今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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今年の仕事納めかな? PEN-S 2.8

2011年12月24日 21時31分08秒 | インポート

Dscf316161 作業に没頭している間に暮れも押し詰まって来たようですね。皆さんはいつご用納めでしょうか? 例年は、元日でも作業をしていましたが、暮れは時計のO/Hをしようかと予定しておりますので、このPEN-S 2.8 が最後になるかも知れませんね。数年前はご依頼が多かったPEN-Sですが、最近は少ない気がしますね。この個体は#2707XXと、PEN-Sとしては比較的前期の生産機です。操作感はギシギシとしたもので、メンテナンスをされていない個体に多いフィーリングです。シャッターはお決まりのゆっくり作動をしている状態。O/Hが必要です。スプロケットはアルミアルマイト地のもので、スプールはグレーモールドですね。

Dscf316477 観察すると、シボ革の端が剥離していることから、一度分離された可能性がありますが、意外に駒数ネジやシュー下ビスを開けたことは無いのかもしれない。ただし、裏側のシャッターユニット留めビスのスリ割りにはためらいキズが有ったりで、ちょっと分からない個体ですね。巻き戻しレバーのバネ抑えビスが欠落しています。まぁ、全体的には、古い割にはそれほど悪くは無い個体だと思います。

Dscf316358 今日は、家族の依頼で買い物の運転手をしていましたので、あまり作業は出来ていません。しかし、ショッピングモールは大変な人出ですね。私はあまり人ごみに出ませんので余計に感じました。不景気なのにね。帰宅するとお二方から腕時計が届いておりました。画像は、ダンヒルのクオーツですね。ムーブメントはスイスのETA製ですから、そこそこ良いものでしょう。電池はSR920SWですが、在庫を調べたらswatchに使う371と同じサイズでしたので交換してみました。問題なく作動するようですので、石に注油をしてケースの洗浄でよろしいと思います。

Dscf316552 こちら(左側)は、前回の三光PENのオーナーさんから送って頂いたセイコー、ベルマチックですね。私も国内向けの27石を所有していますが、これは輸出向けの17石でして、右のセイコー5の通称、座布団よりは一回りも大きいです。この時計は、時間設定でベルを鳴らすことが出来る時計で、ビジネスマンの出張などで目覚まし時計として使える優れものです。国内よりも海外で根強い人気があります。しかし、私のような細い腕には似合わないなぁ。やはり、丸太棒のようなポパイの腕でなくっちゃね。その後は、NHKの「坂の上の雲」最終回を見てしまいました。日本海海戦の戦闘シーンは中々良く出来ていましたね。一昔の東宝映画の特撮と違って、CG技術が格段に進歩しています。かなり費用も掛けたと思いますね。この海戦の戦術については色々論議がありますが、まぁ、結果的に勝ったから良かったような時の運もあるのでしょう。一斉回頭の解説が明確で無かったですが、あれだって、バルチック艦隊の砲撃精度が高かったら命取りだったでしょう。バルチック艦隊は黒色火薬を使用していたために、一発発射すると、煙幕が晴れるまでは、連射が出来ない事情もあったとか。とにかく、薄氷を踏む思いで勝利したことが、国民の勘違いを生んで、その後の破滅へ向かうことになるのです。日本人という民族は・・。

Dscf3162551 少し本題をやっておかないと叱られそうですので・・トップカバーを分離してみましたが、このカメラは未分解機だと思います。通常、分解するのはファインダーを清掃したいためですが、この個体は遮光カバーの接着を剥離された形跡がありません。そこで、ちよっと気になるのは・・・左右にバネがありますが、じつは、これ同じものが使われていますが、本来は、左側のバネは全長がもう少し長いものが使われているはずです。の部分までの距離を比較して頂ければお分かりと思います。しかし、この個体は「分解歴」がないのでしたね。とすると、工場で同じバネを使って組んだことになります。初期の頃の個体でも、今まであまり記憶がありません。コパルにてシャッターユニット製造1961-10月で、カメラ完成は1961-11月に製造された個体になります。

Dscf316471 シャッターユニットは、緩慢な作動でしたが、これは未オーバーホールのユニットであれば仕方ありません。機械的な磨耗も殆どなく、羽根の腐食もありません。推測では、あまり使用されたカメラではありませんね。フィルム10~20本程度かも知れません。

Dscf3166611 すでにシャッターユニットは本体に組み込んでいます。と、ここで、例のバネです。やはり長さが違い過ぎて負荷が掛かりますので、オリジナルに交換することにします。首の長さが全く違うでしょ。で、やはりちょっと初めから違和感を感じていたのですが、アルミ地のスプロケットとグレーのスプールです。これは、初期の17万台頃までの仕様なんですね。27万代は無いと思いますけどね。PEN-Sも製造番号は正確に製造順には並んでいないのですが、私の資料を見ると例えば、#2080XXがこの個体と同じシャッター製造1961-10、カメラ完成1961-11なんですが、スプロケットはブラックアルマイト、スプールはグレーです。#2341XXはシャッター製造1961-6、カメラ完成1961-8ですが、スプロケットはブラックアルマイト、スプールはグレーとなっています。仮にトップカバーが付け替えとすれば、バネも交換された可能性もあります。(交換するようなバネではありませんが)しかし、シャッターの製造捺印とシュー部分の表示は整合性があるんですよね。ファインダーを分解した形跡は無かったし・・まぁ、分からん。

Dscf316825 いや、ファインダーの対物レンズはゴム系接着でしたね。貼り直された可能性もあります。一応組み上げてテストをしてみましたら・・巻上げダイヤルがロックする時がありますね。ははぁ、分かった。原因はシャッターを切った後でもピンセット下の二回巻上げ防止レバーが解除されないのです。それを、バネを強くして強制的に復帰させようとして短いバネを使ったのでしょう。原因は、スプロケット軸のカム下に入るピンセット先の真鍮製のカラーが少しこの個体の部品組合せ(組上り寸法)には厚みが薄いのです。(0.1mm)それによって、スプロケット軸の回転が規制されるために、レバーの動きが重くなっているのです。工場での問題であれば、カラーを交換して調整すれば良いので、やはり、途中で対症療法の修理をされたのでしょうね。不具合の根本の原因を突き止めなければ、本当の理解は出来ないのですね。適合するカラーと入れ替えておきます。また、右側のチャージレバー軸のビスが真鍮製で、ガタが多くありましたので、ニッケルのビスと交換してあります。(上の方の画像と比較)

Dscf317166 まぁ、ちょっといつもの推理がしにくいミステリーな個体でした。この個体は、オーナーさんのお父様のお知り合いから譲られたカメラとのことで、何やら過去の経緯が明らかになるのかも知れませんね。カメラとしてはファインダーのリンクル塗装を見ても明らかなように、消耗は少なくレンズもきれいですから問題はありません。一緒にご依頼を頂きましたオリジナルのレンズキャップを装着して完成です。

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