totoroの小道

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大造じいさんとガン 時間経過

2013-10-13 22:56:00 | 5年 国語

10月の授業研究の会では、大造じいさんとガンの読み取りを行う予定だった。
しかし、私の進行がうまくなくて十分な議論の時間がとれなかった。

時間の経過と事実の関係を正確に読むことで、大造じいさんの気持ちを順を追って読み取ることができる。
そこで終わってしまった。
そこで、教科書の記述とそれぞれの位置関係を、時間の経過を考慮して絵に表してみた。

 

そして、あのおとりを飛び立たせるために口笛をふこうと、くちびるをとんがらせました。
と、そのとき、ものすごい羽音とともに、ガンの群れが一度にバタバタと飛び立ちました。
 「どうしたことだ。」
じいさんは、小屋の外にはい出してみました。
 ガンの群れを目かけて、白い雲の辺りから、何か一直線に落ちてきました。
「ハヤブサだ。」

※ガンは(残雪)は、射程圏内に入らない。大造じいさんから遠ざかる方向へ逃げる。

 

 

ガンの群れは、残雪に導かれて、実にすばやい動作で、ハヤブサの目をくらましながら飛び去っていきます。
「あっ。」
 一羽、飛びおくれたのがいます。
大造じいさんのおとりのガンです。長い間飼いならされていたので、野鳥としての本能がにぶっていたのでした。

 ※ガンは、射程圏外。大造じいさんの視野からガンの群れが外れ、おとりのガンとハヤブサだけが視野入っている。

 

ハヤブサは、その一羽を見のがしませんでした。

 ※おとりのガンとハヤブサだけが、大造じいさんの視野入っている。ガンの群れは見ていない。
   二羽の鳥は、まだ射程圏の外にいる。

 

じいさんは、ピュ、ピュ、ピュと口笛をふきました。
 こんな命がけの場合でも、飼い主のよび声を聞き分けたとみえて、ガンは、こっちに方向を変えました。
 ハヤブサは、その道をさえぎって、バーンと一けりけりました。
 ぱっと、白い羽毛があかつきの空に光って散リました。ガンの体はななめに
かたむきました。

※おとりのガンとハヤブサだけが、大造じいさんの視野入っている。ガンの群れは視野の対象外。
 このとき、残雪は「おとりのガン」の救助にUターンを始めるが、大造じいさんは知らない。視野の外だから。
 二羽の鳥は射程圏内に近づく。まだ射程圏には入らない。(射程圏内なら、銃を構えるはず。) 

 

もう一けりと、ハヤブサがこうげきの姿勢をとったとき、さっと、大きなかげが空を横切リました。
 残雪です。

 ※おとりのガンとハヤブサだけを入れていた大造じいさんの視野の中に、急に残雪が入ってくる。
  残雪の行動や位置を追っていれば「残雪」と気づくが、気づかないので「大きなかげ」としか感じない。
  この視野の中に別の何かが入るのは予想外のこと、ありえないことなのだ。
 
  三羽の鳥は、この時に射程圏内に入る。

 

大造じいさんは、ぐっとじゅうをかたに当て、残雪をねらいました。

 ※大造じいさんの視野には、照準を合わせるために残雪だけが入っている。(照準はピンポイントだから。)
  一瞬、おとりのガンとハヤブサが見えなくなる。
  だから、なぜここに残雪がいるのか、何のために残雪がいるのかは、分からない。
  
三羽の鳥は、射程圏内。

 

 

が、なんと思ったか、再びじゅうを下ろしてしまいました。
 
 ※大造じいさんの視野には、照準を合わせるために残雪だけが入っている。(照準はピンポイントだから。)
  なんと=(副)どういう方法をとって対処したらよいか分からないことを表わす。
  か  =不確かな推定を表わす。
  大造じいさんがどのように思っていたかはよく分からないのだが、あり得ないことに銃を下ろしてしまった。
 ※この文からは、この時点では銃を下ろした理由は、大造じいさんにも分からないということが読み取れる。  

 

残雪の目には、人間もハヤブサもありませんでした。ただ、救わねばならぬ仲間のすがたがあるだけでした。
 いきなり、敵にぶつかっていきました。そして、あの大きな羽で、力いっぱい相手をなぐりつけました。
 ※照準を外すと、視野が広くなる。大造じいさんは、残雪、おとりのガン、ハヤブサの三者を視野にとらえる。
  なぜここに残雪がいるのか、何のために残雪がいるのかを理解する。
※大造じいさんの視野には、残雪、ハヤブサが入っている。おとりのガンは視野から外れる。
  刈りの気持ちから、傍観者の気持ちへ変化する。

 

不意を打たれて、さすがのハヤブサも、空中でふらふらとよろめきました。が、ハヤブサも、さるものです。さっと体勢を整えると、残雪のむな元に飛びこみました。
 ぱっ
 ぱっ
羽が、白い花弁のように、すんだ空に飛び散りました。

  ※大造じいさんの視野には、残雪、ハヤブサが入っている。
   傍観者の気持ちから、残雪を応援する気持ちに変化する。さるもの=相当の(なかなか手ごわい)者。
   残雪に気持ちが同化し、手強いと感じている。

 

 

そのまま、ハヤフサと残雪は、もつれ合って、ぬま地に落ちていきました。

※大造じいさんの視野は、二羽の鳥の落下地点を捕らえている。
  この時、大造じいさんは二羽の鳥のどちらを見ていたのだろう?
 

 

 

大造じいさんはかけつけました。

 ※大造じいさんの視野には、残雪、ハヤブサが入っている。
  かけつける=大急ぎで、目的地に到着する。
  大造じいさんの目的地は、どこだろう。何のために駆けつけたのだろう?
  残雪を助けようと思っているのかいないのか?

ここで問題になるのが、でせっかく残雪をねらったのに、で再びじゅうを下ろしてしまったのは変だということだ。
せっかく残雪を仕留めるチャンスが来たのに、狙いを定めた鉄砲を下ろしてしまうのだ。
その理由を話し合うことが多い。
多くは、「残雪の目には、人間もハヤブサモ....ただ、救わねばならない仲間...。」を根拠にあげる。
大造じいさんが感動したのだと。

しかし、絵を描いてみると分かるが、大造じいさんの視線はずっとおとりのガンに釘付けだ。
また、その間、残雪をはじめガンの群れはどんどん遠ざかっている。
かなり遠くに遠ざかりつつあって、だんだん小さくなっていく。
大造じいさんは狙う対象から除外している。
大造じいさんの視野から外れているのだ。

その残雪が、いきなり視野に入ってきた。
ありえないことなのだ。
かなり遠くから、かなりのスピードでUターンしてきたのだ。

残雪が視野に入る。
長年の経験で、反射的に照準を合わせる。
しかし打てない。
いる訳のない鳥がいる。しかも今まで一度も射程距離に近づかないのに射程圏内にいる。
えっ。どうしたんだ。何があったんだ。こんなこと今までなかった。
大造じいさんは動揺したのだ。

この時、大造じいさんの視野には、照準を合わせた残雪の胸元しか入っていない。
鉄砲は何十メートル先の対象にピンポイントで照準を合わせる。
何十メートル先の獲物を捕らえるには、ピンポイントまで視野を切り取って狭めるのだ。
だから照準を外して銃を下ろすまで、残雪の胸元しか見ていない。
残雪と、おとりのガンと、ハヤブサの三者を視野に入れていれば、残雪がおとりのガンを助けようとしているのは分かるだろう。
しかし、残雪の胸元しか見ていないので、残雪がここにいる理由は分からない。
ただ、ただ、突然の好機がおとずれ動揺しただけだ。

だから仲間を助ける姿に感動して、感謝して銃を下ろすことはあり得ない。


例えが変かもしれないが、
桶狭間の戦いでは、今川義元の方が信長より絶対に強かった。10倍の軍勢だからだ。
その今川がなぜ負けたかと言えば、寸前まで信長が視野に入らないように工夫したからだ。
突然、信長軍が登場したのだ。
今川軍は、いるはずのない信長が急に視野に入ってきたので動揺したのだ。 

プロ野球の選手でも、デットボールになる。プロなら、危ないボールは避けきれるはずなのに。
これは、次のボールは、内角低めに速い球が来ると予想して、そこだけをピンポイントに見ている。
すると、肩に向かってボールが来ても、それは視野の外だから直前まで見ていない。
あるはずのないところにボールがあるから避けきれないのだ。

で、鉄砲を下ろしてよくよく見てみる。
  鉄砲をおろしてみて、やっと視野が広がる。
  そして、残雪がおとりのガンを助けに来たことを知る。

そのぐらい、大造じいさんの視野は狭くなっていて、視野の外から急に入ってきた残雪に対応できないのだ。

 

さてで、残雪とハヤブサの戦いへと続いていく。
子どもたちは、おそらく対等の戦いだと思っている。
この概念も打ち砕いてやりたい。

そのために、事実をしっかり確認しなければならない。
ハヤブサは猛禽類だ。嘴も爪もするどい。空中での旋回も得意だ。

それに対して残雪はガンだ。
嘴は、水草を食べるために平たくなっていて、つついても威力はない。
足は水をかく機能に特化していて、足ひれがついている。何かをけったりつかんだりするつくりにはなっていない。
羽は長い距離を飛ぶように進化していて、急旋回には適していない。

もっと端的に言えば、ハヤブサにとってガンは「えさ」なのだ。
えさがハヤブサにかなうわけがない。
だって、鹿がいくら反撃したって、ライオンにはかなわないのと同じだ。

だから、最初の一撃は不意打ちでダメージを与えられたとしても、その後は残雪でもかなうはずはない。
残雪の攻撃は、体当たりすること、威嚇することしかないからだ。
ハヤブサの攻撃は、鋭い嘴と爪だ。
どっちが強いかは分かりきっている。
時間の経過とともに、残雪だけがダメージを負っていく。

ハヤブサは出血しない。
ダメージもそれほど(命に関わる)ではない。大造じいさんを見ると逃げていく余力はあるのだ。
残雪は動けない。
瀕死の重傷なのだ。

対等な戦いではないのだ。
勝てない戦いに自ら飛び込んできたのだ。
刈りの名人の大造じいさんは、そうした生き物の特性をよく知っている。
普通、ガンがハヤブサに向かっていくことはないのだ。
大造じいさんは、残雪の行動のすごさを瞬時に理解することができるのだ。

第35回 2013年11月9日 9:00 12:00 天竜壬生ホール 第2会議室
第36回 2013年12月14日 9:00 12:00 天竜壬生ホール

第2会議室



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