そろそろPENをやらないとお叱りを受けそうなので・・・ピカピカのPEN-FT(B) #4401XXが来ましたよ。この個体、確かに最終生産頃のオリジナルブラック機なんですが、何故かリペイント機なんですね。私も多くのFTを見て来ましたが、オリジナルブラックの細かなタッチアップは有っても、全て細かな部分までリペイントをされている個体を見たことがありません。どんな理由があったのでしょうね。駒数ガラスのオレンジが滲んでいるため、別の修理屋さんで、固着したセルフボタンの分離を試みたとのことでしたが、果たせず、そのまま来ましたが、トップカバーを開けてみると・・
ファインダーの見えやTTL表示に違和感を感じていましたが、あれ、↓部分に遮光テープも無いし、ハーフミラーも見えませんよ。観察してみると、オリジナルでないミラーをカットして挟み込んであるようです。その他、シャッターダイヤルのガタは分解組立の不良でしょう。モルトは撤去されたままです。その他、巻上げ関係のゴリツキなどもありますので、全体のオーバーホールをすることにします。
塗装ですが、ご覧のように裏側は見慣れたオリジナルの状態で、駒数ガラスの接着も一度分離された形跡はありませんので、リペイントは焼付ではなく、ウレタン塗料を使用したようです。(溶剤には溶けません)それほど悪いコンディションとも思えませんけど、何故リペイントをしたのでしょう? ・オリジナルなのにオリジナルで無くなってしまいましたよ。
シャッターダイヤルがガタガタです。比較的多いトラブルで、裏から留めているビスの緩みが原因です。
ハーフミラーは汎用の板をカットして使われていますが、支障は無いにしても正確な形状になっていませんね。TTL窓部分の逃げがありませんので、道理で暗く見えたのでした。
塗装された肌はゆず肌ですね。光沢はオーナーさんが磨いたようです。焼付塗装の場合は、ゆず肌にはなり難いので、吹きっぱなしのウレタン塗料が使われたようです。しかし、生産後期の大きな損傷も無い個体をリペイントする必要があったのでしょうか? 因みに、有名カメラ店のネットショップで購入されたそうで、「細かいことを言う方お断り品」だったそうです。そうは言っても、リペイントは表示するべきでしたね。
妙な画像ですみません。塗膜を観察すると、変わり玉のように二層になっていることが分かります。と言うことは、オリジナルの塗膜も残っていて、ペーパーで足付けをしてから塗装したものと思います。足付けをしていなくて、自然乾燥塗料を使っていたら、上層だけを剥離することも不可能ではなかったのですが・・
では、いつものように完全に分解洗浄のうえ組立をしていきましょう。
んっ? チタン膜がちょっと光ったように思いましたので点検してみたところ・・あら~、ピンホールが開いていますね。画像では光源の関係で1点のみですが、実際には2点あります。この個体は、本来は部分修理のご希望でしたが、私が無理を言ってオーバーホールに切り替えてもらった経緯がありますが、分解してみなければ分からない不具合もありますので、見える部分だけの部分修理は責任が負えませんから心配なのです。
で、観察すると、何かで突かれたような穴ではなくて、製造工程でのシボ加工の時の圧力が高くて凹部に亀裂が入ったものと思われます。撮影での光線漏れは無かったでしょうか?
シャッターユニットを洗浄して点検してます。ブレーキリングのナットが緩んでいます。このまま放置すると、ある日突然巻上げがロックします。当初ご依頼の部分修理では発見できなかった不具合です。
シャッター幕のピンホールは補修して遮光してあります。前板関係も完成。
露出メーターユニットですが、新品のハーフミラーをセットしようとすると・・左側のミラー押さえが撤去されているため、ミラーが斜めになっていますね。
この部品が欠落していたのです。在庫から調達して取り付けます。何故、撤去する必要があったのでしょう?
何も無いように見えても、古い精密機械ですし、途中で分解されていますから思わぬ不具合があるものです。シャッターダイヤルのガタも無くなりしっかり感があります。すべてオリジナルに戻して組立ててあります。
トップカバー前面のスカート部が妙に曲がっていますね。これも意味が分かりません。直しておきます。
その他、ファインダーのピント調整、露出計調整とトップカバー上面の歪みの修正をして完成となりました。1970年3月の製造と、FTとしては最後期のブラックモデルです。
と思ったのですが、オーナーさんから、セルフボタンも交換して欲しいとのご依頼がありました。そうですね。分離しようとして、ニッパのような工具で傷だらけにしていますね。では交換をしてこれで本当に完成です。