最近のPENファンの方は若い方も多くなっているようですけど、年々カメラの状態が悪くなっているので気の毒だなぁと思うこともありますね。このPEN-W #1009XXは1964年9月の製造。そう、東京オリンピック開催の前月という記念すべきカメラですけど、「撮影しようとバックから取り出したらレンズが外れていた」とのこと。オークション購入機とのことで、かなり使い込まれた個体で分解も受けていますので、組み方が甘かったのでしょうね。しかし、抜けるまで緩んでいたわけですから、撮影はピンボケだったのでは? ワイドだから意外に大丈夫だったのかな??点検の結果、絞り羽根が変形していて正常に作動しない状態。絞り羽根は前玉(ホルダー)で押さえている構造のため、押さえが無くなると絞り羽根があらぬ動きをして痛めてしまうのです。これは交換する以外にありません。
使い込まれているのは仕方のないことですが、この組立はイヤだなぁ。正確に組もうという心が無いですね。
何か手にベトベト着くと思いましたら、本体側のモルトです。オリジナルの劣化したモルトを清掃しない状態で、上から両面テープ付のモルトを貼ったものですから、テープが劣化をしてベトベトになり位置もずれています。ここは、接着でないと耐ちません。
手間は掛かっても、すべてきれいに清掃することが修理やレストアの基本です。
本体底部も劣化したモルトで侵されています。
シャッターは開きっぱなし。低速は使っていなかったのでしょう。
地板の摩耗はそれほどでもありません。洗浄をして組み立てて行きます。このシャッターは、ピンセット先のバネ1本だけで動いてるのです。ですから、メンテナンスをされずにフリクションが大きくなったシャッターは止まってしまうのです。
まぁ、なんやかんやシャッターは快調になりました。ファインダーの分解清掃も完了。では、例の絞り羽根・・
6枚の絞り羽根。両端にプレスで孔が開いていますが、打ち抜いているのではなくめくられているように加工されています。それがガイドに嵌っていて開閉の動きをするわけです。しかし、レンズが緩んだ状態で長期間作動させたために、「めくれ」の部分が無くなっちゃたんですね。それで正規の動きをしなくなっています。
不良の絞り羽根を交換して組みます。しかし、工場ではどのようにして組んでいたものか、「あちらを入れるとこちらが外れる」の繰り返しで簡単には嵌ってくれません。特に目の調子が悪い時は行いたくない作業です。
PEN-S系と違ってPEN-Wの場合、絞りクリックの方式が異なります。板バネによるクリック式。接点が摩耗しやすく、摩耗をするとクリック感が乏しくなるという欠点があります。モリブデングリスを塗布して組みます。
リングナットは再び緩むことの無いようにネジロックを塗布しておきます。
まぁ、撮影をしようとしてレンズが外れて来たらびっくりしますよね。外観の塗装は、かなり使い込まれた状態ですが、シャッター、レンズは良好な個体です。また頑張ってくれるでしょう。