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「終戦の詔書」の謎~国立公文書館にて~

2014-01-18 16:54:58 | 歴史・人物
少し前にNHK「探検バクモン」で爆笑問題の二人が国立公文書館を訪れていた。
これが、実に興味深い内容だった。
国立公文書館は国の重要な公文書を保存しているところ。

古いものでは織田信長や豊臣秀吉、徳川家康の書状も保存されている。
信長の書状には「天下布武」の押印があった。
丸印で天下布武の字をデザイン化したものだが、先進的なデザインでいまも色あせてない。

文書だけではない。我が国の元号が平成に改元された時、当時の小渕恵三官房長官が掲げたあの「平成」の額も保存されている。
あの額はここにあったのか!と「あの人は今」で懐かしの人に出会った感じがする。

さて、公文書館に保存されている重要な公文書では、例えば、日清戦争の「宣戦ノ詔勅」がある。
国務大臣の署名欄をみると、内閣総理大臣の伊藤博文をはじめ外務大臣・陸奥宗光、農商務大臣・榎本武揚などそうそうたるメンバーの花押(註)がある。
そういう歴史好きにはたまらない貴重な文書がごまんと保存されているのだが、当然だが「大日本帝国憲法」や「日本国憲法」の原本も保存されている。

以前、民法で放映している池上彰の番組で日本国憲法の特集をやったときに、国立公文書館を訪れていたが、そのときは原本ではなくレプリカ(複製)しか撮影されていなかった。
ところが、この番組ではふつうに原本が出てきたのでちょっと笑いそうになった。
流石、NHKは違う。国立公文書館にとっても、民放は所詮は民間人だが、NHKは同じ役人仲間という感覚なのだろう。

大日本帝国憲法の原本は上質な紙を使っていて、条文も筆で綺麗に書かれている。
国務大臣の署名をみると、黒田清隆、伊藤博文、大隈重信、西郷従道、井上馨、山田顕義、松方正義、大山巖、森有礼、榎本武揚と豪華すぎる名前が並ぶ。
森有礼の署名は達筆で一瞬、読めない。大隈重信の字はあまり巧くない。
大日本帝国憲法の原本を目の前にしたとき、あの傍若無人な太田光も「ちょっと緊張しますね、これ見るだけで」と真剣な顔をしていた。

一方で、日本国憲法の原本は裏が透けるようなボロい紙を使っている。
日本の一番重要な書類なはずなのに、敗戦後の混乱をしのばせる。それにしてももうちょっといい紙を使えばいいのにと思うほどの質で、学校で使うわら半紙を想像すると早い。
毛筆で書かれた本文の後には印刷文(内容は本文と同じ)がついているが、この部分の紙は透けるような薄い紙を使っている。

上質で紙を使った立派な大日本帝国憲法に比べ、粗悪な紙を使った薄っぺらい日本国憲法。この対比が面白かった。

この公文書館には、なんと「戦争終結ニ関スル詔書案」も保存されている。
そう、大東亜戦争終結時に流れた玉音放送の原案だ。
詔書の文章は揉めに揉めて七回も書きなおされた。このあたりのドラマは『日本の一番長い日』に詳しい。

興味深いのは完成した「終戦の詔書」だ。これには天皇の御署名が入っている。
ところが、この詔書は一部分、紙を削り取って上から書きなおしている。
天皇陛下から御署名をいただく文書に、こんなことは通常あり得ない。
なぜか。詔書作成作業がおこなわれている当時、広島と長崎に原爆が落とされ、ソ連が突如参戦した。
事は一刻を争う。そこで、議論の決着を待たずに清書作業が行われた。
そこに、修正の連絡が入る。一から書き直す時間は無い。そこで紙を削り取るという処置をとったわけだ。

この詔書にはもう一つおかしなところがある。
文書の最後には天皇の「裕仁」との御署名があり、その下には御璽が押印される。
ふつう、文書の最後の行から七行分空けるのが通例になっている。
ところが、この詔書では、天皇の御署名までに二行しか空いておらず、御璽は最後の行の文字に被っている。
いかに急いで詔書を作成したかがわかる。

こういう当時の息遣いは活字にしてしまうとわからない。
公文書館が公文書の原本を保存する意義がここにある。

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註:花押(「かおう」と読む)というのは、サインのようなもの。大抵は名をくずして書く。平成の今も国務大臣の署名は花押で書かれることが多いようだ。

ところで、重要な公文書は手袋で扱うイメージがあるが、近年では手袋だと却ってすべるので、よく洗った手で扱うことにしているという。

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