今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-S 2.8後期型の巻

2016年10月25日 17時05分50秒 | ブログ

何故かPEN-S系が続きますね。コンパクトペンの良さが見直されているようです。この個体はPEN-S 2.8 #4233XXと1966-6月製の個体です。すでに1965-1月からPEN-S 3.5が発売されいますので併売の時期になりますね。45万台の個体も確認していますが、最後期の製造個体になります。

生産が新しい(と言っても古いですが)ため、外観やレンズの状態はきれいです。大径のレンズキャップを装着するために、フィルターを素通しで取り付けいます。アイディアですね。

スプールは3.5と同様にEL(イージーローディング)タイプが使われています。(ナットも樹脂製)これはオリジナルで改造ではありません。

 

中古屋さんで購入直後とのことで、普通に使うのには問題は無いのですが、ファインダーのフレーム枠の倒れのお訴えがありました。PEN系の場合、ファインダーはトップカバー側に付いているため、本体が完成した後でトップカバーとドッキングするため、どうしてもカメラ本体に対してのフレーム枠の(垂直)精度は悪いのですね、私の実感としては殆どの個体はフレーム枠が曲がって(倒れて)います。また、このファインダーは接眼を覗く人の瞳の位置によっても倒れが変化するので調整は難儀します。これは、各ミラーの取付角度がアバウトなせいもありますね。

で、普通、倒れの大きな場合は、フレーム枠(ガラス)が脱落して、それを再接着をしてある(PENに多い)ケースがありますが、今回の場合はフレーム枠は剥離した形跡がありません。ということは・・あっこれだ。ハーフミラーが再接着をされていまして、ミラーが本体の接着面に対して垂直に貼られていないためです。

過去にファインダーの清掃のために前面ガラスと対物レンズを分離して、再接着をされていましたが、粘度の低い接着剤を使われたため、隙間の奥に接着剤が流れてしまい分離に苦労しました。無理をすると簡単に割れてしまいます。しかし、前面ガラスは分離困難のため(支障がない)そのままとしました。私はエポキシ接着剤が硬化を始めた時に接着をします。そうすれば次回の清掃の時に容易に分離することが出来るからです。自分の時だけよければ良いという修理はダメです。ハーフミラーを分離して接着面を観察します。古い接着剤が残った上に密着させずに貼ってありました。古い接着剤をすべて削り落とします。目に見えない地道な作業をするかしないかということです。

さて、洗浄をして組み立てていきます。巻上げ機構のリンケージはユニクロメッキのため劣化が激しいです。

 

シャツターユニットは未分解でした。最後期なので正常に作動をしていたのでしょう。ただし、スローガバナーは作動不良でした。

 

シャッター羽根の状態は赤錆の発生も無く良好です。

 

 

これ、多いのですが、シャッターユニットを分離する時、シンクロターミナルの半田付けが取れます。

 

カム板を取り付けていきます。

 

 

結局、フレーム枠には手を付けず、ハーフミラーのみで調整をしました。元々、諏訪の内職屋さんで作られたようなアバウトなファインダーなので、あまり精度を要求されても厳しいところはあります。

 

後玉のコーティングが劣化し易いのですが、非常に状態は良いです。清掃をして組み立てます。ヘリコイドグリスは抜け気味ですので、すべて洗浄のうえ、新しいグリスを塗布します。

 

この頃は、明らかにプレスの金型が更新されています。巻き戻し部の落とし込みが非常にシャープになっています。

 

それが災いしてか、本体側と合わないのです。そのまま本体に取り付けると巻き上げダイヤルとカバーが接触します。そこで、シュー下の取付け部にワッシャーが入っています。これは、前回のPEN-S3.5もすべて同じです。これによってもファインダーの精度に影響があるのです。

まぁ、そうは言っても製造が新しい分、状態の良い個体でしたね。

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