オークションで、ラドーのゴールデンホースの復刻版を入手しました。と言っても、現在、日本国内に限定で発売されている現行の「復刻版」は高価なので1980年代頃の復刻版(と言うかキャリバー変更)です。何故か異常に安く落札出来たのですが、出品者が発送時に動かなくなったとのことで返金を申し出て来ましたが、「問題ありません」と送ってもらい、気持ちだけと返金して下さいましたので、え~、それじゃ、セイコー5と同じ値段になっちゃう。元々安値だったのに、申し訳ないような気がしました。
初代の本物は1958年頃、酒田時計貿易によって輸入されました。当時は高級舶来時計と言っていた時代です。ちょっと派手な金時計は、銭湯へ行くと、小金持ちのおじさんが湯船の中に時計をしたまま入浴していたのを記憶しています。え~、防水時計なんだって。とか羨望の的でしたね。余談ですが、当時、デパートの時計売り場には水槽にセイコーマチックが沈められたディスプレィがあって、魚はいないのかなぁ?と眺めたものです。何故か我が家にもゴールデンホースが有って、兄が使っていましたので憧れの時計でしたね。
で、この復刻版は中身のキャリバーはスイスのETA #2782という機械が搭載されています。お~、金めっきされているんですね。不動の直接の原因は、機械を固定するビスが脱落してギヤに噛み込んでいたものでしたが、取り除いて裏蓋を閉めると秒針が止まってしまう。何度やっても同じです。当初はてん輪に裏蓋が接触をするのではと考えましたが、クリアランスを測定して、その可能性は消えました。そこで、自動巻き機構(左の2点)を外してから裏蓋を閉めると秒針は止まらない。錘(ローター)の動きも悪いので、この辺に原因がありそうです。
手持ちなのでブレた画像ですみません。自動巻き機構を裏返しして点検してみると・・・あれェ、ローターの留めビスが入る先端の部分が盛り上がって破れています。これは、ローターを留める時に規格よりも長いビスを挿入して底を突き抜けたようです。それで、裏蓋を閉めると自動巻き機構が押されて、破れた先端が、二番車と接触して動きを止めていたようです。
破れて盛り上がった部分を修正をして仮に組んでみましたら、お~、止まりませんね。復刻版と言えども、すでに30年ほどの時間が経過していることを考慮すれば、まずまずのコンディションではないでしょうか。風防もリューズもオリジナルで、初代の雰囲気を良く再現していると思います。ラウンドした文字盤やドーム型でカレンダー部はレンズ付きの風防が60年代初期の雰囲気を良く表しています。12時の下の赤いアンカーは時計の傾きに応じて動きますが、子供の頃は、これがすごく精密に感じて記憶に残っています。(特に裏側にメカは無いそうです)流石にステンレスベルト付きの金めっき側は恥ずかしくて身に付けられないので、大人し目のSS側の黒ベルトが良いですね。調べてみると、輸入元の酒田時計貿易は、RADOの販売権をスウォッチの奪われて、10年ほど前に倒産していました。昔はクイズ番組などで賞品として提供していましたね。「酒田時計貿易から、スイスの高級時計ラドーをプレゼント」とか言ってね。ほかに、平和堂貿易というのもあったような・・ETAの機械式ユニットは、現在でも多くのメーカーの時計に採用されています。#2782も探せば見つかるかも知れませんので、部品の調達は可能のように思います。さて、このままO/Hをしましょうか? ちょっと考えます。
「今なに」をご覧頂いているファンの方からPENのご提供を頂きました。資料的に貴重なコンディションを有していますのでご紹介しておきたいと思います。製造番号は#2850XXで、いわゆる三光PENの特徴と言われるFlashjマーク、レリーズボタン、巻き戻しダイヤル、フィルム位置指標などはすでに変更されている頃の個体ですが、みなさんが見える特徴から判断されるのとは別に、すべて分解検証している私が見た印象は少し異なります。後の工場製とは明らかに異なる部品は、どちらかと言えば三光PENの頃の特徴と一致します。まぁ、いきなり全ての変更が行われたのではなく、製造過程で、少しずつ変更改良が進んだと考えるのが妥当と思いますが、その意味では、三光PENと後の工場製のスタンダードPENとの間を埋める貴重な個体だと思うのです。純正UVフィルターと当時のストラップ(金具部分のみ)と皮ケースも付属しています。ファインダー上の先端部の樹脂が白化していましたが、これは、皮ケースに長期に保管されたためかも知れません。底蓋の腐食は軽い研磨によりほとんど気にならない程度になっています。
問題としたいのは塗装色とシボ革の色です。画像では違いが分かりにくいと思いますが、左は三光PENの裏蓋で、右がこの個体のものです。新品の状態を良く残していますが、先日苦労をした塗装色は明らかに黄色系がありません。本来はこの色であったものが、経時的に変色をして左のような色に変化をして行ったと言う気もしますね。変色した見本に一生懸命に調色をしても再現は出来るはずがありません。また、大きく差があるのはシボ革の色です。本物は画像よりも青味の強いグレーです。カメラの状態から、殆どの時間を皮ケースの中に保存されていたと考えられますので、紫外線なとの影響は最小で新品時の色彩を残しているのだと思われます。しかし、この当時の色の管理はアバウトであった気もしますので、全てがこの色であったという断定は出来ませんね。
付属の皮ケースについて研究されていらっしゃる方があれば、お聞きしたいところですが、私のところにある革ケースは、殆ど左のもので、皮の感触が子牛皮のように柔らかで、内装生地が赤、灰、紺のものです。今回のPENに付属していた皮ケースは、皮の材質が少し硬い(しっかり)もので、内装生地の色は濃紺になっています。果たして初めからのオリジナルかはわかりませんが、このあたりの付属品を研究されても面白いかもしれませんね。私は時間が無いので・・・余談ですが、米谷さんの講演中に、このケースを作っていた下請けさんのお嬢さんの結婚式だったかに出席されたとかのお話しがあったと記憶しています。標準の付属品ですから、当時は相当の数量を発注されていたので、深いお付き合いがあったのでしょうね。
皮ケースと同じく、付属品のストラップですが、初期に付属していた皮を編んだもの用の金具だけが付いていました。これがこの個体の標準品であったとすると、皮のストラップは三光PENだけの付属品ではないことになります。画像の皮ストラップは私のコレクションです。金具といい、皮で編んだストラップといい、非常にコストの掛かった付属品だと思います。全体のコストを抑えられた製品にしては、皮ケース共々、気張りましたね。その後、ストラップは、みなさん良くご存知のチープなビニール製になります。あれ、私の手元には100本以上あります。