会でも採決の際に「愚か者めが!このくだらん選択をした馬鹿どもを絶対忘れん!!」と大声を張り上げる映像が流れた。
丸川珠代といえば、かつて『ビートたけしのTVタックル』に出演していた印象が強いがこんな人だったとはね。

池上「実はですね、丸川候補に中継を繋いでお話を聴くことになっていたんですね。なっていたんですが、なんか先程、突然事務所を出てしまってですね。約束を果たしていただくことができませんでした。
実はここでもし中継が繋がったらですね、訊いておきたかったことがあるんですね。
実は6年前、丸川さんが選挙に出たときに、期日前投票に行こうとしたら、有権者候補に自分の名前が無かったんですね。
つまり、その前、アメリカで勤務されてまして、日本に帰ったあと編入の手続きをしていなかったんですね。
つまり、日本に来て何年も経っていたのに、この時はじめて自分が有権者名簿に出ていないことが分かった。
つまり、その前の東京都知事選挙、衆議院選挙には選挙には投票に行っていなかったと。投票に行っていなかった方が、立候補するというのは一体どういうことなのかな。
あるいは、最近は投票に行ってらっしゃるのかどうか訊きたかったのですが、インタビューすることができなかった。大変残念です。」


■再び民主党本部から中継

繁田アナ「海江田代表はいまだに姿を現していません。先程まで細野幹事長が深刻な顔で各社の取材に答えていましたが、笑顔を一切見せることがないまま席を立たれました。
先程、当確した候補の名前を壁に貼りだす予定とお伝えしていましたが、民主党の候補で当確との情報が出ている候補もいる中でいまだに名前の貼りだしはされていません。壁は御覧のようにまっさらなままです。」

池上「そうか、一応、当確の人の名前を貼りだす予定だったのですが、そういう気力もないっていうことでしょうかね。」

繁田アナ「民主党10ということで、当確出てはいるんですけども、貼りだしはされていないというお話でしたね。」

宮崎美子「云ったことは、やった方がいいと思いますよね。」

峰竜太「ねぇ、余計なんか沈んだ感じになっちゃいますもんねぇ。」

池上「ひたすら、お通夜みたいな感じになってまってはねぇ。でもまぁ、昨年の衆院選に続いて、まったく同じような事務所の雰囲気と。」



■衛藤晟一(自民・比例)

池上「先程、VTRを見ていてたら、理容業界。まぁ、床屋さんの団体から、業務独占の堅持。つまり、既得権を是非守って欲しいという要望がありました。いまのアベノミクスの第三の矢で、様々な規制緩和によって成長戦略というときに、規制を守って欲しいという様々な団体の要望にこたえようとすると、どうも色んな矛盾が出てくる気がするんですが、如何でしょうか?」

衛藤「美容とか理容とかいうお仕事は免許制になっていますから、しかも、衛生管理という面で全部担ってもらってるんですね。人と人とが一番接するところのお仕事ですから。当然、それが無許可であったり衛生管理が無茶苦茶であったりしたら困るわけですから、そのことをちゃんとやっていきましょうというのが業務独占という名前の意味なんですね。
業務独占というと云い方が悪いかもしれませんけどね。
だから、各々の仕事をやっていく上で、規制は規制として業界に方にかけられるわけですね。衛生管理とか美容とか理容とかに関する技術というのは。これは当たり前のことですね。
ただ、十数年前に何もかも資格をなくしてフリーでやった方がいいのではないかという話がありましたけども、それは元々通じない話で意味の無い規制緩和ということですね。
規制緩和というのは何かプラスでやるために、変な規制を緩和しましょうというのが、規制緩和なのであって、規制緩和を何でも何でもすれば何か世の中が良くなるというのはこれはおかしいんで。目的がちゃんとなきゃいけないんで、それをはっきりしようということで。」

池上「つまり、必要な規制はあるんだ。それを守っていくんだということですね」

抵抗勢力の生き残りの私は、衛藤議員の考えに深く共感する。
なんでもかんでも規制緩和すれば世の中が良くなるという幻想から、国民は一刻も早く醒めるべきだ。


■創価学会について

創価学会と公明党の関係について解説していた。

公明党の支持団体は創価学会。
支持者は一人ひとりが友人や知人の票集めに奔走する。これを友達=friendの頭文字をとって「F票」と呼ぶ。
「目標は自分の自分の年の倍。私は70歳だから最低150票以上」と話す年配の女性。
隣りにいた同世代の女性は「選挙をやると功徳が出るの。」と話していた。



■佐々木さやか(公明・神奈川)

池上「先程、佐々木さんを応援している方のインタビューの中で、功徳を積むという言い方がありました。功徳っていうのは仏教用語ですよね。つまり、佐々木さんや公明党を応援することが、創価学会の人にとっての宗教活動というか、功徳を積むことになるのですか?

佐々木「創価学会の皆さまには今回の選挙では本当に新人の私を大応援をしていただきまして、本当に感謝の思いでいっぱいでございます。
支持団体の創価学会の中の選挙活動の方針ですとか、そうしたことについては、私の方からは申し上げる立場にございませんので、本当に心から感謝の思いでいっぱいでございます。」

池上「あぁ、なるほどなるほど。つまり、創価学会の人が功徳を積むという言い方をしているけども、公明党の立場としてはそれにコメントするないと、こういうお考え、お立場なんでしょうか?」

佐々木「そうですね。支持団体の皆さまの中の運営方針ですので、私としては申し上げる立場にはないと思います。」

池上「わかりました。佐々木さん、創価大学の御卒業ですよね?御本人も創価学会員なのですか?」

佐々木「そうです」

池上「はい、なるほど。ということは、つまり創価学会が応援してくれている。自分の仲間が応援してくれているということですよね?」

佐々木「私も創価学会の一員でございますので、創価学会の支持団体のメンバーの皆さまは同じ宗教団体に所属していると。そういう意味では、仲間と言いますか、繋がりがあると思っています。」

池上「わかりました。弁護士でいらっしゃいますから法律に詳しいと思うんですが、視聴者からの方からの質問がありましてねぇ。その中で、公明党と創価学会の関係は政教分離の憲法の原則に違反しないのかどうかという質問がありました。これにはどのようにお答えになりますか?」

佐々木「政教分離といいますのは、政府ですとか国が、例えば、個人の宗教を制限をしたりとか、押しつけをしたりとか、宗教に介入をすると。それを禁止している原則でございます。ですから、例えば創価学会の皆さんが公明党を支援をしてくださると。それは、通常の支援と同じものでありまして、それは政教分離には反しません。」

最後の質問の答えが立て板に水で答えていて、しょっちゅうこの手の質問に答えていることがうかがい知れた。
ところで、この佐々木議員、美人だとか可愛いとかで評判になっているが、政治評論家の三宅久之さんが生前「公明党の女性議員は美人が多いが、どこか気持ち悪い」という言葉を思い出してしまった。


■安倍晋三(自民・総裁 総理大臣)

池上「峰さんからは「奥さまは原発反対とききますが、家庭内ではどうなんでしょうか?」という質問です。如何でしょうか?」

安倍「あの(笑) これはですね、皆さま、様々な家庭においても、意見が異なってる場合もあるんだろうと思います。二年前に我々、核事故を経験しました。ああいう事故を二度と起こしてはいけない。そういう決意の中で私たちも新しい安全文化を作って参らなければならないと思っています。家内にもですね、そういう方向で進めていくんだと話はしています。」

池上「云ってみれば、家庭内野党を抱えて原発問題について、いつも議論していらっしゃるということですね。」

安倍「そうですね。」

池上「それと、宮崎さんからは「海外から右傾化と見られているんではないか?ということに心配だ」というのがありました。如何でしょうか?」

安倍「よくそれを訊く人がいるんですが、まづ右傾化という規定はなんですか?ということなんですね。例えば日本は自由で民主主義な、民主主義の国ですね。そもそも、民主主義でない国に右傾化していると云われること自体がどうなのかな?という気持ちがしますけどね。例えば、集団的自衛権にしろ、防衛庁を防衛省に変えた時もそうなんですが、それは、軍国主義化への道ですか?と、とある韓国の方に訊かれましたので、韓国の役所は違うんですか?と。集団的自衛権を行使できないんですか?と訊いたんですね。「そんなことありませんよ」という風に彼は云いました。だったら、全然その指摘は当たっていませんねと云ったら、みんな笑ってたんですがね。まぁ、そういうことなんだろうと思います。」
(略)

反原発派は安倍昭恵夫人を支援した方が近道だったりしてね。


■海江田万里(民主・代表)

池上「こういういい方は失礼かもしれませんけど、代表をお引き受けになったとき、敗戦処理党首のような立場だったところがあると思うんですねぇ、その処理が終わったんでしょうか?これで」

海江田「私は敗戦処理党首だと思ったことは一度もありません。(略)」

池上「ここまで民主党が減ってしまうと二大政党制とは言えなくなりますよね。これらかの展望はどうお考えですか?」

海江田「当然ですね、まず民主党がしっかりと、やはり今の自民党、今の経済政策などを推し進めていくということを安倍さんも仰っていますけども、やっぱりそこには色々な落とし穴もありますから、まずやっぱり野党の、責任野党としてそういう落とし穴などについてはしっかり指摘をしていく。(略)」


■渡辺美樹(自民・比例)の事務所からの中継

進藤隆富アナ「苦戦が伝えられている渡辺美樹事務所なのですが、かなり支持者の方の数が多くなってきて、非常にヒートアップしているという感じです。ただ、御本人の姿はここにはありません。」

池上「御本人は、やはりあれですかね?当選確実が出たら現れるということなんでしょうか?」

進藤アナ「当選になるかそうでないのかも含めて、結果が出たら話をするということだったんですが、実は先程電話で直接本人と話すことができました。苦戦の理由は何ですかと訊きましたところ、「やっぱり、ブラック企業批判はありますね」ということは云っています。楽観的には見ていないという風に語っていました。」

池上「所謂、ブラック企業批判が響いたということですねぇ。渡辺さん本人はブラック企業批判について、先程のVTRでもですねぇ、「いや、我々がブラック企業だったら全国どこだってみんなブラック企業になる」と。ちょっとこう、開き直りとも思えるような発言をされてらっしゃいました。やはり、こういう態度も響いているということなんでしょうかねぇ?」


■福島瑞穂(社民・党首)

池上「共産党は躍進しました。しかし、社民党は低迷から脱出できていません。なんかこう、同じような主張に見えるのに、どうして社民党はこんなに苦戦しているのでしょうか?」

福島「そうですねぇ・・・やはり、発信力が足りなかったんでしょうか。街の中ではやはり、脱原発、憲法を護ってくれ、格差是正で頑張ってくれという声の手ごたえはあったのですが、いまは結果を一生懸命見守りたいと思っています。」

池上「その発信力の無さってどいういうことですか?」

福島「実は自民党のいまの歴史認識や憲法のことと、対立して頑張っているのは社民党だと思ってるんですが、それが中々そういう風に見えない、描ききれなかったというのはあると思います。」


■おまけ
番組の終盤に政治記者50人に訊いた『こんな参議院はいらない』というアンケートの結果が発表されていた。
このアンケートの3位は「スポーツ選手の天下り先?」だったのだが、この解説のときに池上さんの横のモニター画面に谷亮子の映像が流れていた。やるね。

映画『風立ちぬ』感想

2013-07-31 22:25:20 | 映画・ドラマ
宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』を観た。
何度も泣きそうになった。ここまで感動するとは思わなかった。
個人的にジブリ作品で一番好きになったかもしれない。
期待していなかっただけに余計に。
宮崎駿はこんな純愛作品も作ることができたのか。
近年の駿はあまり評価していなかたのだけども、いやはや恐れ入りました。

この映画を見終えた直後、ツイッターで私はこうつぶやいた。
私の感想はこれに集約されている。
これ以上、ぐだぐだ述べれば、野暮になる。
が、野暮を承知で少しばかり書いてみたい。

×××××××

映画公開の一か月前から、零戦の設計者・堀越二郎の半生を描く内容ときいていた。
私はミリタリーにもヒコーキにもさして興味はないが、零戦には少しばかり思い入れがある。
その設計者・堀越二郎の半生―。ならば、見てみたい。そう思っていた。
ところがその後、試写会に参加した人が「駄作だ」「つまらなかった」などと酷評しているのを目にしていた。零戦がほとんど出てこないことも知った。
これは、あまり期待しては駄目だなと思った。

と同時に、宮崎駿自身が「初めて自分の映画を観て泣いた」と言っていたことも知っていたので、その理由を知りたいとも思っていた。

果たして、私も泣いたのだった。(正確には泣きそうになっただが、周囲に人が居なかったら泣いていたので、泣いたことにしておいてください)

なぜ私は感動したのだろうか。
端的にいうと、美しかったからだ。
美しいのは作中に描かれた自然や風景、その中を飛び回る飛行機。そして、主人公・二郎と菜穂子の愛だ。

いま、「愛」などと書いていささか恥づかしく思っている。
もともと、恋愛モノの映画はあまり好きではない。ラブストーリーと銘打った映画はそれだけで観る気を無くす。
特に村上春樹的な恋愛観を全面に押し出されようものなら、毒の一つでも口から出てしまうのだが、この作品は違った。
ほんものの純愛ストーリーだった。
宮崎駿が恐らく初めて素直に作った純愛物語ではないか。

作品を観て思ったことは、宮崎駿は本当に作りたいものを作ったのだなということだ。
美しい自然と飛行機。どちらも駿が大好きなものだ。
そして純愛。
純愛なんて、恥づかしくてとても口に出せないし、自分の作品に全面に押し出すことも恥づかしい。
・・・と私なんかは思う。多分、駿自身もそう思っていたのではないか。
でも、七十二歳にして駿はふっきれた。
もう、残りの人生は長くない。ならば、本当に自分の描きたいものを描こう。
子供向けとかエンターテイメントは二の次にした。
周囲がなんといおうと、作りたいものを作った。そう、堀越二郎のように。

そして傑作『風立ちぬ』は出来た。

×××××××

主人公の堀越二郎をみて確信したことが一つある。
これは宮崎駿自身だということだ。
宮崎駿は堀越二郎に自分の姿を重ね映している。

寡黙で不器用で真面目で職人肌で藝術家で、周囲がなんと言おうと美しいものを追求する天才―。
これまったく宮崎駿じゃないか。

二郎が菜穂子と初めて会ったのが菜穂子が13歳くらいのとき。
のちに二郎は菜穂子「初めて会った時から好きでした」というが、それってロリコンじゃあ・・・?
こういうところも駿とそっくりだ。

と、これは半分冗談にしても、後に述べるように何かを犠牲にしても自分の作りたいものを追求する姿や矛盾を抱えながら生きていく姿など、二郎と宮崎駿はやはり似ている。

そう考えると、二郎の声優を庵野秀明がつとめたのも少し理解できるような気がする。
自分と同じ職業で、自分と一番似ている(つまり、二郎とも似ている)のは誰かと駿自身が考えたときに庵野秀明はしっくりきたのだろう。
実際はジブリの鈴木プロデューサーが提案したらしいが、それを呑んだ理由はこういうところにあるのではないか。
(なお、宮崎駿と庵野秀明は似ていないと私は思う)

それにしても、庵野の演技は下手ですね。
映画館で二郎の第一声を聴いたとき、思わず吹き出しそうになった。
一瞬、誰が発した声かわからなかった。天の声かと思った。
映画館でなければ、散々悪口を云ったところだ。

ところが、私の贔屓目なのかもしれないが(別に庵野を贔屓しているわけでもないが)、だんだんとしっくりくるような気もしてくるのだ。
朴訥で不器用な感じの話し方が案外、堀越二郎に近いのかも?と思えてくる。不思議だ。

そういうわけで、庵野秀明を主人公の声優に起用したことについて、皆失敗だと言っているが、私は敢えて成功だと言いたい。
・・・いや、やはり「必ずしも失敗とは云えない」くらいにしておくか(笑)

×××××××

この作品は大正時代から昭和十年代までを舞台にしている。
大正時代の農村の風景、都市の風景をみていて、私の祖父母ですら、その風景を観たことがないはずなのに、限りなく懐かしく思えるのはなぜだろう。
一日でもいいから、この時代にタイムスリップしてみたいと強く思った。

テレビもエアコンもパソコンもない。電話や車も普及していない。
現代を生きる我々にとって不便なことこの上ないはずなのに、魅力的に映る。

しかも、菜穂子を襲ったような結核が不治の病だった時代である。
その他、数多くの病があり、戦争もあり、劣悪な生活環境があり、生まれた子供が二十歳になるまでに半分くらいが死んでいた時代である。
様々な不幸が多くあった時代なのに、魅力的に映る。

単に私が懐古趣味なだけだろか。

少なくとも、大正時代のまだ近代化途中の日本の風景が駿も好きなのだろうなと思った。
日本の原風景を描かせて宮崎駿の右に出る者はいない。

そういえば、この作品、やたらと煙草を呑む(無粋な云い方でいうと喫煙)シーンが出てくる。
二郎も同僚の本庄も軽井沢で出会ったスカルトプもやたらと煙草を呑む。
禁煙ファッショが吹き荒れる現代社会への当てつけとも思えるほどに。
いや、きっと当てつけなんだろうけど。

×××××××

二郎について「薄情者だ」という感想を目にした。

『風立ちぬ』を見て驚いたこと
http://blog.goo.ne.jp/sombrero-records/e/fc082b472586d1994a96b6b975fdcece

詳細は上記URLに譲る。
この視点は実に面白いと思うが、私に言わせると誤解であると言わざるを得ない。
まづ、確認しておきたいのが二郎は寡黙な藝術家だ。
こんな人間が愛情表現が得意なはずがない。
いや、藝術家に限らない。明治生まれの日本男児はそもそも愛情表現が下手なのだ。
(私が明治の魂魄を持って生まれた男だからよくわかる)
それでいて、藝術家。ついでに言うと最近はやりの言葉で云う理系男子だ。
愛情表現が得意だと思わせる要素が皆無に近い。
そう考えると、むしろ、菜穂子の父親の前で「付き合うことを認めてください」と云ったり、黒川家で「いまから結婚します」と云ったりと、かなり大胆な行動とストレートな物言いをしている。
普通でないという意味で、やはり、恋愛は下手なのかもしれないが。

でも繰り返し云うが、二郎は決して薄情な男ではない。
それは、菜穂子が喀血したという報せを聞くや、涙を流しながらそのまま夜行列車に飛び乗り、名古屋から東京へ駆けつけるという行動からも見てとれる。
名古屋から東京へ移動中、二郎は涙を流しながら設計図を作成している。
これだけでも万感迫るものがある。

少年時代のエピソードでもいじめられていた下級生を助けに入って、いじめていた上級生を背負い投げしている。
なかなかできることじゃない。
関東大震災の時も汽車の中で足首の骨を折った菜穂子の侍女を背負って安全な所まで批難させた。
一体どこが薄情者なのだろう。

二郎が薄情男に映るなら、それは、百言尽くして愛を表現しないと愛されているという実感を持つことができない現代人の病理がそうさせているのだ。
少なくとも私は巧言令色で愛情表現の上手い男よりも、朴訥で愛情表現の下手な男の方が好きだ。
でも、そういう男は薄情者だと言われる。
とかく現代は生きにくい。

×××××××

もう一つ、二郎は残酷な男だという意見に対しても、一言述べたい。
二郎が残酷だというのは、美しさにしか興味が無く、そのほかのことを犠牲にしている。また、自分の作った戦闘機が戦争の道具として使われるものだという意識が無い、というような理由による。

この意見については、実は半分そのとおりだと思っている。

美しさを追求することは本質的に犠牲がいるものだ。

二郎は戦争を望んでいなかっただろう。いわんや人を殺すことなど・・・。
しかし、美しい飛行機を作りたかった。
天才や藝術家はしばしばこういう矛盾を抱えて生きていくものなのだ。

それは、宮崎駿にも云える。
彼は反戦平和主義者でありながらミリタリーオタクで戦闘機や戦車が大好きだ。
ジブリのプロデューサーの鈴木敏夫も同様の指摘をしている。
また、自然の大切さを訴えながらも、自分はアニメを作っている。
「原発の問題を言われても、映画なんて電力そのもの。電力会社の宣伝によると電気の四分の一が原発だそうだし、アニメのセル画なんて石油の固まりだし」と、宮崎駿自身が述べている。
宮崎監督自身も矛盾を抱えて生きているのだ。
そして、宮崎駿はこうも云っている。

「確かに僕は矛盾に満ちているかもしれない。でも仕方がない。矛盾のない人間はたぶんつまらない人だ」と。

×××××××

最後に国語のお勉強。

本作のタイトル『風立ちぬ』はどういう意味だろう?
小学生や中学生に訊くと「ぬ」を打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」と勘違いして、「風が立たない」という意味だと答えるかもしれない。(大人でも勘違いする人は多いように思う)

正解を先に書くと、「風立ちぬ」の「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形なので、直訳すれば「風が立った」「風が立ってしまう」「風が立ってしまった」というような意味になる。
(「風が吹き出した」等にすれば綺麗な訳になりますね)

「ぬ」を打消の助動詞か完了の助動詞かを見分けるには未然形についているか、連体形についているかで判別できる。

つまり、打消しの助動詞は未然形につくので、「風が立たない」という意味にするならば、タ行四段活用動詞「立つ」の未然形が「立た」なので、「風立たぬ」となる。
一方、「立つ」の連体形は「立ち」なので、それにつく「ぬ」は完了の助動詞となる。

本作では、「風立ちぬ」というセリフは出てこない。

その代わりに、カプローニが云う。
「日本の少年よ!まだ風は吹いているか?」
「吹いています!」
「なら生きねばならん!」

風立ちぬ、生きねば!

なんと感動的な言葉だろう。
我々は、野に風が吹き続ける限り生きなければならない。

颯爽と駆け抜ける清々しい風。
この作品はそういう作品だ。