25日(水).昨日も風邪が治らず咳が出ていたので家で新聞や本を読んで過ごしました 私のモットーは,風邪を引いたら無理をしない(コンサートを除く)です
昨日 読書のBGM代わりに聴いたのはショーソンの「ヴァイオリン,ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール」です 演奏はヴァイオリン=ジェニファー・パイク,ピアノ=トム・ポスター,弦楽=ドーリック弦楽四重奏団によるCD(2012年7月録音)です
ショーソンというと,多くの人が「詩曲(ヴァイオリンと管弦楽のための)」を思い起こすのではないか,と思います.私もそうでした この「ヴァイオリン,ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール」を生演奏で聴いたのは,今年の「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」でのアルデオ弦楽四重奏団他による演奏(5月5日)を含めて3回あります
聴けば聴くほど名曲だな,と思いCDを購入しました
それ以来,ショーソンと言えばこの曲を思い起こすようになりました
エルネスト・ショーソンは1855年にパリで生まれ1899年に自転車事故により44歳の若さで死去しています パリ音楽院でマスネ,フランクに学ぶ傍ら,しばしばバイロイト参りをしてワーグナーの楽劇を聴き,彼の影響を強く受けるようになります
この「ヴァイオリン~」ではフランクの影響が垣間見られます
この曲は1889~91年にかけて作曲されました 第1楽章「決然と」,第2楽章「シシリエンヌ:速くなく」,第3楽章「荘重に」,第4楽章「非常に速く」の全5楽章から成ります
第1楽章「決然と」の冒頭は,文字通り決然としたテーマ(3つの和音)から開始されますが,このテーマが後々繰り返し出現します 師匠フランク譲りの「循環形式」です
この曲の大きな魅力は第2楽章「シシリエンヌ」の抒情的で美しい音楽でしょう
フランス音楽特有のアンニュイな雰囲気が醸し出されています.第4楽章の推進力も魅力的です
演奏時間にして40分程度の曲ですが,名曲です 一度聴いてみてはいかがでしょうか
ということで,わが家に来てから今日で1120日目を迎え,中国共産党の第19回党大会が24日閉幕し,党の憲法にあたる党規約の行動指針に,習近平総書記の政治理念を『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』と名前を冠した表現で盛り込む修正案が承認された というニュースを見て感想を述べるモコタロです
「特色ある社会主義思想」って 海を埋め立てて中国領土にする覇権主義のこと?
昨日,夕食に「豚丼」「生野菜サラダ」「海老肉団子,シメジ,チンゲン菜のスープ」を作りました.「豚丼」は息子がタレを買ってきたので,それを使いましたが,よほど好きみたい
丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」(幻冬舎新書)を読み終わりました 丹羽さんは1939年愛知県生まれ.名古屋大学法学部卒.伊藤忠商事に入社,98年に社長,2004年会長に就任,現在 名誉理事.公益社団法人日本中国友好協会会長.元・中華人民共和国特命全権大使
この本は,伊藤忠商事の元会長,元中国大使にして経済界きっての読書家が,本を読む喜び,本の選び方,本の読み方や活用法などを縦横無尽に語ったものです
この本の内容を目次で概観してみましょう
①はじめに
②第1章「本に代わるものはない」
③どんな本を読めばいいのか
④頭を使う読書の効用
⑤本を読まない日はない
⑥読書の真価は生き方に表れる
⑦本の底力
⑧おわりに
まず最初に「はじめに」で筆者は,新聞に投稿された21歳の大学生による「本は読まないといけないものなのか?」という投書を読んで驚いたことを告白します
「そんな疑問を抱くこと自体,私にとっては信じがたかったのです 読書の意義など,わざわざ探ったり,説明したりしなくても当然わかるはずのもの
それは常識以前の常識であって,空気を当たり前に吸うのと変わりないもの.少なくとも私はそんな認識を持っているので驚いたのです
」
これは読書好きなら誰もが感じることだと思います 普段テレビを見るかスマホをいじるかしない者にとって本を読むことに必然性はないでしょう
第1章「本に代わるものはない」の中で,筆者は次のように書いています
「人間にとって一番大事なことは,『自分は何も知らない』と自覚することだと私は思います 『無知の知』を知る.読書はそのことを,身をもって教えてくれます.本を読めば知識が増え,この世界のことを幾分か知ったような気になりますが,同時にまだまだ知らないこともたくさんあると,それとなく気づかせてくれます
」
これは,この本の中で一番重要な丹羽さんからのメッセージだと思います 読書については まったくその通りであると同時に,音楽についても言えることだと思います
今からン十年前の話ですが,アルバイトをしてステレオ・セットを買って,せっせとクラシックのLPレコードを買い集めて毎日毎日飽きもせず音楽を聴きました LPが500枚くらい集まったころ,もうクラシックは十分聴いたから別のジャンルを聴こうと,一時,ジャズにのめり込んだ時期がありました
ジャズのLPを50枚くらい,本を何冊も買い込み,集中的にジャズにのめり込みました
しかし,前もってチケットを買ってあったアルゲリッチ+小澤征爾+新日本フィルによるラヴェル「ピアノ協奏曲」の演奏を聴いて,クラシックに舞い戻ることになりました
たったの500枚のLPレコードを聴いただけで,「もうクラシックは十分聴いた」と思い込むのは どこかの国の首相や都知事と同じくらいトンデモナイ慢心で,客観的にみれば「まだ聴いたことがない曲の方がはるかに多い」というのが実態で,まったくクラシックの世界を知らない無知な聴き手だったのです クラシックに戻ってからは,出来るだけ,一度も聴いたことのない曲も聴くようになり,新しい出会いによって好きになる曲も増えるようになりました
今日ご紹介したショーソンの曲もその一つです
閑話休題
同じ第1章の中で,丹羽さんは「何が教養を磨くのか」について次のように語っています
「教養というと,大前提として知識の量が関係すると思われるのではないでしょうか.しかし,私は知識というものは,その必要条件ではないと考えます 私が考える教養の条件は,『自分が知らないことを知っている』ことと『相手の立場になってものごとが考えられる』ことの2つです
(中略)では,教養を磨くものは何か? それは仕事と読書と人だと思います
この3つは相互につながっていて,どれか一つが独立してあるというものではない.読書もせず仕事ばかりやっていても本当にいい仕事は出来ないだろうし,人と付き合わず,人を知らずして仕事がうまくできるわけはありません
(中略)仕事というのは,お金を報酬としてもらうものとは限りません.さまざまなボランティアもそうだし,困っている人々のために働いたり,身体を動かすこともそうです
」
現役を引退してしまうと,読書量(コンサート,映画も)は増えるけれど,人との関わりは極端に減少するし,そうかといって,再就職する気もないし,せいぜいローテーションで回ってくるマンションの管理組合の役員を務めるくらいだと思うけれど,それでも何もやらないよりはやった方が良いのだと思います
第2章「どんな本を読めばいいのか」では,週刊誌を取り上げて次のように書いています
「ある老舗の週刊誌はスクープを連発して話題になっていますが,そのスクープ記事にしても芸能人や政治家の不倫騒動だったり,野球選手の賭博問題であったり,有名タレントの独立騒動だったりと,愚にもつかないものが圧倒的に多い どうしてそうなるかというと,大衆の関心は他人の不幸を見聞きすることにあり,心の中には『ねたみ,ひがみ,やっかみ』に満ちているからではないでしょうか
週刊誌の役割は,大衆の下世話な覗き趣味に応えることです.人間のどろどろした部分,愚かさやくだらなさを知るために,たまに読むならいいかも知れません.しかし,ねたみやひがみがそれに向かわせているわけですから,そんなものをずっと読み続けていたら,負の感情に偏った人間になるのではないか,と私は思っています
」
これを読んで思い出したのは,高校の倫理社会の授業で,教師が言った言葉です⇒「人間の関心事は3つの S に尽きる.何だか分るか? 答えは,スポーツ,スキャンダル,セックスだ」.まさに週刊誌の見出しそのものです
この調子で片っ端から内容をご紹介する訳にもいかないので,以下に興味を引いた「小見出し」をご紹介しておきます
〇本の時代が復活する
〇読みながら考えないと身につかない
〇いい本を見抜く方法
〇無駄な読書なんてない
〇ベストセラーは読む価値があるのか
〇基本的に積ん読はしない
〇他人の失敗談は役に立たない
〇一つでも心に刻まれる言葉があれば,儲けもの
〇ハウツー本は読まない
この本は,本好きの人はすでに手に取ってお読みになっているはずですが,頷くことしきりだと思います
最後に丹羽宇一郎さんについて個人的な経験を書いておきます
今から10年少し前のことだったと思います.当時私は新聞関係団体の事務局に務めていましたが,いわゆる「活字離れ,新聞離れ」を防ぐにはどうしたら良いか,「新聞の活性化をどのように図ったらよいか」について特別ワーキング・グループで検討した結果,一般知識人の意見を聞くことになりました そこで候補に挙がった一人が丹羽宇一郎さんでした
随分前のことなので発言の内容の詳細は覚えていませんが,「新聞は読者の関心から離れているのではないか
政治・経済をめぐる諸問題の報道も大事だが,読者が知りたいのは,近所の高校生の誰々が野球のピッチャーで投げて勝ったとか,身近な問題だ.そうしたことが十分報道されているように思えない
」というようなことをおっしゃっていたと記憶しています
何があっても動じないという武士のような かくしゃくたる姿勢が印象に残っています
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