すみません。風邪が回復せず、作業は低調です。数日前にも、スキャナーが故障したのを切っ掛けにPENを止めるのでジャンクの買取をご希望の方がありました。フィルム事情の悪化に伴って、修理のご依頼も減少を続けているのが現状ですが、みなさん頑張りましょう。そこで、こちらのPEN-F #1040XXのオーナーさんは、歴史的に貴重な最初期型のPEN-Fを完全な形で残しておきたい。と、おっしゃってくださいました。頭の下がる思いです。PEN-Fの発売は1963-9月ということですが、この個体の生産も同じ月になります。まさしく生産開始の初ロットという個体でしょう。最初期型ゆえの特徴も有しています。状態は、分解マニアさんが修理をしながら使われて来た個体とのことで、作動はしますがコンディションは良くありません。オーナーさんのご指摘は、シャッター幕がオリジナルではないのではないか? なるほど、初期のシャッター幕は光沢が強い(エッチングの違い)ですが、この個体は中期以降の艶消しの強いタイプになっていますね。ほぼ同時期のジャンク機が付いていますので、オリジナル重視で仕上げたいと思います。
まず、怪しいシャッター幕を検証します。地板とシャッターユニットの接合部を見ると分解された形跡はない? う~ん、変ですね。あっこれだ。シャッター幕の回転軸のネジが外されているのが分かりますか? ここは、幕をネジで固定の上、裏側を緩み防止のためにカシメ加工が施されているのです。分解してはいけないということ。
裏側です。ネジを強引に緩めれば、ネジの強大な力によってカシメしろは矯正されてしまうのです。このままでは必ず緩んでしまいます。
左側が今回の#1040XXで右側は#1043XXです。よ~く見比べてくださいよ。テンションシャフト下のコントロール部とそれに続くスローガバナーの1/4以下のコントロール系が全然違いますね。左のガバナーは、非常に調整がしにくいと言うか、作動が確実でないのです。そこですぐに諦めて根本的に再設計をされたようです。
違いは色々あるのですが、ダイカスト本体にもありますね。底部のフレームに切り欠きがあるのが改良型の#1043XXで、今回仕上げる#1040XXは下の切り欠きの無いタイプ。なんで変更されたか? 設計変更されたシャッターユニットですと切り欠きが無ければ取り出しが知恵の輪になっちゃうのです。
汚れを洗浄したシャッターユニットのストリップ。え~、これだけなの? と思われるでしょう。これだけなの。ブレーキは機能していませんので、新しいOリングと交換してシャッターユニットを仕上げました。(画像忘れました)
正規の光沢のあるシャッター幕とブレーキのOリングを交換して完成したシャッターユニットを搭載して、巻上げレバー関係を組み立てます。爪バネは初期のしばらくは画像の板バネタイプです。以後はコイルスプリングになります。
スローガバナーにはギヤの摩耗があって、スローが安定しない傾向がありますが、これはジャンク機はすでに異なるので使えないのです。何度も調整をしてまぁまぁとしています。パーツリストには2種類のスローガバナーが載っていますが、この個体は右の#12のタイプです。
失敗したぁ。デジカメにメディアを入れずに撮影していました。よって画像がありません。やっぱり風邪でボケてるわぁ。。下が今回仕上げた#1040XXで、上が#1043XX。僅かの間に違いがありますね。まず、スプロケットの表面処理(色)が変わっています。圧板左のリベットが#1043XXでは無くなっています。圧板の腐食は研磨をしてありますが、圧板の取付けが通常の仕様と天地が逆になっています。2台とも同じですので、再初期はこのように組まれたものと思います。(他の初期型でも確認しています)
マウントのレンズ取付け赤●が外周スリットになっていますね。前面からの視認性が良くないので、すぐに変更されたようです。尚、№2プリズムや接眼プリズムなどは、後年の個体のものと交換されていると思います。
あっ画像サイズ間違えた。付属の38mmは、工場からセットで出たのでしょうね。放置期間が長く、レンズはカビ放題、グリス抜け、プレビューボタン固着などがあります。出来るだけ清掃とグリス交換をします。
左はFT用の38mm。レンズ着脱ボタンの表示が異なりますね。
ご希望通りにシャッター幕はピカピカ光沢の初期型になっていますね。
資料的に貴重な最初期型のPEN-Fが完成しました。ファインダーのピントがかなり後ピンでしたので、結局のところリターンミラー含めて、光学系は殆ど交換されていたようです。今回、全反射ミラーも交換としましたので、PEN-Fとしては、ピントの山が掴みやすい良好なファインダーと快調なシャッターとなりました。