今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

オリンパス DCですの巻

2021年01月13日 14時30分00秒 | ブログ

高級コンパクトのDCは「デラックス(D)コンパクト(C)」の略だったそうで知らなかった・・1971年発売ですが、70年代になるとそれまでのPENとは確実に違う技術と生産力を感じますね。で、DCはマニュアルが出来ないのでマニアさんにはあまり人気はありませんが、この頃のオリンパスのコンパクトカメラのデザインはボクシーで非常に好ましいデザインです。この個体は整備を受けているようで作動に問題はありませんが、レンズのヘリコイドグリスが完全に抜けていて、すでに回転時に異音とトルク変動が大きくなっています。そこでグリス交換のご依頼でしたが、じつはこれが意外に大変です。

UPの予定がありませんでしたので画像を撮っていませんが結局はシャッターの分解です。一番の苦手は画像のシャッター羽根を開くバネのセットです。本来はユニット単体に時に裏からセットするのでしょうけど、前面からでは非常に困難です。みなさんどうされているのでしょう? 

ヘリコイドを分解していますので無限遠を確認しますが、Bがありませんのでシボ革内からガバナーをロックします。

 

セルフタイマーは動力をゼンマイとしてトルクを確実なものにしています。

 

 

一見、PEN-FTと同じデザインですが、レバーの作動は逆なので少しまごつきます。

 

 

この頃になるとヘリコイドグリスはホワイトグリスが使われていますが、これが長期には変質して潤滑性を失ってしまいます。今回の作業は全体のO/Hの中で行うのが適切です。

 

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SEIKO スポーツマチックの巻

2021年01月09日 20時00分00秒 | ブログ

同じオーナーさんからセイコー・スポーツマチック7605-8010が来ています。1966年8月製ですからD2の少し後の生産ですか、まぁ、60年代の良い頃の工業製品ですね。

 

スポーツマチックはセイコー5になる前のモデルで当時の若者向けだったのでしょう。Deluxe ですので23石でケースの風防もガラス製です。

 

私もこの頃のモデルは好きで50本ぐらいは所有していると思います。

 

 

ゼンマイが殆んど巻けていないのでこのデータですが、悪くはないようですね。

 

 

cal 7605Aはセイコーのキャリバー別一覧表によると基礎ムーブメントは7606Aとなっています。まずはケースとステンレスベルトを洗浄しておきます。

 

今日は寒かったですねぇ。指先がかじかんで作業がきびしいですが、そうも言ってられませんのでやります。分解してみると、年代としては過去の分解は少なく、摩耗も少ないと思いますが香箱真は潤滑が切れていて石も無いので多少の摩耗はあるようです。

超音波洗浄をして巻真関係から組み立てていきます。

 

 

輪列を組み終わったところ。摩耗は少なく回転はスムーズです。

 

 

洗浄注油をした香箱をセットして香箱受を取り付けます。

 

 

角穴車が若干コハゼと接触をしていますね。やはり香箱真に摩耗があるようです。

 

 

日ノ裏側ですが、マニュアルの7606Aは曜車が付きますので曜車のない7605Aとは全く設計が異なります。

 

ふだん見慣れない設計で部品の正しい位置が分からなくなったりして・・竜頭を押すと日車が切り替わる機能は使いやすい。

 

日車は日車押エのみで位置が決まるため日車が地板の外周で止まってくれない。日制レバーのバネをセットするのに苦労しました。指先が動かないから余計です。

 

自動巻き時計は意外に古くから考案されていたようですが、セイコーは1956年にセイコー自動巻として発売されました。しかし、価格が高価で一般に普及せず、販売層を広げるためには販売価格を抑える必要がありました。そこで開発された自動巻機構が「マジックレバー方式」です。たつたこれだけの部品点数で自動巻きを実現しています。現在も海外で生産されている「セイコー5」には同様のメカが使われています。

洗浄・注油をした自動巻機構を本体にセットします。この時代の自動巻モデルは手巻き機械の上に二階建てで載せることによって自動巻きを実現しています。それによって機械の厚みが厚くなる傾向があります。

 

回転錘を取り付けます。ベアリングの摩耗は少ない方です。

 

 

ケースは研磨はせず、軽く傷消し研磨で洗浄してあります。Deluxe タイプですのでがっちりとしたケースとガラス風防でかなり重い時計になっています。最近は歳のせいで重い時計はちょっと苦手になりつつありまして、スピードタイマーやダイバーの出番がありません。手巻きか非防水の自動巻き辺りが良い感じです。

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完全手遅れのPEN-D2の巻

2021年01月07日 21時10分00秒 | ブログ

一見きれいな希少PEN-D2と思うでしょ。そう、元々は悪くはない個体なんですが・・

 

 

これですよ。過放電により液漏れをしていてすでに手遅れ状態。電池室や本体の塗装も侵されています。

 

この場合、慎重にネジを緩めないとスリ割りが壊れるか頭が折れます。やっと分解したところ。絶縁パッキンは完全に死んでいます。

 

ネジは電池の液により浸食されていて再使用は出来ません。しかし、M1.4で長いネジは他では使用していませんので代用を見つけるのが大変です。特にスリ割りネジを探すのは困難ですので+ネジで代用することになります。

 

この個体は未分解機だと思いますが、ネジが親の仇のように強く締めつけられていて分解が困難でした。まず、スプール軸とギヤが緩まない。画像の前面プレートが緩まない。また前玉ホルダーも緩まない。最後はシャッターの取付けネジのスリ割りが痛むほど締められていました。ネジは強く締めれば良いというものではなく、締め付けトルクを守らないと分解時に破壊に繋がる危険があります。

よく観察すると、シャッター留めネジの部分が荒らされてマジックのようなものが塗られています。この個体は未分解機と思いましたが、手が入っているようです。道理で、あんな締め方は工場はしないはずです。

 

本体を洗浄して電池の漏れ液を完全に除去してあります。では、リード線から新製して行きます。

 

電池室部分の部品を洗浄研磨してあります。絶縁パッキンは自作しました。

 

 

ターミナルの半田付け、絶縁パッキン、電池室の順に組み立てていきます。

 

 

ネジは汎用品で+は仕方ありません。皿、ナベ寸法など規格はオリジナル通りです。液漏れにより塗装も侵されています。リペイントをすれば完全ですけどね。

 

あっ、ピンボケだ。

 

 

ヘリコイドが固着していましたのでグリス交換してシャッターと組んであります。しかし、シャッターのチャージが出来ない。観察するとチャージの中間バネが伸ばされていました。修正して良好になったところで今日はここまで。

 

いけね。ひどい電池室ばかりに気を取られていて、肝心の露出メーターが動かなかったんだ。意外にD2,D3のCdsは丈夫で回路の修復で復活しました。ホッ。

 

ファインダーの清掃をして本体に取り付けました。メーター窓のセル板は黄変気味ですけど、この材質は静電防止材なので安易に作り直しは出来ません。

 

私たち修理人はつくづく掃除屋だなぁと感じます。作業の多くを清掃に当てています。外から見えないのでこのまま取付けることも出来ますが、それは出来ません。

 

平行で裏蓋を仕上げてあります。最後に前面プレートを絞めてやっと完成です。今回のように、普通のオーバーホールではない個体は工数が掛かります。

 

この個体#1370XXは、シャツター完成(昭和39年9月) 製品完成1964年10月です。ちょうど第18回東京オリンピックが開催されていた時。あの頃は高度経済成長で大人のおじさんたちが生き生きと仕事をしていました。去年の2020東京オリンピックはコロナによって開催できず、果たして今年の開催も危ぶまれています。両方の時代を生きている私としては何とも残念な気持ちです。

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今年最初のPENはの巻

2021年01月05日 21時10分00秒 | ブログ

先着のPENもありますが都合によりPEN-W#1165XXを先にO/Hします。過去に分解修理を受けている個体ですが、不思議なことにシャッターには手を付けられていません。しかし、辛うじて低速も切れているのは驚異的です。外観は塗装の剥離が目立ちます。ヘリコイドグリスは抜けています。

駒数ガラスのクラックは殆どの個体に発生していますが、この個体は2か所ですのでご希望により交換することにします。

 

ファインダーを清掃されているのですが、カバーの接着がすごいことになっています。

 

 

工場では対物レンズの接着は上方の側面2か所だけですが、この個体はすべての面にエポキシ接着剤が塗布されているため分解が困難でした。次に修理をする人の作業性を考えた作業をすることが大事です。工場の仕様は良く考えられておりオリジナル通りにすれば間違いありません。

 

接着剤を削り落としていますが余計な作業です。

 

 

内部は特に問題はないようです。

 

 

すべて洗浄をして組み立てていきます。あれ? リターンスプリングがなぜ短くされているのだろう??

 

 

レバーの戻りが悪かったのでしょうか? 正規に戻して組みます。

 

 

シャッターは疲労していません。超音波洗浄のうえ組み立てていきます。

 

 

シャッター完成。調子は良好です。シンクロターミナルの半田外れはお約束のようなものです。

 

 

本体にシャッターを搭載して洗浄したリング類を取付けて行きます。

 

 

オーナーさんから絞りのクリック感が乏しいとのご指摘がありましたが、PEN-Sと違いPEN-Wでは板バネ式が採用されており、摺動による摩耗からクリック感が薄くなるのです。なるべく修正をしておきます。

 

レンズは仕方ありませんね。前玉もバルサム貼り合わせのため黄変しています。過去に清掃されており、コーティングは薄くなっています。

 

時間の掛かったファインダーをトップカバーに取り付けます。今度はオリジナル通りです。同時に駒数ガラスも新品と交換してあります。

 

ふぅ、朝から食事の時間以外は連続で作業をしましたが一日では完成しません。単純に新品の部品を組立てるのと違い、部品の分解洗浄と良否のチェックをしながらの作業はPENだからと言って簡単ではないのです。

 

絞りリングを回してみると、何故か絞り表示(プレート)と▽の合致がアバウトです。分解してみると・・本体とプレートを留めているカシメ(ポンチ)が緩んでいましたので再カシメをしました。

 

フードやフィルターを常用して頻繁に脱着を繰り返す方の個体に絞り関係のトラブルが多いと感じます。最後に無限調整をして完成です。

 

 

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新年おめでとうございます。

2021年01月02日 13時50分00秒 | ブログ

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。年末からのコロナ感染拡大により緊急事態宣言が発令されるかとの状況となっていますので、今年は初詣もどうしたものかと思っていますが先ほど家電量販店の初売りに出掛けて戻りました。しかし、家の中ですることがない。そうだ、リューターのベアリング交換でもしておこうかと思います。このリューターは平成9年に購入したRYOBI HR-20ですがキソツールのOEMでしょう。随分と物持ちが良いことです。すでに新しいリューターは所有していて精度の必要が無い粗削りに使用していました。しかし、ミニチュアベアリングが摩耗をして軸ブレが大きくなっていました。そこで、新品のベアリングを入手して置いたのでした。

車やバイクのベアリング交換というと圧入が常識ですが、この製品は軽圧入にもならず指で押し込めます。ベアリングは規格のDDL-1370ZZというシールド型ですので軸側で寸法を追い込めば、もう少し軸ブレ精度を上げられるのにと思いますね。

 

後ろ側のベアリングもピンセットでセットしますが届かない。ロングノーズプライヤーの方が楽だね。

 

 

軸の分解時にクリップが外せなかったので排気口のリブを切り取ってクリップを外していましたのでその逆に取り付けます。

 

 

製造当時もすでにモーターは中華製だったんだなぁ。しかし、壊れず動いています。代替もありそうです。

 

 

回転しています。軸精度を上げればもっと軸ブレが少なくなるのに・・まぁ、当分は現役使用ができるようになりましたね。

 

 

では、そのまま作業をして行きます。今年初めはローライ35Sを2台整備しますが、程度は良好のため書くことも無いと思います。

 

 

ピンホール状のえくぼ。何にぶつけたのかな? 他はきれいなのに残念です。

 

 

他に、定番の巻上げレバーアテが欠落しています。

 

 

裏側から見ると良く分かります。これを修正していきます。

 

 

製造が比較的新しいので各部は摩耗や劣化も無くメンテナンスで問題ないレベルです。このまま平和に終了するかと思ったのでした。ローライ35系のCdsやメーターは丈夫と思います。ジャーマニー製の初期モデルにCdsのボチボチ劣化が見られる個体が多いだけです。

 

レンズも基本的に見にくい腐食などは少ないと言えます。この個体も良好ですが、あら~、意地の悪い目立つ白のチリがありますね。どこから入ったのでしょう。

 

この頃の個体は後玉周辺の仕様が変更されています。それによって本体側との連動組立がやり難くなりました。緩まないことの多い留めネジの頭もより小さくなって、ドライバーのビットを正確に合わせないとナメてしまいます。

 

清掃したシャッターユニットを本体に組み込み、フィルムレールを取り付けます。

 

 

トップカバーを付けて無限調整のためレリーズでバルブにしようとしてもシャッターが切れません。これはレリーズピンが固着しているのです。殆どの場合、レリーズを強く押し込むことで固着が外れますが、この個体は頑固に固着しています。グリスが硬化して貼り付いています。

 

こうなるとピン抜きで打ち出す以外にありません。レリーズ座を変形させないように気を付けます。おかげでレリーズケーブル1本を壊してしまいました。

 

距離ダイヤルをftからmに変更して取付け、最後にプレートを貼って完成です。

 

 

摩耗や使用感の少ない良い個体でした。

 

 

この個体も外観は悪くはないですが分解歴がありますね。工具を滑らせて梨地を傷にしています。お約束のレバーアテも無い状態で長期に使われています。(カバーにレバーの当たり傷)

 

沈胴が下向きで半分ぐらい降下して来ます。ヘリコイドグリス抜け、ファインダーの汚れ、巻上げの鳴きなどがあります。

 

巻上げレバーのスリ割りネジがすごいことになっています。ここは強い緩み止めが塗布されていますが、それにしてもこんなにしなくても・・先が思いやられます。

 

本体側は通常のメンテナンスで終了してトップカバーを付けます。すでにレバーアテは熱カシメしてあります。フィルムカウンター窓は殆ど接着が脱落しますので再接着をしておきます。

 

 

問題わだ。点検で沈胴のガタや距離リングガタが大きいこと。分解して行くと、後玉を外そうとしましたね。ここは墨塗りしてあるので開かないの。トンネルカバーとシャッターユニットを留めるネジが緩んでいます。

 

ネジが緩んでグラグラです。

 

 

沈胴のロックが緩く手で揺すると動きます。ロック部分に僅かな摩耗がありそうです。

 

 

沈胴も下降しますのでフェルトもへたっていますので調整をしておきます。

 

 

ここがロック爪。少し矯正をしておきます。

 

 

だいぶしっかりとしましたよ。色々な部分のガタの合成だったのです。

 

 

後玉縁の墨塗りをしておきました。しかし、ガタが無くなると低速に引っかかり症状が出ました。TOGGLELEVER SEL STEPという寸法調整部品を適正なものと交換して良好となりました。

 

最後に前面プレートを貼って完成です。

 

 

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