今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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生き延びた初期型PEN-Fの巻

2019年07月16日 19時52分43秒 | ブログ

初期生産分のPEN-Fですねぇ。この個体#1084XXは1963年10月の製造ですが、1.8付PEN-Fの生産開始は1963年9月となっていますので、生産開始翌月の、まだまだ安定していない混乱期の製造となりますね。マウントのレンズ合マークは初期型以降のではなくΙとなっているのが特徴です。

 

ファインダーに腐食のようなものがありますね。接眼枠は破損のため交換をご希望です。

 

 

腐食は全反射ミラーではなく、接眼プリズムでした。これは修正は出来ません。

 

 

スプロケットはアルマイト地でスプールはグレーが初期の仕様です。フィルムレールなどは製造時期を考慮するときれいだと思います。

 

 

年代相応で汚れが積もっていますね。

 

 

この個体は未分解機でした。巻き上げが重いですが、初期型としては低速も正常に作動はています。

 

 

裏蓋内側にはカビが発生していますね。まずは、すべて分解洗浄をして部品の点検をして行きます。

 

 

昨日はスローガバナーに問題が発生して(初期型は弱い)久しぶりに夜中の1時過ぎまでやっていまして昨日分のUPが出来ませんでした。本体の裏蓋モルトを剥がして洗浄しましたが、のレール部分には最初からモルトが貼られていませんでした。極初期には貼っていなかったようです。

 

組み立てて行きますが、スプロケットとスプロケット軸の嵌合がきつくて入りません。どうも両方の設計公差内で大きいものと小さいものが組み合わされたようです。たぶん公差を変更したはずです。

 

スプール軸も組み立てて行きます。

 

 

この頃は嵌合寸法が安定しないようで、巻上げレバー軸にも薄いシムワッシャーを入れて微調整をしています。

 

 

初期型の特徴でもありますピカピカ光ったチタン幕。補強と肉抜き目的の外周のリプ(段付き)もありません。

 

 

初期型では珍しくブレーキは利いています。ただし、分解洗浄をして再組立をすると利かなくなるでしょうね(笑)。オーナーさんとご連絡が取れませんので、Oリングは交換せずこのままとします。ご自身のカメラがUPされている時は作業指示の確認をお願いすることがありますのでメールチェックを怠らないようにお願いします。

 

プリズムを保持するスプリングがありませんね。この後すぐにスプリングが追加されて、FTの中期まで継続されてその後廃止されたという、最初からいらなかったんじゃないの?

 

ここからが問題だわさ。シャッターテストをすると、どうもスピードが不安定になる。FやFTでもスローガバナーが弱いカメラですが、特に初期の#12型ユニットは安定しないものが多いです。夜遅くまで原因を探りましたが目が見えなくなってやめました。で、翌朝、分解をして点検していくと・・あら~、一番車の歯が1枚欠けていました。これではスムーズに動くはずがありません。教訓、年寄りは夜中の作業をしないこと。

分かりますかね。小歯車の歯が欠けています。ここは、ハンマーからの力を強く受ける歯車で強度が足りないのです。

 

 

で、初期型の#12型ユニットの良品は探せばあるのですが時間が掛かるので、このユニットを直すことにします。左は#14型の一番車ですが、微妙に違うのが分かりますか? 歯が厚くて横から見るとベベルギヤのように長く伸びています。少しでも強度を上げたい強化対策の変更でしょう。一番車だけ交換したのでは動きませんので、関連をセットで交換します。

 

私は時計もやっていますので問題ありませんが、カメラ用のピンセットでは細かなバネの組立は困難です。

 

 

初期の#12型と以後の#14型で大きく異なる点はアンクルの制御方式で後継互換がありません。その他、初期のユニットの歯車は加工精度が良くないと感じます。FTの後期などは加工も良くなり摩耗対策のための材質処理も変更されていると思います。

 

 欠けていた接眼枠は新品に交換してあります。因みにFTとはトップカバーとの嵌合方法と留めネジの位置が異なっていますので同一部品ではありません。真鍮のプリズム押えも初期は違います。リード線を保持するように折り曲げがありますが、その後はテープ留めとなって折り曲げがないタイプになります。カギバネの位置出しはカギ板部のプレスになっていますが、流石にこれでは組立時にバネが動いてしまうので、その後カギ柱というダボが接着されます。

 

 

で、やっとここまで組んだと思ったのですが、シャッターテストをすると稀に秒時をコントロールできない不具合が発生しました。初期のFに良く見られる不具合ですが、ユニットの信頼性が落ちていて、調整では改善出来ないのです。設計者の米谷さんからも「不良ユニットは直せないからスペアユニットを用意しておくこと」とお聞きしました。

カビが発生していた裏蓋は清掃できれいになっています。初期の個体は圧板の取付がそれ以後と上下逆になっています。

 

結局のところ、このような極初期型の個体を本気で動かそうとすることが間違いなのかと思わされるほど不安定なところがあります。改良される前の信頼性に劣るユニットが摩耗をしている状態ですので余計です。あとは付属の38mmを清掃します。

 

1964年制作のPEN-F取説ですから、この個体より少し後のものでしょうけど、中々凝った作りですね。使われている画像は当然初期型ですけど、良く見ると圧板の取付はこの個体とは逆の殆どの個体と同じ向きになっています。しかし、三光PENなども含めて、初期の製品はこの個体と同じ向きで組まれているものは確実にあります。(未分解と思われる個体からの推測)どちらでも同じと組立工の気まぐれだったりして・・そんなわけはありませんが。

わぁ、私が子供の頃に近所の優しいおねえさんもこんな雰囲気の人でした。60年代の九重佑三子さんが人気だった頃のペチコートのふわっとしたスカート履いてね。アメリカの風俗の影響が強かった時代。オートバイの後ろに乗る時は、スカートですから横乗りでした。今考えると怖くなかったですかね。で、形見と言うことで、本来はオブジェとなっていたカメラを無理に現役復帰させたような作業になってしまいました。初期型は設計・製作が熟成していない時期ですし古くて部品の消耗劣化も進んでいますから、安定した作動をさせるのは難しいところがありますね。かと言って、改良ユニットが使われた後期型ばかり残せば良いとも思っていません。生産全域の個体をまんべんなく残していきたいと思います。但し、同じO/H工賃ではチトきびしいかな・・

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