muraakiさんから今度はブラックFTが3台来ています。さすがに3台共、素材としては良いのではないかと思いました。都内の中古屋さんを回っての調達ご苦労様です。では、#3071XXから始めますが、ボトムプレートを留めているビスが気になります。斜めに入っているのが分かりますか? 気にせず強引にねじ込んでしまう神経が理解出来ません。
カバーを外してみます。ピンセット先のビス孔。ねじ山が壊されちゃってますね。やれやれ・・ボタンロックプレートのバネも外れています。なにかイヤな予感・・
ダイカストの洗浄が終って、スプロケット軸とスプール軸を組んであります。スプロケットですが、クラッチ部に磨耗があります。現状でスベリが起きるかテストをしていますが、今のところ大丈夫のようですから再使用としています。気になるのはフィルムレールです。中央付近に腐食の痕跡があって、それを研磨で消されている痕があります。ということは、レールの中央部分が微妙にへこんで平滑面が出ていない可能性があります。その他は特に問題は無いようですので、3台UPするのもマンネリですので、ネタのある場合にUPすることにします。また、来週の後半から約1週間は留守にしますので、「今なに」もお休みとなります。お問合せなどのご返事も、その後となりますので、ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願い致します。
FT(B)も3台そろうと迫力がありますね。今回は30万代付近と、殆ど同時期の製造だけに、仕様はすべて同じでした。目利きがチョイスをしていますので、特に書くこともなく完成しています。ペンスケ展グループの方に供給されるFTですが、みんなブラックが欲しいのではないですかね。その他、F用の分解歴ありで程度の悪い40mmとFT用の40mmをメンテナンスしてあります。
で、北海道のINOBOOさんがオークションで落札した56系のキングセイコーが出品者から直接届きました。普段、私が入手するジャンクとは数倍の価格差がある個体ですから、文字盤などはきれいで程度はまずまずでしょうかね。しかし、長期にオーバーホールは受けていないと見えて40秒/日の遅れがあります。このケースは裏蓋のないワンピースケースで、機械は、ベセルを外して前から取り出します。しかし、ケースとベセルの隙間が大きくて、手垢がごってりと詰まります。画像は、ベセルを外したところ。
PEN-S 2.8 ね。全体の疲労はそれほどでもないのだけれど、保管が良くなかったたために、ダイカスト本体と裏蓋に湿気による塗装の劣化が見られます。駒数ガラスはクラック入りで脱落しています。まぁ、このぐらいの個体であれば、問題は無いと感じる方も多いと思いますが、オーナーさんは気になってしょうがないご様子です。
と言うことで、ダイカスト本体のみリペイントをしましたよ。元々のダイカストの巣が向かって左方のシボ革部にあります。シボ革に隠れるので良品採用となったのでしょう。縁部分は意外に腐食が進んでおり、傷消しの修正吹きをしてあります。
メカ的には特に問題はありませんので淡々と組んでいます。この頃はスプールはグレー色の成形ですね。スプロケットはちゃんとアルミの黒アルマイト製です。上側のモルトも丁寧に貼ってあります。
上前面を見たところ。シャッターは過去に分解を受けていましたね。何故かシャッター羽根付近に水油が塗布されていました。全て洗浄脱脂をして組んであります。
前面の洗浄したシボ革を再接着しました。オーナーさんは工場での接着の時にはみ出して、経時により茶色になった接着剤を気にされています。まぁ、これを溶かすための溶剤はシボ革自体も傷めるので簡単には使えないのです。出来るだけ削り取るようにしました。気にされない方の方が多いですけどね。
トップカバーです。クラック入りで脱落していた駒数ガラスは新品と交換接着をしてあります。吊り環ですが、この頃の吊り環の材質は真鍮にメッキですので、腐食をして緑青が噴いているものがあります。そこで、後期生産機に採用されているステンレス製の吊り環に左右セットで交換してあります。
清掃したレンズを接着したファインダーブロックをトップカバーに取り付けています。これを本体とドッキングします。
レンズはカビがありましたが比較的軽微で殆ど清掃出来ています。しかし、湿気のためレンズの分離が親の仇のように困難でした。ヘリコイドのねじピッチは変更前の細かいタイプにより、変更後のヘリコイドとはグリスの硬さを調整する必要があります。駒数カニメねじは新品と交換、ファインダーのリンクル塗装が剥離した部分のタッチアップ、フィルム位置マークなどの抜けた色入れを補修してあります。裏蓋については清掃、モルト交換をしてありますが、塗装の補修は今回は省略です。PEN-Sは1960年から長きに渡って生産されましたので、24万代のこの個体は1962年4月の製造とかなり古いのですね。それによって、あまり使われなかった個体ですが、保管の問題でコンディションを落としていたというわけです。よって、一番劣化をする、距離リングやピントリングなどの部分が良好だったのはラッキーでした。良いコンディションで長く使いたいというオーナーさんのご希望にはお応え出来たでしょうか。