今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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初期の生産機だけどきれいPEN-S 3.5

2012年07月23日 23時31分22秒 | インポート

Dscf0112551 PEN-S 3.5 #1377XXですね。3.5は1965-1月からの生産のようですが、私の資料から、この個体は1966-6月の生産という、比較的初期の個体だと思いますね。3.5は生産時期によって、ギヤやナットの樹脂化など、コストダウンによる変更を受けている機種ですが、この個体はまだ、金属部品を使用している頃で、トップカバー横の留めビスはスリ割りタイプのままです。(その後+ビスに変更)初期生産機としては、全体の保存状態は良好です。過去にO/Hを受けているようですが、シボ革は両面テープ貼りのため剥離ぎみ。駒数針は赤く塗ってあるのね。(オリジナルではないですよ) お訴えとしては、巻上げが2回に1回ロックせずとのことです。巻上げダイヤルを巻いてみると・・・巻上げロック位置で、ガタが多くあります。これですと駒間も安定しません。調整のはずれだと思います。ロック時の駒数板の位置も正規ではありませんね。画像を良く見てください。では、分解です・・・

Dscf011425 なぜか、向かって左側のシボ革は両面テープ貼りをされていますが、1/3部分は剥離紙が付いたままです。右側はゴム系接着剤で貼られています。きれいでないため、一度全て剥離清掃します。

Dscf0116111 シャッターユニットですが、こちらもなぜかレリーズレバーがグラグラになっていますね。この状態では、チャージをロック出来ないため、←→のように上げ底にしてレバーのガタを押さえてあります。どうして本質の原因を治そうとしないのでしょうか?

Dscf011841 原因はね。レバーと軸のカシメが外れているために固定されずにグラグラしているのです。コパルはほんと、カシメ不良が多いと感じます。ポンス台にて再カシメをして使用します。

Dscf011955

(疲れてうたた寝していました)オーバーホールの殆どの工数は、技術的な作業というよりは、ひたすら清掃なんですね。しかし、これを疎かにしたのでは、きれいな仕上がりは期待できません。裏蓋のモルトですが、この個体は毛糸をゴム系の接着剤で貼ってありますので、溶剤を使わなければきれいに清掃することができません。

Dscf012099 清掃したダイカスト本体にO/Hを終えたシャッターユニットやその他を組み込んでいます。シボ革ですが、剥離したそのまま再接着をしたのでは、きれいな仕上がりとはなりません。かなりヤレっとダメージのあるシボ革ですから、細かい修正をしてあるのです。これがまた工数が掛かるのです。本来、シボ革を全て剥離する必要はありません、というか、ダメージが大きくなるため、剥離をしてはなりません。

Dscf012175 ちょっとブレイクタイム。先日O/Hをしたセイコーの新10Aですが、ラグ形状は普通のタイプですが、裏蓋を観察すると、パリス環式のベルトを使用されていたことが分かりましたので、現在、復刻販売をしている商品を入手してみました。戦前から終戦直後の時代に使用された形ですから、当時のオリジナルも非常に簡素な作りのベルトであったようです。まぁ、それに忠実な復刻のようですから、現在の目で見ると粗末な印象も受けますね。ラグ幅でベルトを選択したため、ちょっと太めでしたね。早速取り付けてみます。

Dscf012261 やはりちょっと太いね。次は細いタイプを入手しましょう。材質はペラペラのコードバン(馬革)で、チープな印象ですが、時代は合っていますので、よい雰囲気は出ています。戦時中は、ベルトも統制品で、切符が無ければ入手出来ない事もあったようです。新10Aは当時としてはよくある社外製のケースですので、打刻がないため製造年の特定は出来ませんが、戦後すぐの昭和21年頃かも知れません。それにしては、テンプのひげゼンマイを再調整したところ、平置きですが、日差10秒程度に収まっています。ブルーの焼き針で、当時の時計としてはよいコンディションとなっていると思います。この後、この個体よりも古い、戦前か戦時中に製造された旧10型もO/Hをしましたが、こちらも中々の精度で作動しています。

Dscf012556 で、裏蓋のモルトの交換など、最後の仕上げをして完成です。この個体はレリーズレバーのカシメ脱落により早い時期に故障となり、殆ど使用されずに保管されていたのでしょう。3.5は比較的程度の良いものが残っていますが、初期の製品としては、状態は95点ぐらいに素晴らしいです。しかし、過去の修理がね。O/H時期やサインを入れる前にやるべきことがありそうに思いますが・・並べて新10Aですが、こちらの方が20年も先に生まれているのですよ。機械の命は永遠で羨ましいと思うこの頃です。


初期の生産機だけどきれいPEN-S 3.5

2012年07月23日 23時31分21秒 | インポート

Dscf0112551 PEN-S 3.5 #1377XXですね。3.5fは1965-1月からの生産のようですが、私の資料から、この個体は1966-6月の生産という、比較的初期の個体だと思いますね。3.5は生産時期によって、ギヤやナットの樹脂化など、コストダウンによる変更を受けている機種ですが、この個体はまだ、金属部品を使用している頃で、トップカバー横の留めビスはスリ割りタイプのままです。(その後+ビスに変更)初期生産機としては、全体の保存状態は良好です。過去にO/Hを受けているようですが、シボ革は両面テープ貼りのため剥離ぎみ。駒数針は赤く塗ってあるのね。(オリジナルではないですよ) お訴えとしては、巻上げが2回に1回ロックせずとのことです。巻上げダイヤルを巻いてみると・・・巻上げロック位置で、ガタが多くあります。これですと駒間も安定しません。調整のはずれだと思います。ロック時の駒数板の位置も正規ではありませんね。画像を良く見てください。では、分解です・・・