乾燥地帯に位置するモンユワ市。
地球の歩き方06-07年版にも4ページに渡って紹介されているこの街は見どころが溢れた魅力的なところだった。
実際、街そのものもかなりの規模で、大通りは人や車で活気がある。
市場周辺にはお寺もあって人通りが途切れることはない。
身長170メートルの大仏様も印象的だったが、その他にとりわけ印象的だったのはこれも郊外にあるタウンボッデー寺院。
針の山が密集したような金色と赤の派手なコントラストの本堂は参拝者に強烈な印象を与える。
内部に入ると無数の仏像が鎮座しており、無数のカメオ大の小さな石仏が壁面や天井、柱や出入り口に埋め込まれたり飾られていたりし圧巻だ。
天窓から差し込む明かりがそれら仏たちを浮かび上がらせ幻想的かつ厳粛なムードを漂わせる。
外観は仏教とはなんの関係もないように見える建物も内部は仏教的なエッセンスに溢れているのだ。
来訪者名簿を見ると西欧人の名前が圧倒的に多いが日本人の名前も散見される。
堂内では様々なサイズの仏像が販売されており、それを買い求めて堂内に飾ることができる。
堂内に飾られている無数の仏たちは参拝者によって寄進されたものだったのだ。
記念に私も三体の仏像を買い求め、壁面の空いている空間に埋め込んだ。
ちょっと変わった仏教関連施設があるところを除くとモンユワ市とその周辺はすべてに於いてミャンマー的であり、北部のミッチーナのように中国の影響が強烈に表れているということはなかった。
マンダレーの景気も中国によって支えられているという感があったが、ここではそういう中華臭がほとんどしなかったのだ。
宿泊したホテルはバンガロー風のこ洒落た客室が並ぶリゾートホテル。
宿泊客も多くはヨーロッパからの旅行客だった。
しかし、このあたりに中国の影響は少ないと感じた私のイメージは間違いであった。
モンユワ市から郊外の石窟寺院ポーウィン山へ向かう途中、チャーターしていたタクシーがまたまた脇道に入った。
「ここを通るとかなり短縮できるんですって」
とガイドのTさんは説明してくれた。
彼女にとっても初めての道だったようだ。
脇道といっても狭くガタガタの道ではない。
巾は広く舗装はされていなかったがデコボコもほとんどない産業道路だった。
そう、ここは産業道路だったのだ。
しばらく土煙をあげながらこの道を走ると雄大な景色が眼前に広がってきた。
人工的で広大な大地が広がり、その上を数台のダンプカーが走っている姿が遠望できる。
ダンプカーはオーストラリアの鉱山の映像などにでてくる家ほどもある超巨大なダンプカーだ。
「銅の鉱山ですって」
タクシーの運転手の解説によると、あの草木一本生えていない大地は銅の鉱山で政府と民会会社のジョイントベンチャーなのだという。
ほとんど露天掘りともいえる鉱山にミャンマーの富を感じた。
ミャンマーは天然資源に恵まれているが政治体制が欧米の気に入る形態ではないがため必要以上の制裁にさらされている。
スーチー女史をタネに政治体制をゆする背景では、豊富な天然資源に触手を伸ばす腹黒い国際政治の駆け引きが展開されているのだ。
その鉱山の手前に広がる平坦な大地には無数の小さな池が掘られている。
「これも銅をとっているところなんですって」
私たちは道路の近くの木陰に小屋を建て、作業をしている人々はいるところで車を停めた。
彼らの話によると、この無数の池は政府が銅を採掘したあとのいわば残りかす部分を掘り返し、わずかに残された銅を採掘する採掘場だという。
個々の小さな池はジュースなどのスチール缶を使って銅を集めていのだという。
私は化学には弱いのでその仕組みはよく分らなかったが、かれらの背後にいる業者の存在は十分に理解できた。
彼らを使って銅を集めていたのは中国の業者だった。
中国の業者はミャンマー政府が採掘し終った鉱山を格安(または無料だろうか)で借り受け地元のミャンマー人を超低賃金で雇用して残りかすから銅を集めそれを本国へ輸出して莫大な利益を上げているのだ。
ここでの銅の買い取り価格は1キロあたり12000チャット。日本円で1200円。
ここで働くミャンマー人たちの賃金は男が日当1000チャット(100円)で、女が800チャット(80円)。
労働者たちはそういう低賃金でも喜んで働く現金収入を渇望している農家などからやってきた人たちだ。
ここに家族と住み込み働いている。
小さな子供たちもたくさんいるが学校へは行っていない。
銅の採掘場での生活なので日本人の私からすると環境問題が深刻に映る。
こんなところで生活をして彼らは大丈夫なのだろうか。病気の心配はないのだろうか、と。
モンユワ市の郊外でも着実に中国はその足場を建設していた。
偶然にではあったものの、この鉱山の目撃は中国の力を直に体験する機会なった。
採掘場を後にするとき大きく手を振ってくれた女性たちや子供たちの日に焼けた笑顔を忘れることができない。
つづく