今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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一つ目小僧のコーワ SW 兄弟

2013年11月19日 22時54分46秒 | インポート

Img_30406422 コーワSWが2台来ています。いつ見ても変なデザインだなぁ、と思うのですが、定期的に来てくれるカメラなので嫌いではありません。当時としては珍しい28mmを搭載したカメラですね。

Img_304123 外観は悪くはありませんが、シャッター羽根が開きませんね。シャッターユニットはセイコーSLVですからシャッター羽根の張り付きが多いユニットです。その他、巻上げが固着する症状がありますが、巻上げレバー部の二重巻上げ防止機構の作動不良で、リターンスプリングが弱いのも原因です。これは、多くの個体に発生している症状です。

Img_304264 保護フィルターを掛けていなかったこともありますが、レンズは前玉に曇りやカビが発生し易いですね。

Img_304412 広角28mmレンズですので、カメラ自体の厚みも極力薄く設計されており、裏蓋は圧板の逃げを作っているほど。ファインダーも薄く作れるケブラー式としています。

Img_304694 プリズムを取り出したところ。コストが掛かっていますね。状態の悪い個体はあまり見たことがありません。清掃をしておきます。

Img_304775 では、セイコーの機械台に載せて、シャッターのオーバーホールをして行きます。

Img_304911 シャッター羽根の張り付きだけかなと思っていましたが、どうも、そうは問屋が卸してくれないようです。タイマー用のガバナーの動きが良くありません。(ピンセット先の歯車は移動します)

Img_305024 何か無理な力が掛かったのでしょうかね。分解してスムーズに作動するようにしてあります。

Img_305254 一難去ってまた一難。今度は、スローガバナーがいけません。下が組み込まれていたユニット。洗浄注油をしても、スムーズに作動せず、バネでの復帰が止まってしまいます。上が良好なユニット。こういうへそ曲がりは稀にあります。今回は、上のユニットに交換することにします。

Img_305475 完成したシャッターユニットをカメラ本体に組み込んで完成です。他にはメカは無いので、シャッターユニットを供給されれば、意外に簡単にカメラを製造出来た時代ですね。巻上げレバーは程度の良い方に交換してあります。

Img_306125 これは2台目ですよ。こちらのシャッターも羽根ががっちりと張り付いていました。各部洗浄をして、タイマー用カバナーを組んだところ。

Img_306247 で、同じ作業なので画像は省略して完成。各リング部の汚れはこちらの個体の方が汚れていて、洗浄に手間が掛かりました。調子は非常に良いと思います。

Img_306364 化粧プレートと後玉を取り付けてシャッターASSY完成。こちらの方がレンズの状態はよろしいです。

Img_306459 なになに、ブラックにリペイントだって? トップカバーのレリーズボタン座、ファインダー、アイピースなどカシメを分離しなければならないのが面倒ですねぇ。底蓋は凹んでるし・・・カバー内のホコリの混入が激しいです。巻上げ部の二重巻上げ防止機構などが非常に簡単な部品で行われていることが分かりますね。この機構で行くと、レリーズボタンを半押しで離すと、ロックが掛かってしまいます。押し込んだら最後まで押してシャッターを切ることになります。

Img_306524 オリジナルのブラックモデルは、距離リングもブラックなんですね。アルミのパールアルマイトだからねぇ・・・

Img_306625 リペイントの下準備で、トップカバーのカシメ部品3点を外します。底蓋は大きな打痕が有って、全体時にも歪が出ています。画像は凹みを修正したところ。打痕の直接の原因部分は、陥没していますので、ここまでが精一杯です。特筆すべきことは、今までリペイントをした、どのカメラよりも、メッキ厚が厚かったこと。カメラ製造に不慣れなのか、他の国産メーカーの倍程度の厚みがクローム、ニッケル共あります。これはライカより厚いメッキです。ご覧のように、使い込まれて状態の良くないボディーなのに、母材の真鍮まで到達している腐食は皆無です。

Img_306727 手は塗料とシンナーで荒れ放題だよ。では、本体側から組立をして行きます。裏蓋のロック機構ですが、動きが渋いのが多いですね。潤滑をして塗装をしたカバーを取り付けます。

Img_306862 巻上げ側の裏蓋蝶番も塗装しました。

Img_306955 オリジナルは黒アルマイト処理だと思いますけど、再アルマイトはダメージが大きいので、今回は塗装で仕上げてあります。彫刻文字の色入れをして、レバーを取り付けてからグリスを交換したヘリコイド部にドッキングです。

Img_307021 画像が増えますけど、UPしないと皆さんにニュアンスが伝わらないので続けます。シャッターメーカーから既製のシャッターを調達して、自前のボディーに搭載するためには、チャージとレリーズの連動を考えなくてはなりませんが、これが各メーカー独自に苦心しているところです。SWでも、リング状のリンケージを2つを使って対応していますが、中間に位置決め付きのスペーサーが入りますので、シャッターを本体に取付けるのは位置合わせに苦心します。この個体では、チャージのレバーが曲がっていますね。無理な巻上げをしたのでしょう。熱処理が入っていますので、修正すると折れる危険性があります。

Img_307175シャッターを搭載して連動を見ます。清掃済みのファインダーも取り付けて行きます。

Img_307564 トップカバーは色入れ、3点部品の取り付け、カウンター窓の接着をします。

Img_307624 アイピース側から。このカバーはプレスに難があって、裏側から叩いて修正をした後、梨地を打っている形跡があります。平面の中央部分が陥没傾向にあることも特徴で、少数生産なので、金型を修正せずに手修正で仕上げていたように感じます。(私の経験からの感想です) メッキ厚が厚めなことも、歪みの修正目的もあったのかも知れません。

Img_307855 このカメラは慢性的にトップカバーの巻き戻し部の落とし込みと、それを受ける本体側の勘合があっていないようで、どの個体にも軸部のは大量の高さ調整用ワッシャーが入っています。この個体では1.1mm分。それによって、トッフカバーを留めるナットのねじ山がひと山掛からない状態です。部品精度が甘いと、最後の組立で破綻が来るものです。

Img_307977 トップカバーを取り付けました。留めネジの位置はPENの流儀に似ています。留めビスが欠落していますので、PENから流用しています。

Img_308073 底蓋を取り付けました。あれだけへこみが大きかったですから、この程度で精一杯です。

Img_308124 これで完成ですね。巻き戻しダイヤルに比べて、巻上げレバーの光沢があり過ぎで、梨地の粒度の違いかメッキ厚が厚いのか? どちらにしても品質管理が出来ていないわけです。

Img_308264 上面から。

Img_308675 これでクローム、ブラックが揃いました。このカメラのホールド感が何故か慣れた感覚なのはどうしたことだろう?と考えましたら、笹の葉状のラウンドした本体、中央に段付きのデザインがPEN-F系に良く似ていると気がつきました。おまけに、巻き戻しダイヤルまで、PENと同様に中央が窪んでいます。PEN使いさん達には、違和感の無い感触のカメラですね。

.http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


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5 コメント

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トミーさん (AN)
2013-11-20 12:04:42
トミーさん
1台目のオーバーホールありがとうございます。
日々、展に向けて夜な夜な街を徘徊しております。
一つ目小僧が届いた日からは、一つ目をぶらさげて徘徊してまいります。
昨日はペンF,FTをぶらさげて徘徊しておりました。
10年以上前になりますが、ペンだけで撮影した個展を開催した事があります。その時の感想雑記帳に35mmフルサイズで撮った画像と見分けがつかないとのお声を多数頂いた事を思い出します。今回はハーフとフルの二種類での展になろうかと思います。好きな個体で撮る写真と取りあえずの個体で撮る写真は思い入れが違うのもありますが、写真のクオリティまで違う気がします。トミーさんのカメラに対する想いも作画に是非生かせたいと思ってます。最後にもう一台の小僧もよろしく御願いいたします。

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ANさん。 (TOMY)
2013-11-20 22:53:21
ANさん。

おぉ、個展に向けての作品作りでご使用とは責任重大ですね。
カメラとしてはセイコーSLVが主なメカですが、カメラ本体のチャージ機構と連動させる設計に苦心があって、簡単な設計の二重巻上げ防止機構の作動も信頼性に疑問がありますから、そちらの方が心配があります。2台目ですけど、それに就いてはメール致します。
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TOMY先生お手数をお掛けしてます。 (AN)
2013-11-24 10:49:03
TOMY先生お手数をお掛けしてます。
ここまで手のかかる一つ目小僧とは正直思っておりませんでした。
小僧の親として責任を感じております。
手の掛かった分だけの写真は残すために、小僧兄弟が帰ってきましたら教育し直しますのでよろしくお願いします。
小僧を使おうと引っ張りだした理由は歳と仕事の性で目が悪くなり、距離計付き個体でピントの甘い写真を量産した事がきっかけでした。展も迫る折、ペンF以外ではレチナ、イコンタ35の距離計無しで凌いでおりましたが広角の必要性もあり小僧兄弟と考えた次第です。ペンFも20mmを付けるとファィンダーが暗くて最近は標準ばかりになりました。
因にM型も最近では重く感じて持ち出せません。
TOMY先生もてが荒れておられるとの事、博多名物を送りましたのでご勘弁くださいませ。
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追伸 (AN)
2013-11-24 10:52:18
追伸
小僧の性でTOMY先生手が荒れておられるとの事、博多名物を送りましたのでご勘弁くださいませ。
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はい、このカメラのホールド感は何故かPEN-F系に似... (TOMY)
2013-11-24 20:32:58
はい、このカメラのホールド感は何故かPEN-F系に似ていますね。私も最近裸眼でのファインダーがきびしくなって来ましたが、28mm搭載ですから距離3m絞り8にセットしておけば、殆どピントが合いますから、私たちには有り難いですね。
手が荒れるのは仕事ですから問題ありません。1台のカメラをリペイントする場合は、細かな部分をしっかりと処置しておかなければなりませんので、ブログに書かないことも沢山あります。まぁ、簡単な作業ではないことをご理解頂けれは幸いです。
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