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雨曇子日記

エイティライフの数々です

ひいきの宿  6

2015-02-05 16:34:32 | エッセー

昭和58年( 1983 )ごろの週刊朝日が連載していた「ひいきの宿」、ご丁寧にそのぺーじだけを切り取って全103 宿のコレクションを持っているのですが、取り出して読み返してみると、なかなか面白いのです。ここで紹介し始めたら止まらなくなってしまいました。

ということで、今回は、 85 番目に載った「松前旅館(奈良)」です。

 

          「新婚ごっこ」の宿               笑福亭 鶴瓶

年 2 回、夏と冬にそれぞれ 1 週間ずつ仕事を休んで、家族旅行をするが、これは海外へ出かけることにしている。また、仕事の関係であちこちおもしろい所へ出かけることも多いが、ぼくの「思い出の宿」といったら、奈良の松前旅館につきる。

この旅館に初めて泊まったのは、僕も女房も 19 のときで、実は、親に内緒の婚前旅行の宿だったのだ。つきあって半年、結婚の約束はしていたものの、まだ手も握ったことのない二人が、「新婚ごっこ」をしに、京都も大阪も人目につくからと奈良へ出かけた。結局は、いつもに増して饒舌になっただけで、おまけに二人の間に衝立を立てて眠るという奇妙な結果に終わってしまったのであった。

結婚して 2 年目ぐらいに再びこの宿を訪れた。猿沢の池から春日神社と、今回は余裕をもって散歩し、「あの、目的を果たせなかった次の朝、真っ白に積もった雪がまぶしかったな」とロマンチックに思い出した。

あのころは木造で、古都奈良にぴったりだったこの宿も、最近改造したときく。寄る年波には勝てないのだろう。ぼくだって、小 4 と小 1 の二人の子供の親なんだから。いずれは、子供を連れてきて、あのときの二人の様子を話してやろうと思っている。   (落語家)

 

 

写真は、10.5×16.2 一枚(猿沢池から望む景観は、奈良そのもの) 3.6×6 が三枚(それぞれのキャプションは「真新しく清潔な部屋」「建物は新しくなっても、看板はそのままに」「天ぷらは、タマネギやサツマイモを使った素朴な味」)

宿についてのコメント

仲秋の名月と衣掛柳で知られる猿沢池近くにある宿。親子3 人で営み、旅館業は 25 年。今年 5 月に改装したばかりの宿にはまだ木の香が残る。奈良の名所めぐりには絶好の場所で、毎年修学旅行生の宿となる。外人客も多く、身振り手振りで悪戦苦闘の毎日だという。

●住所 奈良県奈良市東寺林町

●電話 0742-22-3686

●交通 近鉄奈良駅から徒歩 7 分

●料金 3、500円~(素泊まり)

     7、000円(1泊2食付)

●客室 14室

注:昭和58年頃の設定です