予定していた修理機の到着が遅れていますので、時計をやっています。この機械はセイコーの旧10型です。耐震装置はまだありません。10型ということで、現在で見れば女性用程度のサイズです。ケースは社外と思われますので、途中で交換をされたか、元々、時計屋さんで部品組みをされた個体でしょう。入手した時は、リューズ(巻芯)が欠落している状態でした。裏蓋を開けてみると、機械をケースに固定するネジの片方が頭が折れて無くなっています。残骸が無いことから(ネジ部は残ったまま)、前回の分解時に折ってしまい、そのままとしたのでしょう。要するにリューズを部品取りされた個体です。しかし、テンプの天芯などの磨耗は少ないと思います。
無事オーバーホールを終えて、表に返して文字盤などを取り付けます。針は趣のある形ですが、金色は黄ばんだ文字盤とのコントラストが弱く、老眼の目には見難いですね。ブルー針にでもしてやろうかしら。。
で、本題。お祖父さんの形見をお母様から譲られたという個体。まぁ、世代を受け継がれて幸運な個体ですね。放置されていた期間が長かった個体としては致命的な問題はないようです。PEN-FTはブラックモデルとしては初期の23万代+40mm付き。PEN-Sは42万代と2.8としてはかなり後期の生産です。すでに3.5も発売されていたと思いますが、明るいレンズを選ばれたのでしょう。スプールはELタイプで、スプールを留めるナットは樹脂製と3.5と同じ仕様となっています。おまけに純正UVフィルターとフード゛付きとくれば、これはかなりこだわりの趣味人と推察されますね。現在のマニアさんが欲しいアイテムをすべて備えています。
お祖父様はかなりの趣味人でいらしたご様子。オプション部品も揃えて楽しんでおられたようです。しかし、フィルムを通した本数は、それほど多くはないですね。シャッターの消耗もありません。超音波洗浄をした地板にこの部品を取り付けるところから組立は始まります。軸は精密研磨をされていることが分かりますね。個体の中には、この部分に錆が発生して作動(回転)を阻害しているものもあります。
スローガバナーの固着はありましたが、その他に消耗はなく、組み上がっています。このシャッターには、この部分にコパルにて製造された年月が捺印されています。しかし、インクが流れて読めないですね。私が消したのではありません。未分解の個体でしたので、オリンパスで本体に組み込む時に指が触れてしまったのでしょう。捺印は41.8となっていたはずです。(コパルは和暦表記、オリンパスは西暦表記)このユニットは1966年8月の製造で、カメラ完成は翌月の9月となります。ユニットが完成してから組み込まれるまでのリードタイムは概ね1ヵ月が普通です。
全体のコンディションは良好なのですが、駒数ガラスだけは細かな傷と汚れが激しいですね。クラックは無いので、研磨で再使用とします。右端の吊環は材質がステンレス製へ変更されています。
シャッターユニットを組み込んでプレートを付けますが、ターミナルの半田付けは、ほぼ耐用年数を超えて剥離してきます。研磨の上、再半田付けをしてあります。このプレートですが、かなり表面処理が酸化をしていますね。亜鉛なのかクロメートなのか、時期によってさまざまですが、長期保管の個体に見られる劣化です。最後にシボ革を接着します。
ほらね。リンケージもカムも全て酸化が進んでいます。磨耗は無いので問題はありませんが。。上側のモルトを貼って、巻上げダイヤルカバーを取り付けています。
右の吊環部に僅かな打痕があるのですが、それが無ければ、ほぼ完璧な状態ですね。レンズもきれいで、殆どの個体で痛んでいる絞りリングの腐食もありません。あまり使われなかったのではないでしょうか? 最後にフィルターとフードを取付けて完成。2.8でも、最後期では、スプールはELになっているという証拠の個体。(#4279XX)フードは社外品や純正品も探せば入手出来ると思いますので製作しておりませんが、ご希望があれば少数作ることも検討しますが、必要な方はどのくらいいらっしゃるの?
続いてPEN-FT(B) #2335XXです。こちらの個体も、あまり使われなかったでしょうね。20万台のブラックは少ないと思いますが、過去に私の手元で確認した最初期のブラックは#2037XXというのがありますが、まぁ、もっと初期の個体もあるのでしょう。しかし、私は、人の通説とか、雑誌に書いてあったようなことは信用しません。自分のこの目で確かめたこと以外は書きません。
基本的に消耗していない個体ですから、特に問題はなく、したがって書くこともないですね。テンションシャフトのキズもありません。この頃すでにメインスプリングは改良型の條数の長いタイプになっています。
殆ど組み上がっていますね。#2プリズムのコーティングは劣化はありませんでしたが、接眼プリズムは両面とも劣化しいました。外気に近い部分ですから、酸化が進んだのでしょう。接眼プリズムを留めるプリズムホルダーはまだアルミ製で、この後、真鍮製に変更されます。変更の理由はなんでしょうね。強度的にはアルミでも問題はないと思いますが・・
はしょってレンズです。40mm f1.4 ですが、カメラ2台はどちらも未分解機でしたが、レンズは分解されていますね。ためらい傷がありますので、SSの作業ではないと思いますが・・状態は、絞り羽根に油が付着して作動が重くシャッタースピードが遅くなってしまうというもの。レンズはきれいですので、全体の清掃をしておきます。
内部は流化したグリスが回っており、全て洗浄脱脂をしてあります。ヘリコイドはグリスが抜け気味ですので、入れ替えをしてあります。ビスを抜いてあるビス孔部分は一度開けた形跡がありますね。ここまでは分解したということか・・
2台は完成しています。まずPEN-S(1966-9)を購入して一眼レフ機が欲しくなり2年後にPEN-FT(B) (1968-9)を購入したということではないでしょうかね。消耗が少ないことから、どちらかと言うと、撮影派と言うよりはメカ好き派という方ではなかったかと思われます。良いものを残してもらいましたね。