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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

フォーレ四重奏団のチケットを5枚取る ~ トッパンホール25周年記念スペシャルウィーク / 村上春樹著「街とその不確かな壁」(上巻・下巻)を読む ~ 登場するクラシック音楽を中心に紐解きます

2025年06月20日 00時06分53秒 | 日記

20日(金)。10月上旬にトッパンホールで開かれる「トッパンホール25周年記念スペシャルウィーク ~ フォーレ四重奏団とともに」のセット券(2種類)を取りました

1.室内楽セット券(3公演)は以下の通りです

①2日(木)19時=モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番 K.493」、同「弦楽五重奏曲 ト短調 K.516」、シューベルト「ピアノ五重奏曲 イ長調 ”鱒”」

②4日(土)18時=メンデルスゾーン「ピアノ四重奏曲第2番 ヘ短調 作品2」、ブラームス「ヴィオラ・ソナタ第2番 変ホ長調 作品120-2」、シューマン「ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44」

③7日(火)19時=シューベルト「弦楽三重奏曲第1番 変ロ長調 D.471」、同「アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821」、シェーンベルク「清められた夜 作品4」

2.歌曲セット券(2公演)は以下の通りです 演奏はソプラノ=アネッテ・ダッシュ、弦楽四重奏=フォーレ四重奏団。

①5日(日)18時=ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調 作品60」、マーラーの歌曲集。

②8日(水)19時=カールマン「チャールダッシュの女王」より、コルンゴルト「死の都」より、ドビュッシー「月の光」ほか。

上記のうち10月4日(土)は15時から江東区で東京シティ・フィル「ティアラこうとう定期演奏会」があるので、終演後、地下鉄+徒歩でトッパンホールに向かうことになります 夕食を取る時間がない どころか、ギリギリ間に合うかどうかです

ということで、わが家に来てから今日で3811日目を迎え、トランプ米大統領は18日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を「ばか(stupid)」と呼び、「私はFRBにいくべきかもしれない。FRBに自分自身を任命してもいいのだろうか。私は彼らよりもはるかに良い仕事をするだろう」と語り、改めて利下げを要求した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプの根拠のない自信はどこからくるのか? 自分は世界の王様と本気で思ってんじゃね?

         

昨日、夕食に「豚の冷しゃぶ」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「キュウリとミニトマトの冷やし汁」を作りました 「豚の冷しゃぶ」は、いつもはゴマダレを上からかけて食べるのですが、今回はタレに付けて食べました 最近、私が夜にコンサートがある日は 自分の夕食は自分で作る と娘が言い出したので、助かっています

         

村上春樹著「街とその不確かな壁」(上巻・下巻)を読み終わりました 村上春樹は1949年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年「風の歌を聴け」(群像新人文学賞)でデビュー  「海辺のカフカ」「1Q84」「ねじまき鳥クロニクル」など著書多数。国内外の文学賞を多数受賞しているが、ノーベル文学賞の受賞は今のところない

17歳の夏の夕暮れ、”ぼく”は16歳の”きみ”から高さ8メートルの「壁」に囲まれた「街」の話を聞く ”きみ”が説明するには、今ここに存在するのは自分の”影”に過ぎず、本当の彼女はその「壁」に囲まれた「街」の中にいるという ”きみ”(の影)はその後まもなく死に、”ぼく”は”きみ”から聞いた話を頼りに、切り離された自分の”影”と別れ「街」に入る そこで”ぼく”は本のない図書館に収められた「古い夢」を調べる「夢読み」の仕事に就くことになる ”ぼく”は図書館の司書として働いている本当の”きみ”に出会い、次第に親しくなっていくが、お互いに”影”を失っているため、どうしても心を通わせることができないことに気が付く やがて「古い夢」を開放することに成功し、その底知れない悲しみを知った”ぼく”は、”影”を取り戻して「街」を出ることを決心し、壁の外の現実世界に回帰する(以上第1部)

「高い壁に囲まれた街」の記憶を残したまま、”私”は現実世界で40代になっている 影も付いている。脳裏に焼き付いている街や勤めていた図書館での様子のイメージを持ち続けたまま生きることに限界を感じた”私”は、長年勤務した書籍取次会社を早期退職する ”私”はツテを辿って福島県の雪深い町にある図書館に勤め始める。図書館ではスカートを履く元館長の子易(こやす)氏、司書の添田さん、コーヒーショップの女性店員、図書館に通うイエローサブマリンのヨットパーカー着る少年らと出会う 実は子易氏はすでに死んでいる幽霊で、”私”と添田さんにしか見えない。”私”は彼から生きる上でのアドヴァイスを受ける イエローサブマリンの少年は他人の誕生日の曜日を瞬時に言い当てることができるサヴァン症候群で、「『街』は疫病を防ぐために築かれた」と説明し、「街」を地図に再現して驚かせる そしてある日、突然失踪する(以上第2部)。

”街”に残っていた”私”は「影」のないイエローサブマリンの少年に出会い、図書館での「夢読み」の仕事を託すことにする ”私”と少年は一体化し、それによって”私”は「街」から現世へ帰還し「影」を持つ 一方、少年は「壁」の中の「街」に残り「夢読み」の仕事を続ける(以上第3部)

村上春樹の小説特有の”現世とあちら側の世界を行き来する”「パラレル・ワールド」の物語ですね

村上春樹の小説と言えば、クラシックやジャズが出てくるという特徴があります クラシックに関して言えば、「海辺のカフカ」におけるシューベルト「ピアノ・ソナタ第17番ニ長調D.850」しかり、「1Q84」におけるヤナーチェク「シンフォニエッタ」しかりです

本作でも作曲家の名前やクラシック音楽がいくつか登場します この作品で登場するのは「第2部」以降です

①「私の記憶によればサヴァン症候群には、一度耳にした音楽を、それがどれほど複雑な曲であっても、そのまま一音も違えず正確に再現できる ー 演奏したり写譜したりできる ー 人々も含まれていた。アマデウス・モーツァルトもその一人だったと言われている」(第2巻105 ~ 106ページ)

⇒ これはモーツアルト(1756-1791)が1770年4月11日に、父親レオポルトと共にヴァチカンのシスティーナ礼拝堂を訪れた際に、門外不出とされたアレグリの「ミゼレーレ」(9声部の合唱曲)を聴き、全てを暗記し、外に出てから楽譜に正確に書き写したというエピソードのことを言っています モーツアルトの天才性を語るときに しばしば引用されます

②「ところで彼(イエローサブマリンの少年)は今、どんな本を読んでいるんだろう?」 。「ドミトリー・ショスタコーヴィチの書簡集です」と添田さんは即座に答えた。「愉しそうな本だ」。添田さんはそれに対して意見は述べなかった。眉をほんの少し寄せただけだった 彼女は言葉でよりは表情や仕草で、より多くを語る女性なのだ」(118 ~ 119ページ)

⇒ 「シュスタコ―ヴィチの書簡集ですか・・・とても愉しそうには思えませんけど」という添田さんの表情が思い浮かびます

③「添田さんは軽やかな音を立てながら、私のデスクの上にそれらのカップと皿(紅茶とブルーベリー・マフィン)と砂糖壺を並べた。おかげで普段はがらんとして殺風景な部屋にも、昼下がりのサロンのような優雅で穏やかな雰囲気が生まれた。モーツアルトのピアノ四重奏曲が似合いそうな情景だ」(134ページ)

⇒ モーツァルトの「ピアノ四重奏曲」には「第1番ト短調K.478」(1785年)と「第2番変ホ長調K.493」(1786年)と2曲あります 著者はどちらのどの楽章を頭に描いていたのだろうか? 「サロンのような優雅で穏やかな雰囲気」という表現から推測するに、第1番であれば第2楽章「アンダンテ」、第2番であれば やはり第2楽章の「ラルゲット」ではないかと思います ー と考えたところで、村上春樹著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(2021年6月・文藝春秋社刊)を思い出しました これは村上氏が所有するクラシックレコードの中から個人的に好きな486枚を選んで写真入りで紹介している書籍です

さっそくモーツアルトの「ピアノ四重奏曲」を探してみると、「第1番 ト短調」だけが紹介されていました    解説で村上氏は「第1番はト短調なので、どうしてもこちらの方に目が行ってしまうことになる。モーツアルトのト短調ものに僕は目が無いのだ」と書いています   ここで彼は4種類のレコードを紹介しています。①クリフォード・カーゾン(P)+アマデウス・クァルテット、②ピーター・ゼルキン(P)+アレクサンダー・シュナイダー他、③アルトゥール・ルービンシュタイン(P)+ガルネリ四重奏団、④遠山恵子(p)+ウィーン四重奏団の4枚です  

村上氏は「街とその不確かな壁」の「あとがき」の中で、「この小説を書き始めたのはコロナ・ウィルスが本格的に猛威を振るい始めた2020年3月初めで、3年近くかけて完成させた」旨 書いているので、2021年刊行の「古くて素敵なクラシック・レコードたち」はちょうど時期が重なります したがって、上記のレコードのいずれかの演奏を念頭に置いて「昼下がりのサロンのような優雅で穏やかな雰囲気が生まれた」と書いたのではないか、と推測します まあ、本当のところは著者にしか分かりませんが

④”私”がコーヒーショップで働く女性を初めて食事に誘った時のシーン

「夕方までの時間を送った。ラジオをつけると、FM放送でイ・ムジチ合奏団の演奏するヴィヴァルディの『ヴィオラ・ダモーレのための協奏曲』がかかっていたので、それを聴くともなく聴いていた ラジオの解説者が曲の合間に語っていた。『アントニオ・ヴィヴァルディは1678年にヴェネチアに生まれ、その生涯に600を超える数の曲を作曲しました 当時は作曲家として人気を博し、また名ヴァイオリン奏者としても華やかに活躍していたのですが、その後長い歳月まったく顧みられることなく、忘れ去られた過去の人となってしまいました しかし1950年代に再評価の機運が高まり、とりわけ協奏曲集《四季》の楽譜が出版されて人気を呼んだことで、死後200年以上を経て、一挙にその名を広く世界に知られるようになりました』。私はその音楽を聴きながら、200年以上忘れ去られることについて考えてみた。200年は長い歳月だ 『まったく顧みられることなく、忘れ去られた』200年。200年後に何が起こるかなんて、もちろん誰にもわからない。というか、2日後に何が起こるかも」(173~174ページ)

⇒ 前述の「古くて素敵なクラシック・レコードたち」には「ヴィオラ・ダモーレ協奏曲集」のレコードが3種類紹介されていますが、作品番号までは紹介されていません 放送から流れていたのがこの3枚のどれかであるのか、まったく別の演奏者によるものであるのかも不明です ところで、ヴィヴァルディの音楽って、どの曲を聴いてもヴィヴァルディと分かるDNAがあるような気がします

⑤「洗濯が終わると、庭の物干しに洗濯物を干した。それから、FMラジオでアレクサンドル・ボロディンの弦楽四重奏曲を聴きながら、何枚かのシャツとシーツにアイロンをかけた シーツにアイロンをかけるには時間がかかる ラジオの解説者は、当時のロシアではボロディンは音楽家としてよりは化学者として広く知られ、また尊敬もされていたと語っていた しかし私の聴くところ、その弦楽四重奏曲には化学者らしいところはまったく感じとれなかった 滑らかな旋律と、優しいハーモニー・・・・そういうのがあるいは化学的な要素と言えるのかもしれないけど」「私のクラシック音楽に関するかなり乏しい知識によれば、アレクサンドル・ボロディンはいわゆる『ロシア五人組』の一人であったはずだ。あとは誰だっけ? ムソルグスキー、それからリムスキー=コルサコフ・・・そのあとが思い出せない」(255 ~ 256ページ)。このあと「ねえ、ロシア五人組のことは知ってる?」「いいえ、知らないわ。それって、なにか政治に関連したことかしら? アナーキストのグループとか」という会話が続く(261ページ)

⇒ ここで言っているボロディンの弦楽四重奏曲とはボロディンが1881年に作曲した「弦楽四重奏曲第2番 ニ長調」のことで、「滑らかな旋律と、優しいハーモニー」というのは第3楽章「ノットゥルノ(夜想曲)」のことを指しています 静謐な音楽というのはこういう音楽を指すのでしょう

また、「ロシア五人組」はバラキレフを中心に19世紀後半のロシアで民族主義的な芸術音楽の創造を目指した作曲家集団です メンバーは以下の通りです

ミリイ・バラキレフ(1837~1910)、ツェーザリ・キュイ(1835~1918)、モデスト・ムソルグスキー(1839~1881)、アレクサンドル・ボロディン(1833~1887)、ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844~1908)。

話は変わりますが、この小説では「影」が重要な要素として登場します 「影」ということで頭に思い浮かべたのはジャック・オッフェンバック(1819-1880)が作曲し1881年月2月10日にパリのオペラ=コミック座で初演されたオペラ「ホフマン物語」です 詩人ホフマンが、歌う人形のオランピア、瀕死の歌姫アントニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタに次々と恋に落ちるが、何れも破綻したという失恋話を語り、現在の恋人・歌姫ステラにも失恋してしまうというストーリーです このうち第4幕「ベネツィア:ジュリエッタ」は、悪魔のシュレミールが娼婦ジュリエッタに、ホフマンを誘惑して彼の「影」を奪うよう命令し、見事に成功する。悪魔に「影」を奪われたホフマンは息を引き取る ー という内容です ただし、ここで言う「影」とは鏡に映った「鏡像」のことを指しています

さて、「街とその不確かな壁」における「影」とはどんなものなのか

第1部第8話(上巻58ページ)には次のように書かれています

「そう、その世界では人はみんな影を連れて生きていた。ぼくも『きみ』も自分の影をひとつずつ持っていた ぼくはきみの影のことをよく覚えている。人気(ひとけ)のない初夏の路上できみがぼくの影を踏み、ぼくがきみの影を踏んだことを覚えている。子どもの頃によくやった影踏み遊びだ

つまり、著者は「影」を「物体や人などが、光の進行を遮る結果、壁や地面にできる暗い領域のこと」(英語で言えば shadow )と捉えていることが分かります

しかし、本書の中では「影」が本人から分離して「壁」の反対側の世界で「生きている」ことを考えると、「黒い影」よりも「鏡に映った絵姿 = 鏡像」とした方が分かり易い、あるいは説得力を持つのではないかと思いますが、どうでしょうか

上・下巻合計で870ページを超える長編小説ですが、これまで読んだ村上作品と比べて読み易く、あっという間に読了したことを付け加えておきます

         

今日はサントリーホール「ブルーローズ」で開かれる サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン「プレシャス1pm  Vol.2」を聴きに行きます

   

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セバスティアン・ヴァイグレ ✕ 反田恭平 ✕ 読売日響でプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第1番」「交響曲第1番」、R.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」他を聴く

2025年06月19日 00時05分27秒 | 日記

19日(木)。わが家に来てから今日で1810日目を迎え、定額を投資することで米国の永住資格と就労資格を取得できる世界の富裕層向けのビザ制度「トランプ・ゴールドカード」の申請を希望する事前登録者数が7万人近くに達したとハワード・ラトニック米商務長官が明かした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   トランプ政権が どっちを見て政治をしているのかが よく分かる  金持ち大歓迎だもんね

         

昨夜、サントリーホールで読売日響「第649回定期演奏会」を聴きました プログラムは①プロコフィエフ「交響曲第1番 ニ長調 作品25 ”古典”」、②同「ピアノ協奏曲第1番 変二長調 作品10」、③R.シュトラウス「ブルレスケ  ニ短調」、④同:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28」です 演奏は②と③のピアノ独奏=反田恭平、指揮は2019年から読響常任指揮者を務め、今シーズンで7年目を迎えるセバスティアン・ヴァイグレです

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び コンマスは日下紗矢子、隣は戸原直という2トップ態勢を敷きます

1曲目はプロコフィエフ「交響曲第1番 ニ長調 作品25 ”古典”」です この曲はセルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)が1916年から17年にかけて作曲、1918年4月21日にペトログラードで初演されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ガヴォット:ノン・トロッポ・アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:モルト・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります ハイドンを意識して書かれたことから”古典”という愛称で呼ばれています

ヴァイグレの指揮で第1楽章に入りますが、古典的なスタイルなのにどこかチャーミングな曲想が現れ、思わずニヤリとしてしまいます ヴァイグレはメリハリのある指揮ぶりで小気味よいテンポで演奏を進めます 第2楽章では、中間部でのファゴットの演奏がどこかユーモラスで、ここでもニヤリとしてしまいます 第3楽章は古典派の交響曲では「メヌエット」になるところが、プロコフィエフはあえてフランス風の「ガヴォット」を持ってきます 第4楽章は冒頭から高速テンポによる溌溂とした演奏が展開します フルートのフリスト・ドブリノヴ、クラリネットの中館壮志、オーボエの荒木奏美の演奏が冴え渡ります 全体的に引き締まった素晴らしい演奏でした

2曲目はプロコフィエフ:「ピアノ協奏曲第1番 変二長調 作品10」です この曲は1911年から12年にかけて作曲、1912年7月25日にモスクワで初演されました 単一楽章の曲で、アレグロ・ブリオーソ ~ アンダンテ・アッサイ ~ アレグロ・スケルツァンドという流れで演奏されます

ピアノ独奏の反田恭平は2021年のショパン国際ピアノコンクール第2位 自ら創設した「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」で全国ツアーを開催し、指揮者&ピアニストとして演奏活動を展開しています

ヴァイグレの指揮で演奏に入り、反田の力強いピアノが会場に響き渡ります 反田のピアノは明快そのものです 打鍵が強いのだと思いますが、見た目は力を入れて弾いているようには思えません 中間部のアンダンテ部分では弦楽合奏の美しいアンサンブルがソリストの演奏に華を添えました その後アレグロ部に入ると独奏ピアノがアイロニカルな曲想を奏でたかと思うと、高速演奏で疾走したりしてどんどん形を変えていきます 高速演奏による技巧的なカデンツァは見事でした

満場の拍手とブラボーが飛び交い、カーテンコールが繰り返されましたが、ソリスト・アンコールはありませんでした。見識です

プログラム後半の1曲目はR.シュトラウス「ブルレスケ  ニ短調」です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)が1885年から86年にかけて作曲、1890年6月21日にアイゼナハで初演されたピアノとオーケストラのための作品です 「ブルレスケ」とは「冗談」といった意味です

この曲はティンパニとピアノ、オケとピアノ、オケとティンパニとの間で掛け合いが展開しますが、この曲でも反田のピアノは明快で、確かな技巧の裏付けのもと、力強くも美しい演奏を繰り広げました    また、岡田全弘のティンパニの演奏が熟練の域に達していました ヴァイグレ ✕ 読響はソリストを引き立て、スケールの大きな演奏を展開しました

最後の曲はR.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28」です この曲は1894年から95年にかけて作曲、1895年11月5日にケルンで初演されました

弦楽器が16型に拡大し、管・打楽器が増員され、フルオーケストラ態勢になります

この曲は弦楽器により「むかしむかし、一人のいたずら者がいました」というテーマが奏でられ、次いでホルンがティルのテーマを吹きますが、松坂隼のホルンが素晴らしかった そして、次々とティルのいたずらが展開することになりますが、木管楽器群が大活躍します フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、イングリッシュホルンなどが妙技を披露します これに金管楽器の咆哮と、打楽器群の強打と、弦楽器群の鋭い切れ味の演奏が加わり大騒動を演出します しかし、最後にティルは絞首刑台上でこと切れます

1961年ベルリン生まれのヴァイグレにとってリヒャルト・シュトラウスは得意中の得意のピースです 自由なテンポ設定、メリハリの利いた演奏により、R.シュトラウスの管弦楽の醍醐味を味わわせてくれました

演奏を聴きながら、私が初めてこの曲を聴いた時のことを思い出していました 80年代初め頃だったと思いますが、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の演奏で聴きました ベルリンの壁崩壊前の旧・東ドイツのオケは独特の音色(特に弦楽器)を持っていて、すっかり魅了されました 今となっては懐かしい思い出です

さて、コンサートでは満場の拍手とブラボーの嵐の中、カーテンコールが繰り返されました

  

  

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「エリーナ・ガランチャ メゾソプラノ リサイタル2025」を聴く ~ ビゼー「カルメン」、サン=サーンス「サムソンとデリラ」、ベルリオーズ「ファウストの劫罰」等からアリアの数々

2025年06月18日 00時08分37秒 | 日記

18日(水)。わが家に来てから今日で3809日目を迎え、「米国を再び偉大に(MAGA)」に似た、トランプ政権にまつわる4文字の造語がインターネットを中心に広がっている  というニュースを見てその造語を解説するモコタロです

MAGA(Make  America  Go  Away)つまり「アメリカよ去れ」です  有名なTACO 同様よろしくね!

         

昨夜、東京オペラシティコンサートホールで「エリーナ・ガランチャ  メゾソプラノリサイタル2025」を聴きました プログラムは以下の通りです

①ブラームス「愛のまこと」「秘めごと」「ああ、帰り道がわかるなら」「昔の恋」「五月の夜」「永遠の愛について」

②ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」より「燃える恋の思いに」

③サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より「あなたの声で心は開く」

④グノー:歌劇「サバの女王」より「身分がなくても偉大な方」

⑤チャイコフスキー:歌劇「オルレアンの少女」より「さようなら、故郷の丘」

⑥ラフマニノフ「信じないでほしい、恋人よ」「夢」「おお、悲しまないで」「春のせせらぎ」

⑦ルぺルト・チャピ:サルスエラ「エル・バルキレロ」より「とても深いとき」

⑧ビゼー:歌劇「カルメン」より「ハバネラ」

⑨サルスエラ:「セベデオの娘たち」より「とらわれし人の歌(私が愛を捧げたあの人のことを思うたび)」

なお、②と③の間にピアノ独奏によりメンデルスゾーン「作品19b」第1番 ホ長調「アンダンテ・コン・モート」が、同じく⑥と⑦の間にピアノ独奏によりシューマン「アラベスク  ハ長調 作品18」が演奏されます ⑤チャイコフスキーまでが前半、⑥ラフマニノフ以降が後半です

エリーナ・ガランチャは1976年9月16日 ラトビア生まれのメゾソプラノです   ラトビア音楽アカデミーで研鑽を積む。1999年、ヘルシンキのミリアム・ヘリン国際声楽コンクールで優勝、マイニンゲン州立劇場でプロのキャリアを開始した  2003年にマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」ローラでウィーン国立歌劇場にデビューした。同年ザルツブルク音楽祭でニコラウス・アーノンクール指揮によるモーツアルト「皇帝ティートの慈悲」でアンニオを歌い、国際的な活躍が始まった。2008年1月、米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にロッシーニ「セビリアの理髪師」ロジーナでデビューを飾り、2010年には同劇場でビゼー「カルメン」タイトルロールを歌い絶賛された

ピアノ伴奏は1977年バイエルン州生まれのマティアス・シュルツです 2017年から2024年までベルリンのウンター・デン・リンデン国立歌劇場の総支配人を、2025/26シーズンからチューリッヒ歌劇場の総支配人を任命されています

自席は1階8列23番、右ブロック左通路側です かなり前方の席なのでガランチャの顔の表情が良く見える位置にあります 会場は満席です

私がエリーナ・ガランチャ をライブで聴くのはコロナ禍で延期になった2022年6月28日のリサイタル(トリフォニーホール)以来、今回が2回目です 翌6月29日付のtoraブログで振り返ってみたら、今回のプログラムは前回と曲目も曲順もほとんど(9割方)同じであることが分かりました まあ、当方としてはガランチャの歌がライブで聴けるだけで狂喜乱舞なので、何でもOKなわけですが

ガランチャは、上が白、下が黒のシックなコスチュームで登場、マティアス・シュルツのピアノ伴奏によりブラームスの歌曲から入ります 「これ、これ、これこそがガランチャの声だ」と感激しました 歌曲もいいのですが、やはりガランチャの魅力はオペラのアリアにあります ベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」より「燃える恋の思いに」、サン=サーンスの歌劇「サムソンとデリラ」より「あなたの声で心は開く」、グノーの歌劇「サバの女王」より「身分がなくても偉大な方」では、卓越したヴォイスコントロールにより、強靭かつ美しい歌唱で歌い上げ、聴衆を圧倒しました

プログラム後半に入るとガランチャは、シルバーのラメ入りのエレガントな衣装に”お色直し”して登場、チャイコフスキー:歌劇「オルレアンの少女」より「さようなら、故郷の丘」をドラマティックに歌い上げました ガランチャの場合は歌唱そのものがドラマになっています あのマリア・カラスがそうでした 一番聴衆が湧いたのは、予想通り「カルメン」のハバネラです 現代最高のカルメンと言っても過言ではないでしょう 最後のサルスエラでは、身体をゆっくり左回りに回転させながらコロラトゥーラを長く伸ばして歌い、聴衆を歓喜させました

文字通り満場の拍手とブラボーの嵐の中、カーテンコールが繰り返されました 18:30開演の正規プログラムが終わったのは20:20でした 鳴り止まない拍手にガランチャは、結局4曲アンコールを歌いましたが、3曲目の「ジャン二・スキッキ」のラウレッタのアリア「私のお父さん」を歌い終わると1階から3階までスタンディングオベーションが起こりました もちろん私も立ち上がり、大きな拍手を送りました 終演は20:45でした。なぜ19時開演でなく18時30分なのかがよく分かりました やっぱり、ガランチャは凄い と再認識したリサイタルでした

         

今日はサントリーホールに読売日響「第649回 定期演奏会」を聴きに行きます

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証券口座のオンライン追加認証設定手続き / 有吉佐和子「青い壺」、村田沙耶香「信仰」、中山七里「能面刑事の死闘」、安壇美緒「ラブカは静かに弓を持つ」、香坂鮪「どうせそろそろ死ぬんだし」他を買う

2025年06月17日 00時01分51秒 | 日記

17日(火)。大手証券会社を中心にID・パスワードを盗んだ第三者による不正アクセス・不正取引が多発していることを受けて、先週、証券会社Dから「オンライン追加認証設定依頼」のハガキが届きました これは自分の取引口座にログインする際、ログイン追加認証の設定手続きをしておかないと自分の口座にアクセスできなくなり、オンライン取引も出来なくなるというものです 追加認証手続きをすると、ログイン時に 登録メルアドあてに「ワンタイムパスワード」が送信されるので、それを入力したうえでアクセスするというものです 追加認証の設定方法について不明な点があったので、先週D社の「ログインサポート専用ダイヤル」あてに何度も電話を入れたのですが、まったくつながりませんでした 毎日 問い合わせが殺到していることが予想されますが、いつまでも放っておくわけにもいかないので、私の口座を所管しているD社池袋支店に連絡し、何とか疑問をクリアしました 試しにログインしてみたら「ワンタイムパスワード入力」欄が表示されたので、登録メルアドに着信していた「ワンタイムパスワード」を入力したら、自分の口座にアクセスできました

「ID・パスワードを盗んだ第三者による不正アクセス・不正取引」ということで思い出しました オーケストラ各団体やコンサートホールにおけるチケット代金の「クレジットカード決済」における「3Dセキュア2.0」(本人確認認証システム)の導入です 支払い方法で「クレジット決済」を選択すると、登録メルアドに臨時の「本人確認認証パスワード」が送られてきます それを入力して初めて決済が完了するというシステムです

いずれにしても、詐欺師=人間のクズは次々と新しい手口で他人の資産を搾取しようと仕掛けてくるので、こういう面倒な手続きが追加されるようになります 悪いヤツらは早く逮捕して刑務所にぶち込んで、二度と出さないでほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3808日目を迎え、トランプ米大統領が昨年、様々な事業を通じて得た所得が6億ドル(約866億4931万円)に達したことが明らかになったが、仮想通貨、不動産、ライセンス事業などの多様な収益源から相当な所得を得ていたと地元メディアが報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

          

     

     トランプ政権は政策として仮想通貨を推奨してる 利益誘導だな

         

昨日、夕食に「ビーフカレー」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」を作りました ビーフカレーは今回、牛肉の切り落としを使いましたが、美味しかったです

         

手元の本が残り2冊になったので、いつも通りジュンク堂書店池袋本店で文庫本を8冊購入しました

1冊目は有吉佐和子著「青い壺」(文春文庫)です なぜ昭和51年に出版された本書が今、読まれているのでしょうか? 解明したいと思います

2冊目は村田沙耶香著「信仰」(文春文庫)です 「コンビニ人間」の著者によるカルトの話らしいです。面白そうです

3冊目は中山七里著「能面刑事の死闘」(光文社文庫)です 「中山七里は七人いる」と言われる多作ミステリー作家の文庫最新刊です

4冊目は道尾秀介著「いけないⅡ」(文春文庫)です 体験的ミステリー第2段弾です

5冊目は安壇美緒著「ラブカは静かに弓を持つ」(集英社文庫)です タイトルにある「弓」はチェロの弓だそうです 興味を引かれます

6冊目は香坂鮪著「どうせそろそろ死ぬんだし」(宝島社文庫)です 第23回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作とのことです。タイトルもいいですね

7冊目は佐藤厚志著「荒地の家族」(新潮文庫)です 芥川賞受賞作です。どういうところが評価されたのでしょうか。興味があります

8冊目は松下龍之介著「一次元の挿し木」(宝島社文庫)です 第23回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。初出の時は大きな話題になりましたね

いずれも、現在読んでいる村上春樹著「街とその不確かな壁」(上・下)を読み終わり次第、片っ端から読んでtoraブログでご紹介してまいります

         

今日から1週間後の24日(火)まで、19日を除いて7日連続コンサートです。第1日目の今夜は「エリーナ・ガランチャ メゾソプラノ・リサイタル」です

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シューマン・クァルテットでベートーヴェン「弦楽四重奏曲第4番、第11番、第14番」を聴く ~ サントリーホールCMG「ベートーヴェン・サイクルⅣ」

2025年06月16日 00時05分37秒 | 日記

16日(月)。わが家に来てから今日で3807日目を迎え、トランプ大統領の誕生日にあたる14日、米首都ワシントンで 米陸軍創設250年を記念したトランプ政権による軍事パレード(約65億円の見込み)が行われたが、パレードに反対するデモが全米2100カ所以上で行われ、ニューヨークのマンハッタンでは約5万人がデモ行進を行った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

  

  「王はいらない」「軍の私物化」「富裕層ファースト政治」「独裁主義者」「私利私欲第一」

         

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン2025」参加公演、シューマン・クァルテット「ベートーヴェン・サイクル(弦楽四重奏曲全曲演奏)Ⅳ」を聴きました プログラムはベートーヴェン①「弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 作品18-4」、②「同・第11番 ヘ短調 作品95 ”セリオーソ”」、③「同・第14番 嬰ハ短調 作品131」です 初期、中期、後期から1曲ずつ選ばれていますが、共通点は「短調」です

シューマン・クァルテットはヴァイオリンとチェロのシューマン3兄弟とヴィオラのファイト・ヘルテンシュタインにより、2007年にドイツ・ケルンで結成されました ボルドー国際弦楽四重奏コンクールで優勝しています

1曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 作品18-4」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1798年から1800年にかけて作曲した6曲の「弦楽四重奏曲作品18」の最後に完成した作品です 出版上は「第4番」ですが、完成順には第3、第1、第2、第5、第6、第4番の順になっています 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」、第2楽章「アンダンテ・スケルツォーソ・クアジ・アレグレット」、第3楽章「メヌエット:アレグロ」、第4楽章「アレグレット ~ プレスティッシモ」の4楽章から成ります

第1楽章は冒頭からアレグロで疾走します この音楽を聴くと、モーツアルト「交響曲第25番 ト短調」の冒頭を思い起こします    メロディこそ異なりますが、衝撃的な開始という点で共通しています そして、第4楽章ではロンドで再び疾走します

2曲目は「弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 作品95 ”セリオーソ”」です この曲は1810年に作曲、1814年5月にシュパンツィヒ四重奏団により初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アレグレット・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ」、第4楽章「ラルゲット・エスプレッシーヴォ ~ アレグレット・アジタート ~ アレグロ」の4楽章から成ります

この曲も第1楽章の冒頭が衝撃的な音楽で開始され、情熱的な演奏が展開します この曲を聴いていつも不思議に思うのは第4楽章の終結部です メランコリックで悲劇的な音楽が続いていたのが、突然、今までの悲劇がなかったかのように、あっけらかんとしたノー天気なアレグロが疾走し、そのままフィナーレになだれ込むのです ベートーヴェンは何を考えていたのか・・・本作は6曲セットの作品の中で唯一「短調」の曲ですが、後援者で 作品を献呈したフランツ・ヨーゼフ・ロブコヴィッツ侯爵を喜ばせるため、最後は長調の明るい音楽で終わらせようと意図したのだろうか・・・ベートーヴェンにしか分かりません

プログラム後半は「弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 作品131」です この曲は1826年に作曲、作曲者の死後 1828年10月にウィーンで初演されました 第1楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・エスプレッシーヴォ」、第2楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第3楽章「アレグロ・モデラート」、第4楽章「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」、第5楽章「プレスト」、第6楽章「アダージョ・クアジ・ウン・ポコ・アンダンテ」、第7楽章「アレグロ」の7楽章から成りますが、続けて演奏されます

後期の弦楽四重奏曲は第12番、第15番、第13番、第14番、第16番の順に作曲されましたが、楽章の数は第12番(4楽章)、第15番(5楽章)、第13番(6楽章)、第14番(7楽章)、第16番(4楽章)となっています つまり、作曲するたびに楽章数が一つずつ増えていき、第14番で最大の7楽章に拡大し、最後は再び4楽章に戻ったことになります その意味では、第14番は特別な意味をもっていたと思われます ただ、第14番は一つの楽章が3分程度の”橋渡し的”な楽章が3つあるので、実質的には4楽章構成であるという考え方もあります

前回(6月11日のサイクルⅠ)の時もそうだったのですが、今回もプログラムの前半は特別優れた演奏とは思いませんでした しかし、後半に入っての第14番は素晴らしい演奏でした まず、第1楽章冒頭のヴァイオリンからヴィオラ、チェロへと受け継がれていくフーガ風の演奏が素晴らしい また、緩から急へ、急から緩への切り替えが見事です 特に良かったのは第1楽章(アダージョ部分)と第4楽章(カンタービレ)、第6楽章(アダージョ)で、いずれも緩徐楽章です この曲でも、「ベートーヴェンの本当の良さは緩徐楽章にある」ということを再認識しました

満場の拍手とブラボーの嵐の中、カーテンコールが繰り返されました 第1ヴァイオリンのエリック・シューマンが「今日は よく来てくれました 明後日、第5番を演奏しますので、アンコールに演奏します。5日も来てください」と日本語で挨拶、「弦楽四重奏曲第5番 イ長調 作品18-5」から第2楽章「メヌエット」を優雅に演奏、再び大きな拍手に包まれました

    

         

明日の17日から(19日を除いて)24日まで7日連続コンサートなので、今日は本を読んで大人しく過ごそうと思います ちなみに明日は待望のエリーナ・ガランチャのリサイタルです

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サントリーホールCMG「ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅰ」を聴く ~ 第8期を中心とする若き研修生たちの真摯な演奏を堪能する

2025年06月15日 00時03分10秒 | 日記

15日(日)。わが家に来てから今日で3806日目を迎え、イスラエルが「自衛措置」「先制攻撃」と主張してイランの核関連施設などを空爆し、「革命防衛隊」トップのサラミ総司令官ら軍高官を殺害したことに対し、イランは「報復措置」として イスラエルに対し数百発の弾道ミサイルを発射し、イスラエル国内の「数十の標的」に精密攻撃を加えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

ネタニヤフ首相は 当然イランの報復攻撃を予測していたはず  復讐が復讐を呼んで  両国は滅びゆく

         

昨日午前11時から、サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン2025」参加公演「ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅰ」を聴きました

出演者はサントリーホール室内楽アカデミー・フェロー(研修生)とゲストの上野星矢です プログラムと演奏者は次の通りです

①バルトーク「弦楽四重奏曲第4番」より第4楽章「アレグレット・ピッツィカート」、第5楽章「アレグロ・モルト」 = カルテット・プリマヴェーラ

②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 作品74 ”ハープ”」より第1楽章「ポーコ・アダージョ ~ アレグロ」 = カルテット・ルーチェ

③シューマン「弦楽四重奏曲第1番 イ短調 作品41-1」より第3楽章「アダージョ」、第4楽章「プレスト」 = カルテット風雅

④シューマン「ピアノ三重奏曲第2番 ヘ長調 作品80」より第2楽章「心からの表現で ~ 生き生きと」、第4楽章「速すぎずに」 = トリオ・フィデーリス

⑤シューベルト「弦楽四重奏曲第12番 ハ短調 D.703 ”四重奏断章”」 = カルテット・シュトゥルム

⑥ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第12番 へ長調 作品96 ”アメリカ”」より第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」 = クァルテット・イーリス

⑦モーツアルト「ディヴェルティメント 変ホ長調 K.563」より第4楽章「アンダンテ」、第6楽章「アレグロ」 = ほのカルテット

⑧モーツアルト「フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K.285」全3楽章  = 上野星矢(Fl)、渡辺沙蘭(Vn)、中嶋美月(Vn)、原田佳也(Vc)

以上7団体8作品です

開演に当たり、1曲目を演奏するカルテット・プリマヴェーラの第1ヴァイオリン奏者・石川未央さんがマイクを持って挨拶しました

「皆さま、今日はようこそお越しくださいました 私たちフェローは月2回このブルーローズを会場に、先生方からレッスンを受けています・・・言うべきことがたくさんあったのですが、緊張してすべて飛んでしまいました(会場・笑)。トップバッターの私たちはバルトークを演奏しますが、「え~、朝からバルトーク~」とお思いになるかもしれません でも、私たちはこの曲が大好きなので演奏させていただきます ちょっと不安があるのですが(会場・笑)一生懸命演奏します 最後にはモーツアルトの明るい曲もありますので、最後までお楽しみください

好きですね こういう率直なあいさつ 石川さんの人柄なのでしょうね

1曲目はバルトーク「弦楽四重奏曲第4番」より第4楽章「アレグレット・ピッツィカート」、第5楽章「アレグロ・モルト」です 演奏する「カルテット・プリマヴェーラ」は2021年に桐朋学園大学在学中に結成された女性4人組のユニットです 「プリマヴェーラ」とはイタリア語で「春」とのことです メンバーはアカデミー第7・8期フェローで、ヴァイオリン=石川未央、清水咲、ヴィオラ=多胡桃子、チェロ=大江慧の4人です。ベートーヴェン国際コンクール室内楽部門第1位など優秀な成績を収めています

第4楽章はピッツィカートによる丁々発止の演奏、第5楽章はバルトークらしい鋭角的で民俗色豊かな演奏が展開しました 4人の演奏はワイルドでエネルギッシュでした

2曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 作品74 ”ハープ”」より第1楽章「ポーコ・アダージョ ~ アレグロ」です 演奏する「カルテット・ルーチェ」は2021年に東京音楽大学付属高校に在学する4人で結成された男女各2名によるユニットです。「ルーチェ」とはイタリア語で「光」とのことです メンバーはアカデミー第8期フェローの男女各2名で、ヴァイオリン=渡辺紗蘭、中嶋美月、ヴィオラ=森智明、チェロ=原田佳也です

この曲特有のハープのようなピッツィカートが素晴らしかったのをはじめ、全体的に完成度が高いと思いました

3曲目はシューマン「弦楽四重奏曲第1番 イ短調 作品41-1」より第3楽章「アダージョ」、第4楽章「プレスト」です    演奏するカルテット風雅は2001年生まれの4人(女性1,男性3)により結成されました メンバーはアカデミー第8期フェローで、ヴァイオリン=落合真子、小西健太郎、ヴィオラ=川邉宗一郎、チェロ=松谷壮一郎の4人です 第13回秋吉台音楽コンクール室内部門で第1位入賞を果たしています

第3楽章はロマン的な美しさが感じられる演奏でした 第4楽章は明るく弾ける演奏が展開しました

4曲目はシューマン「ピアノ三重奏曲第2番 ヘ長調 作品80」より第2楽章「心からの表現で ~ 生き生きと」、第4楽章「速すぎずに」です 演奏する「トリオ・フィデーリス」は桐朋女子高校からの同級生により、桐朋学園大学在学中に結成された女性1,男性2名によるユニットです 「フィデーリス」とはラテン語で「誠実・忠実・信頼」という意味を持つそうです。第8期フェローでヴァイオリン=吉江美桜、チェロ=佐山裕樹、ピアノ=百瀬功汰の3人です 佐山は現在、新日本フィル首席チェロ奏者を務めています

第3楽章はヴァイオリンが良く歌い、チェロも負けていません 歌心に満ちたロマン溢れる演奏が展開しました 第4楽章はシューマンらしい躁状態の弾けた演奏が繰り広げられました 作曲家シューマンの素晴らしさがストレートに伝わってくる素晴らしい演奏でした 表現力の豊かさにおいて、ここまでくるとプロの演奏です

プログラム後半の1曲目はシューベルト「弦楽四重奏曲第12番 ハ短調 D.703 ”四重奏断章”」です 演奏する「カルテット・シュトゥルム」は2019年に東京藝大の授業を機に結成された男女各2名から成るユニットです 「シュトゥルム」は「シュトゥルム・ウント・ドラング」(疾風怒濤)に由来するとのことです 第8期フェローで、ヴァイオリン=城野聖良、松北優里、ヴィオラ=長谷山博史、チェロ=髙木優帆の4人です

程よい緊張感とシューベルトらしい歌心に満ちた演奏で、好感が持てました

2曲目はドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第12番 へ長調 作品96 ”アメリカ”」より第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」です 演奏する「クァルテット・イーリス」は2023年4月に桐朋学園大学在学中に結成された女性3,男性1名によるユニットです 「イーリス」はギリシャ語の「虹の女神」の名前に由来するそうです。第8期フェローで、ヴァイオリン=高麗愛子、稲田清香、ヴィオラ=鈴木双葉、チェロ=宮之原陽太の4人です

現役音大生らしい溌溂とした清々しい演奏で、なじみの曲なのに新鮮に響きました

3曲目はモーツアルト「ディヴェルティメント 変ホ長調 K.563」より第4楽章「アンダンテ」、第6楽章「アレグロ」です 演奏する「ほのカルテット」は2018年東京藝大在学中に結成された女性1,男性3名によるユニットです ヴィオラの長田健志とチェロの蟹江慶行が第7・8期フェローで、ヴァイオリン=岸本萌乃加、林周雅を加えた4人ですが、林を除く3人が演奏します 大阪国際室内楽コンクール2023で第2位入賞他、数々のコンクールに入賞しています 岸本は読売日響次席第1ヴァイオリン奏者、蟹江は東京交響楽団のチェロ奏者を務めています

モーツアルトらしい優雅で愉悦感に満ちた演奏が繰り広げられました

最後の曲はモーツアルト「フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K.285」全3楽章です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1777年にフランスのドジャンの依頼により作曲しました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド」の3楽章から成ります 演奏は上野星矢(Fl)と「カルテット・ルーチェ」から渡辺沙蘭(Vn)、中嶋美月(Vn)、原田佳也(Vc)です

上野のフルートが天翔けます 3人の弦楽奏者がピタリとつけます 第2楽章「アダージョ」から第3楽章「ロンド」への転換は、「悲しみに満ちたモーツアルトが、次の瞬間には笑っている」「疾走する哀しみに、人々はついていけない」というモーツアルトの天才性を鮮やかに表現していました 第3楽章「ロンド」では再び上野のフルートが愉悦感に満ちた演奏を繰り広げ、3人の弦楽奏者も演奏が楽しそうでした

満場の拍手とブラボーが飛び交いました モーツアルトらしい明るい中にも陰影に満ちた素晴らしい演奏でした

この日演奏したどのグループも、普段の練習の成果が十分に発揮できたのではないかと思います すべての出演者に改めて大きな拍手を送ります

同じメンバーによる「ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅱ」は6月21日(土)11時から開かれます もちろん聴きに行きます

         

今日もサントリーホール「ブルーローズ」に シューマン・クァルテットによる「ベートーヴェン・サイクル Ⅳ」を聴きに行きます

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佐渡裕 ✕ 新日本フィルでホルスト「セントポール組曲」& 組曲「惑星」、エルガー「威風堂々第1番」を聴く ~ 第31回すみだクラシックへの扉シリーズ公演

2025年06月14日 00時01分03秒 | 日記

14日(土)。わが家に来てから今日で3805日目を迎え、米小売り大手のウォルマート創業家のクリスティ・ウォルトン氏がスポンサーとなり、「我々は憲法を支持し、順守する」「ノー・キング(王様はいらない)」「6月14日(トランプの誕生日。軍事パレードを予定)結集せよ」という内容の、トランプ米政権への抗議デモを呼びかける全面広告が米紙ニューヨーク・タイムズに掲載された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

アメリカにも勇気のある人がいた  裸の王様の誕生日に挙行する軍事パレードは 世紀の茶番劇だ 

         

昨日、夕食に隔週金曜日のローテーションにより「鶏肉のガーリック・チーズ煮、スパゲティ添え」を作りました 材料は鶏モモ肉、ほうれん草、シメジ、玉ねぎ、スライスチーズ、大蒜です 今回も美味しく出来ました

         

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィル「第31回すみだクラシックへの扉シリーズ」定期公演を聴きました プログラムは①ホルスト「セントポール組曲」、②エルガー:行進曲「威風堂々 第1番 ニ長調 作品39」、③ホルスト:組曲「惑星」作品32です 指揮は音楽監督・佐渡裕です

この日も完売御礼です 開演前のレクチャーも定員オーバーだったし、毎回良く入ります

1曲目はホルスト「セントポール組曲」です    この曲はグスターブ・ホルスト(1874-1934)がセント・ポール女学校の教職にあった時、同校の弦楽オーケストラのために1912年から13年にかけて作曲、1913年に同校で初演されました 第1曲「ジグ」、第2曲「オスティナート」、第3曲「間奏曲」、第4曲「終曲:ダーガソン」の4曲から成ります

14型の弦楽器のみの編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンチェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び   コンマスは西江王子、隣はアシスタント・コンマスの立上舞です

チャイコフスキーに「弦楽セレナーデ」という名曲がありますが、第1曲「ジグ」を聴いて ホルスト版「弦楽セレナーデ」だな、と思いました 第3曲「間奏曲」では西江コンマスのエキゾチックなソロが印象的でした 第4曲ではメイン・メロディが繰り返される中、イングランド民謡「グリーンスリーブス」のメロディが重ね合わされます これを聴きながら、ン十年前の独身時代に1年間だけ通ったヤマハ・フルート教室の卒業発表会のことを思い出しました 我々のクラス(男女各3名)が選んだのが「グリーンスリーブス」だったのです メロディ、第1伴奏、第2伴奏が各2人ずつで演奏するのですが、私はメロディ・パートを担当することになりました ところが、発表会当日、もう一人のメロディ担当の女性が風邪を引いて休んでしまったのです 崖っぷちに立たされた私は、居直ってなんとか最後まで吹きましたが、背中に冷や汗でした それから十年以上経った頃、健康診断の肺活量検査で人並み以下しか肺活量がないことが判明し、愕然としたのを覚えています 現場からは以上です

2曲目はエルガー:行進曲「威風堂々 第1番 ニ長調 作品39」です   この曲はエドワード・エルガー(1857-1934)が1901年に作曲、1902年のエドワード7世の戴冠式頌歌としてリバプールで初演されました 「威風堂々」は第1番から第5番までありますが、第1番が一番有名です

管・打楽器とパイプオルガン、ハープ2台が加わりフル・オーケストラ態勢となります

こういう曲は佐渡監督が得意とするところです 金管・木管楽器が咆哮し、打楽器が炸裂し、弦楽器が渾身の演奏を展開し、どこまでもパワフルです

小室敬幸氏の「プログラム・ノート」によると、この曲はエルガーの義父(妻アリスの父)が陸軍少尉だったことから軍隊行進曲(ミリタリーマーチ)を作曲したと言われています しかし、開演前のレクチャーで小室氏が語っていたように、この曲では行進できません

プログラム後半はホルスト:組曲「惑星」作品32です この曲は1914年から16年にかけて作曲、1919年にロンドンで公開初演されました 第1曲「火星:戦争をもたらす者」、第2曲「金星:平和をもたらす者」、第3曲「水星:翼を持った使者」、第4曲「木星:快楽をもたらす者」、第5曲「土星:老いをもたらす者」、第6曲「天王星:奇術師」、第7曲「海王星:神秘主義者」の7曲から成ります

開演前のレクチャーで小室氏が「惑星」の曲目解説をしてくれましたが、実に面白かったです

小室氏のレクチャーによると、ホルストは知人を介してアラン・レオ(1860-1917)の「占星術」を紹介されました レオは伝統的な西洋の占星術にインド要素を持ち込み、「神智学」の人脈で成功した人物でした その「神智学」は現代オカルトの起源と言われています つまり、ホルストはそうした”怪しげな”背景を持つレオの影響をもろに受けて「惑星」を作曲したのです 「惑星」の各局に付けられたタイトルは、レオの著作をもとにしてホルストの考えを加えたものだそうです また、ホルストは第1曲から第4曲までを一つの交響曲として考えていた(第3曲「水星」はスケルツォに当たる)というのも、なるほどと納得しました

第1曲「火星:戦争をもたらす者」は激しいリズム中心の重量感のある曲です 佐渡監督が得意とするところです パワフルな演奏で押し切りました

第2曲「金星:平和をもたらす者」はハープの音色が美しい また、西江王子のソロが素晴らしかった

第3曲「水星:翼を持った使者」ではチェレスタの演奏が冴えていました

第4曲「木星:快楽をもたらす者」は、後半のメロディが平原綾香の「ジュピター」で一躍有名になりましたね

第5曲「土星:老いをもたらす者」は第1~第4曲の交響曲的な構成から路線を変えます ゆったりしたテンポで重心の低い音楽が展開します

第6曲「天王星:奇術師」は、小室氏の解説によると、冒頭の金管による4音はグルタフ・ホルストの音名象徴だと推測されており、ホルストの自画像を描いた音楽とのことです 続くメロディはほとんどデュカス「魔法使いの弟子」そのまんま東です タイトルの「奇術師」は「魔法使い」であり「ホルスト」なのでしょう

第7曲「海王星:神秘主義者」は文字通りミステリアスな音楽です 冒頭の野津雄太のフルート、神農広樹のオーボエの抑制の利いた演奏が素晴らしい ハープに乗せて歌われる女声合唱が美しく会場に響き渡ります 消え入るように歌われるピアニッシモが素晴らしい

満場の拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せ、カーテンコールが繰り返されました たまにはオール・イギリス音楽のプログラムも良いものだと思ったコンサートでした

         

今日はサントリーホール「ブルーローズ」に「ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅰ」を聴きに行きます

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フアンホ・メナ ✕ カール・ハインツ・シュッツ ✕ NHK交響楽団でイベール「フルート協奏曲」、ブルックナー「交響曲第6番 イ長調」を聴く ~ N響第2040回Bプロ定期公演

2025年06月13日 00時01分13秒 | 日記

13日(金)。わが家に来てから今日で3804日目を迎え、米起業家イーロン・マスク氏は11日、Xで「トランプ大統領についての先週のいくつかの投稿を後悔している。言い過ぎた」と投稿した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプはマスク関連企業と政府取引を止めると脅していた  最初から政治に介入すべきでなかった

          諸般の事情により、昨日も夕食作りをお休みしました 

         

昨夜、サントリーホールでNHK交響楽団の6月度Bプロ定期演奏会(1日目)を聴きました 隣の「ブルーローズ」では同じ時間にシューマン・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅡ」の公演が開催されていました

プログラムは①イベール「フルート協奏曲」、②ブルックナー「交響曲第6番 イ長調」です 演奏は①のフルート独奏=カール・ハインツ・シュッツ、指揮=フアンホ・メナです

フアンホ・メナはスペイン・バスク地方出身。地元の音楽院で学び、マドリード王立音楽院で研鑽を積む 卒業後ドイツに渡り、セルジュ・チェリビダッケから8年間にわたり薫陶を受ける 1999年から2008年までスペイン・ビルバオ交響楽団の首席指揮者兼芸術監督を務める 2011年からBBCフィルハーモニックの首席指揮者を務めている

オケは12型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつものN響の並び。コンマスは郷古廉です

1曲目はイベール「フルート協奏曲」です この曲はジャック・イベール(1890-1962)が1932年から33年にかけて作曲、1934年2月25日にパリでマルセル・モイーズのフルートにより初演されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

フルート独奏のカール・ハインツ・シュッツはオーストリアのインスブルック生まれ。スイスのバーゼルでオーレル・ニコレに師事し、リヨン国立高等音楽院で研鑽を積む 1998年のカール・ニルセン国際音楽コンクールと1999年のクラクフ国際フルート・コンクールで優勝 シュトゥットガルト・フィル、ウィーン響を経て、2011年にウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団、2015年からウィーン・フィル首席フルート奏者を務めている

メナの指揮で第1楽章が開始されます シュッツはかなり速いパッセージを超絶技巧で、何の困難さをも見せず 軽妙洒脱に演奏します 第2楽章は一転、フルートが息の長い旋律を朗々と奏で、フルートの音色の美しさが際立ちます 第3楽章は活気あふれるエスプリに満ちた演奏が繰り広げられ、シュッツの超高速演奏に舌を巻きます

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました シュッツはイベール「無伴奏フルートのための小品」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

プログラム後半はブルックナー「交響曲第6番 イ長調」です この曲はアントン・ブルックナー(1824-1896)が1879年から81年にかけて作曲、1883年2月11日に第2、第3楽章がウィーンで初演され、作曲者の死後の1901年3月14日に全曲がシュトゥットガルトで初演されました 第1楽章「マエストーソ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「スケルツォ:速くなく ~ トリオ:ゆっくりと」、第4楽章「フィナーレ:動きをもって、しかし速すぎずに」の4楽章から成ります

オケは16型に拡大し、メナの指揮で演奏に入ります メナは全体を通して速めのテンポで演奏を進めますが、ブルックナーの交響曲にしては短い曲(約60分)であるにも関わらず、静かな演奏から一転オケが爆発するといったブルックナー特有のパターンの繰り返しが耳にさわり、いささか冗長に感じてしまいます 金管楽器の咆哮と弦楽セクションの渾身の演奏はブルックナーの大きな魅力ではありますが、こう最初から最後まで同じパターンを繰り返されては飽きがきます 唯一、その冗長さを免れていたのが全楽章の中で一番長い第2楽章「アダージョ」です ベートーヴェンの後期の「弦楽四重奏曲」の緩徐楽章に通じる「神への祈り」を感じさせる音楽です 切れ味鋭いヴァイオリン、美しい音色のヴィオラ、力強く頼もしいチェロとコントラバス・・・この厚みのある弦楽アンサンブルが「神への祈り」を奏でます その美しさは筆舌に尽くし難いものがありました

満場の拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せ、カーテンコールが繰り返されました

  

なお、この日の公演は6月27日(金)午後7時35分からNHK-FM「ベスト オブ クラシック」で放送されます

         

今日はすみだトリフォニーホールで開かれる新日本フィル「すみだクラシックへの扉」第31回定期演奏会を聴きに行きます

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シューマン・クァルテットでベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番、7番、16番」を聴く ~ サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン / 東響の第1コンマスに景山昌太郎就任 ~ 9月から

2025年06月12日 00時12分44秒 | 日記

12日(木)。東京交響楽団は公式サイトで、「2025年9月1日付で第1コンサートマスターとして景山昌太郎を迎えることになった」と発表しました 景山氏は東京藝大を首席で卒業。2011年に渡独。マクデブルク歌劇場オーケストラの副首席奏者を経て、2013年から2025年までハーゲン歌劇場オーケストラ第1コンサートマスターを務めました これにより、9月からは小林壱成、グレブ・ニキティンとの3名体制でコンサート活動を展開するとしています

なお、景山昌太郎氏は 東響から読響に移籍した景山梨乃さん(ハープ)の兄上とのことです

ということで、わが家に来てから今日で3803日目を迎え、米連邦議会で調整中の大型減税・歳出法案に盛り込まれた新生児向けの投資口座の創設案が金融界の注目を集めているが、これは米政府が口座に1000ドル(約14.5万円)を出し、保護者らの上乗せ拠出も認めて米株指数連動ファンドで運用するもので「トランプ口座」と名付けられている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

          

    税金のバラマキで トランプの名前をレガシーとして後世に残したいのがミエミエ

         諸般の事情により、昨日の夕食作りはお休みしました 

         

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」でシューマン・クァルテットによるベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番、第7番、第16番」を聴きました これはサントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン(室内楽の庭)の目玉公演「ベートーヴェン・サイクル(ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲)Ⅰ ~ Ⅵ」の第1日目公演として開催されたものです この日の3曲は出版番号順で最初と最後の曲と真ん中の曲、時代区分でいえば初期、中期、後期から1曲ずつ選ばれています

「ベートーヴェン・サイクル」は2011年のパシフィカ・クァルテット(アメリカ)から始まり、コロナ禍で中止となった2020年以外は、毎年異なる弦楽四重奏団により演奏されてきました 個人的には第1回目のパシフィカ・クァルテットの演奏が最も強く印象に残っています

今回の「シューマン・クァルテット」は2007年にドイツのケルンで結成され、ボルドー国際弦楽四重奏コンクール他で優勝しています ヴァイオリン=エリック・シューマン、ケン・シューマン、ヴィオラ=ファイト・ヘルテンシュタイン、チェロ=マーク・シューマンの4人で構成されています このうち3人はヴァイオリニストの父と日本人の母から生まれた3兄弟です

1曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番 へ長調 作品18-1」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770ー1827)が1798年から1800年にかけてウィーンで作曲した6曲の「弦楽四重奏曲作品18」のうち2番目に作曲された作品(出版の関係で第1番となっている)です 「作品18」の作曲順は第3、第1、第2、第5、第6、第4番です 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ・アッフェトゥオーソ・エド・アパッショナート」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

4人が登場し、配置に着きます 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの並びで、シューマン3兄弟が隣り合わせで並ぶ形です 4人ともタブレット(電子楽譜)を見ながら演奏します

第1楽章から軽快な演奏が続きますが、4人による対話を聴いているような感じがしました 第2楽章はシェイクスピア「ロメオとジュリエット」のラスト・墓地のシーンから着想を得たと言われていますが、悲しみを湛えた音楽です しかし、続く第3楽章、第4楽章は何事もなかったかのように明るい音楽が奏でられます ハイドン的と言えばよいのだろうか

2曲目は「弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 作品59-1 ”ラスモフスキー第1番”」です   この曲はウィーン駐在ロシア大使アンドレイ・ラズモフスキー伯爵の依頼により1805年から06年にかけて作曲された「作品59」の3曲のうちの1曲です   第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アレグレット・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド」、第3楽章「アダージョ・モルト・エ・メスト」、第4楽章「ロシアの主題:アレグロ」の4楽章から成ります

第1楽章が阿吽の呼吸で開始されますが、かなりテンポが速く軽快に飛ばします これが現代的な演奏スタイルなのでしょう この曲を聴いていつも素晴らしいと思うのは第3楽章です 神に対する敬虔な祈りを感じさせます

休憩後は最後の弦楽四重奏曲であるとともにベートーヴェンが完成させた最後の作品でもある「弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135」です この曲は1826年10月にウィーンで完成し、作曲者の死後の1828年3月23日にウィーンでシュパンツィク四重奏団により初演されました 第1楽章「アレグレット」、第2楽章「ヴィヴァーチェ」、第3楽章「レント・アッサイ、カンタンテ・エ・トランクイッロ」、第4楽章「ようやくついた決心:グラーヴェ、マ・ノン・トロッポ・トラット ~ アレグロ」の4楽章から成ります

正直言って、前半はそれほど並外れた演奏だとは思いませんでしたが、後半の16番は素晴らしい演奏でした 第1楽章は親しい友人同士の会話のようだし、何より素晴らしかったのは第3楽章です ベートーヴェンはやっぱり緩徐楽章が一番素晴らしいということを、あらためて認識しました ところで、音楽評論家の飯尾洋一氏が「プログラム・ノート」に、「第3楽章の主題は後世にマーラーの交響曲第3番の終楽章として転生している」と書いてます 耳を傾けて良く聴いてみると、確かにこの第3楽章冒頭のテーマを長く伸ばしてゆっくり演奏すると、マーラーの第3交響曲の第6楽章のテーマになります 私はこれまで、この楽章についてこのような解説を読んだことがないので、とても参考になりました 「プログラム・ノート」を執筆する音楽評論家には、こうした”知られざる知識”を提供してほしいと思います 

話を戻します 第4楽章は冒頭に「そうあるべきか?」「そうあるべき」という謎の問答が記されています これについては、深遠な哲理を示すという説と、軽い問答に過ぎないとする2つの説があります この曲の明るくユーモアを感じる終わり方を聴く限り、どうも日常的な軽い問答に過ぎないのではないかと思いますが、答えはベートーヴェンしか分かりません

満場の拍手のなかカーテンコールが繰り返されました 第1ヴァイオリンのエリック・シューマンが流ちょうな日本語で、「ベートーヴェン・サイクルなのでアンコールもベートーヴェンです 明日演奏する『第2番 作品18-2』から第3楽章『スケルツォ』を演奏します 明日も是非聴きに来てください」と ちゃっかり宣伝をして、4人で軽快な演奏を披露し、再び満場の拍手を浴びました

私が次にシューマン・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクル」を聴くのは15日(日)の「サイクル Ⅳ」の第4番、第11番、第14番です

    

         

今日はサントリーホールにNHK交響楽団6月度Bプロ定期公演を聴きに行きます

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エリーナ・ガランチャ「ミート&グリート」 / リヒテル「ソフィア・リサイタル」(旧ソ連のリヒテルが初めて西側で開いたピアノ・リサイタルのライブ公演) ~ 日経「名作コンシェルジュ」を読んで

2025年06月11日 00時01分08秒 | 日記

11日(水)。今日から5日連続コンサートなので、昨日は腰痛悪化防止のため家でベッドに横になって、今週のコンサートの予習CDやリヒテルのCDを聴きながら読書をして過ごしました

ところで、6月17日(火)に東京オペラシティコンサートホールで開かれる「エリーナ・ガランチャ リサイタル」を聴きに行くのですが、主催者のテイト・コーポレーションから、チケット購入者に対し「ミート&グリート」開催のお知らせ(下のハガキ)が届きました

ガランチャとの写真撮影、サイン入りパンフレット、来日記念CDなど魅力的な特典が書かれていますが、驚いたのは参加費です。な、なんと10万円です

それでも、価値を認める人は参加するのでしょう 下の方に赤字で「受付期間内に於いて所定申込み数に達した時点で受付を終了します」と書かれていますが、いったい何人の参加を見込んでいるんでしょうね ガランチャは好きですけど、これは私にはムリです

ということで、わが家に来てから今日で3802日目を迎え、米西部カリフォルニア州ロサンゼルスで起きた移民摘発に対する抗議デモを巡り、トランプ大統領は9日、当初の2千人に加えて、さらに2千人をの州兵の派遣を命じ、また米軍も約700人の海兵隊員を派遣すると発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

州知事を無視したトランプ政権の軍隊派遣は 市民に対する挑発行為だ  無軌道政権が暴走してる

         

昨日、夕食に「鶏肉と茄子の炒め物」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 今回もピリ辛で美味しくできました

         

8日(日)付の日経朝刊「STYLE/Culture」に掲載の鈴木淳史氏による「名作コンシェルジュ  Music」で、リヒテル「ソフィア・リサイタル」を取り上げていました これは、旧ソ連を代表するピアニストのリヒテルが、鉄のカーテンの東側から初めて西側に出て、ブルガリアのソフィアで1958年2月25日に開いたリサイタルのライブ録音CDです 収録されているのはムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」がメインで、あとはラフマニノフ、シューベルト、ショパン、リストの小品が収録されています

スヴヤトスラフ・リヒテルは1915年に現在のウクライナで生まれました 10代から劇場などでピアノを弾き、20代に入ってからモスクワ音楽院で学び、幅広いレパートリーで世界中で活躍し、1997年にモスクワで死去しました

鈴木氏は冒頭、次のように書いています

「旧ソ連を代表するピアニストとして最初に西側で脚光を浴びたのはエミール・ギレリスだった そのパフォーマンスを絶賛された彼は『その賛辞は、リヒテルの演奏を聴いてからにしてほしい』と言ったという

これは、いかにリヒテルが凄いピアニストであるかを物語るエピソードです

鈴木氏はムソルグスキー「展覧会の絵」の演奏について「脳天を直撃するような壮絶さなのだ」と書いています

実際にCDを聴いてみると、「なぜそれほど先を急ぐのか」と言いたくなるほど速いテンポで弾かれる最初の「プロムナード」から、音が襲いかかって来るような「バーバ・ヤーガの小屋」に至るまで、強烈な表現力で弾き倒します 現代のピアニストであれば、テクニック的には同じくらい凄い演奏をする人もいるかもしれませんが、1950年代後半にこのような爆演を聴いた聴衆は度肝を抜かれたことでしょう また、ショパン「練習曲第3番作品10-3”別れの曲”」もタダ物ではないと思わせます 冒頭の枯れた味わいの演奏と、中間部の嵐が来たような演奏のコントラストには、思わず息を呑みます

一時期、リヒテルばかり聴いていた時期がありましたが、その頃聴いていたCDを録音が古い順に並べてみました

やっぱり膨大なレパートリーを誇っていたことが分かります これを機会に、またボチボチ聴いてみようかと思っています

         

今年も「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン」の季節がやってきました 今日はサントリーホール「ブルーローズ」で開かれるシューマン・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅠ」を聴きに行きます

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