あび卯月☆ぶろぐ

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『秋刀魚の味』感想

2015-09-01 00:20:11 | 映画・ドラマ
一年に二回以上はブログを更新せねばと思ったが書きたいことがない。
そこで、某所で綴った雑文をここに転載しておこう。
ところどころ文章がまづいが、暇があれば加筆修正したい。


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小津安次郎監督の『秋刀魚の味』を観た。

一言で云うと妻に先立たれた夫(平山周平)が娘を嫁にやるっていう話なんだけど、色々思うところがあった。
娘や妹を嫁にやるのはやはり辛いよ。

娘を演じるのは岩下志麻。
驚くほど美人で美人嫌いの私でも兜を脱ぐような美人。
あんな娘だと余計に嫁にやりたくないのではないか。

周平を演じるのは笠智衆。
のちの笠よりも若くいかにも昭和の年配のサラリーマンという感じがする。
周平の友人たちの会話が楽しいが、今の同年代のサラリーマン同士の会話に比べ随分上品に感じる。
当時としても上品なサラリーマンを描いていたのか。

また、言葉遣いや話し方も平成の今とはかなり違う印象を持った。
いかにも淡々とした会話。
これも当時そういう会話が一般的だったのか、映画だからそうなのかはよくわからない。

よくわからないことはもう一つある。
それは、この映画のタイトルだ。
『秋刀魚の味』というタイトルにもかかわらず、この映画には秋刀魚を食べるシーンは一切でてこない。
話によると、秋に作った映画だからだとか、秋刀魚の味のようなほろ苦い人生を描いているからだとか色々云われているようだ。


印象的なシーンがある。

周平は戦時中は軍艦の艦長だった。
周平は中学時代の恩師のラーメン屋でかつての部下(坂本、演じるのは加東大介)に偶然出会う。
坂本は周平をバーに誘い軍艦マーチを流してもらいながら酒を呑み交わす。

坂本は云う。
「ねぇ艦長、どうして日本は負けたんですかねぇ?」

周平「うん・・・ねぇ・・・」
坂本「御蔭で苦労しましたよ。帰ってみると家は焼けてるし。喰い物はねぇし。それに物価は上がりやがるしね」
(略)
坂本「けど艦長、これでもし日本が勝ってたらどうなっていたんですかねぇ?」
周平「さぁ、ねぇ」
坂本「勝ったら艦長、今頃あなたも私もニューヨークだよ。ニューヨーク。パチンコ屋じゃありませんよ?本当のニューヨーク。アメリカの。」
周平「そうかね」
坂本「そうですよ。負けたからこそね、今の若けぇ奴ら、向こうの真似しやがってレコードかけてケツ振って踊ってますけどね。これが勝っててごらんなさい。勝ってて。目玉の青い奴が丸髷かなんか結っちゃってチューインガム噛み噛み三味線引いてますよ。ざまぁみろってんだい。」
周平「けど、負けて良かったじゃないか」
坂本「そうですかねぇ。・・・うーん、そうかもしれねぇな。馬鹿な奴らがいばらなくなっただけでもね。艦長、あんたのことじゃありませんよ。あんたは別だ」

この会話には戦争に負けた悲哀を越えて、それを冗談にして酒の肴にしつつ、まだ戦争が遠い記憶でもない戦後17年という時代の「微妙」さをよく表現していると思う。
周平の「負けてよかったじゃないか」という言葉は、負け惜しみでなく達観であろう。
また、かつての上官と部下の関係性が実にいい味を出している。
最後の「艦長、あんたのことじゃありませんよ。あんたは別だ」というセリフが上官部下を超えた男同士の絆のようなものを感じざるを得ない。

本編のストーリーとはあまり関係ないシーンかもしれないが、『秋刀魚の味』というタイトルを体現しているシーンのようにも思えた。

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