tomitaikyoブログ

富退教(富山県退職教職員協議会)事務局からの情報発信です。会員の親睦を中心に教育現場への支援など様々な活動をしています。

「第23回五者合同学習会」報告 3

2016年10月20日 | 日記

 報告2の続きです。・・・講師の山内敏弘氏の講演は資料がたくさんあり、最後は用意された資料の説明が省略されてしまいましたが、せっかくの資料でしたから、資料の後半部分を要約してみます。

 Ⅳ 「本丸改憲」としての9条改憲論

(1)自民党改憲草案の内容・・・草案の9条1~3項について記載あり。

(2)自民党改憲草案の特徴と問題点・・・次の①~⑤点で

①   「国防軍」の創設・・・「自衛軍」ではなく、「国防軍」としている点は、現在の自衛隊以上の本格的な軍隊にしようとしている。

②   集団的自衛権の全面的な認知・・・戦争法(安保関連法案)では、「存立危機事態」における集団的自衛権の行使を認めていたが、改憲草案では限定は取り払われて、全面的な(フルスペックの)集団的自衛権の行使が容認されている。「専守防衛」や「海外派兵禁止」などの原則も取り払われている。

③   軍事裁判所(軍法会議)の設置・・・3点の事項あり。そのうちの1点では、「軍事機密」が認知されて、それが軍法会議で審判されることになるということは、表現の自由に対する重大な制限をもたらすことになる。

④   平和的生存権の抹殺と国民の国防責務の導入・・・2点あり。そのうち1点では、平和的生存権は日本国憲法の平和主義の普遍性と先進性を示すもの。国際社会でも評価されているものであり、改憲草案は、それを抹殺して、その代わりに国民の国防の責務を導入しようとしている。

⑤   民主的統制の欠如・・・戦争や軍事力行使の決定権をいかなる国家機関がもつかについての規定がないのは驚くべき問題である。アメリカやドイツでは、議会が戦争権限をもつことを憲法上明記していることと著しい対照をなしている。

(3)自衛隊の存在を憲法で明記するための9条改憲論

例えば、公明党や民進党の前原氏の9条加憲論は、1・2項をそのままにして、3項を設けて自衛隊の存在を明記するべきという考えでもあるようにみえる。自民党の9条改憲論とは異なっているようにみえるが、しかし、賛成することはできないと思われる。それは、第1に9条の非軍事的平和主義の理念やアジアに対する「不戦の誓い」としての9条の意義が半減するということ、第2に、現行の2項と新たに加えられる3項との関係をどう理解するかで様々な混乱が生じるということであろうということ、さらに第3には、現在でも「専守防衛」の枠が取り払われているのに、その枠は完全になきがごとくものになるであろうということである。※この他にも加藤典洋氏の「新9条論」の紹介と不要論が載っていましたが省略します。

 Ⅴ 憲法9条の意義と課題

(1)最近の世論調査の動向・・・9条の改憲に反対の意見が改憲賛成の意見よりも多数を占めている。国民の危機意識の反映であろう。

(2)「死没者の遺言」としての9条・・・9条は310万人の日本国民と2000万人のアジアの人々の犠牲の上に制定されたものである。

(3)世界への「不戦の誓い」としての9条・・・アジア諸国をはじめ世界の人々への「不戦の誓い」としての意義をもっている。紛争地域でも日本人が好意的に受け止められてきたのは、この9条の存在(「9条ブランド」)が大きく寄与している。

(4)戦後70年間の平和に最大の貢献をしてきた9条・・・日本が戦後まがりなりにも平和を維持してきたことについて、日米安保があったからという意見も少なくないが、9条がなかったならば、日本は、日米安保の下で、アメリカの要請に従って、ベトナム、イラク、アフガニスタン、そしてシリアなどへ派兵して多数の戦死者を出してきたに違いない。

(5)「自由の下支え」としての9条・・・9条は戦後日本社会において「自由の下支え」(樋口陽一)としての意味をもってきた。9条が危うくなると市民的自由も危うくなる。cf.特定秘密保護法の制定・改憲草案での「公益及び公の秩序」の名の下に自由の制限あり?

(6)「大砲よりバターを」の指針としての9条・・・戦後日本の経済発展は、9条の下での防衛支出が低く抑えられてきたことに大きく依拠している。歴史的意義の再確認と、日本やアメリカで格差社会が深刻になっている今こそ「大砲よりバターを」の政策が重要である。

(7)9条を生かすための平和政策・・・①「核のない世界」に向けて→日本が率先して積極的な外交努力を行うべき ②中国との友好関係の促進→日中平和友好条約で相互の関係においてすべての紛争を平和的手段により解決することなどを確認している。cf..尖閣諸島の問題も同様 ③テロ対策についての対応→「暴力の連鎖」を断ち切る努力が必要。いたずらに、「有志連合」に軍事的に加担することは、「9条ブランド」を喪失して、かえってテロの標的になりかねない。cf.多数存在する原発はテロの標的になりやすい?

(8)日米安保条約と自衛隊をどうするか・・・9条の改憲に反対の世論の中の少なからざる人達は、同時に自衛隊と日米安保条約を肯定しているようにみえる。この世論動向を踏まえると段階的な異変・縮小が今後の課題か?①沖縄の基地問題や地位協定の問題が当面の課題、そして将来的には日米安保条約を日米平和友好条約へと改変を検討したい。 ②自衛隊については、国内外に災害派遣に大きな役割を果たしてきた。昨年の安保法制(戦争法制)の制定により、自衛隊は世界のどこにでも出動できる軍事組織へと改変された。「専守防衛」の方針をかなぐり捨てた。まずは、「戦争法制」を廃止し、専守防衛に徹するようにすることが当面の課題。※軍縮の運動を作るために日本が先頭に立つべき。

Ⅵ 結びに代えて

 今秋から始まる改憲への動きに対して、護憲運動はどう対処していくことが必要なのか。※一昨日(10/18)のニュースで憲法審査会での議論をはじめると報じていました。私たちは今後に、憲法審査会の改憲の議論がなんら正当な根拠のないものであることや、憲法審査会の役割は日本国憲法を如何に活かすかを議論することであると明らかにしていきたい。(中略) 来たるべき衆議院選挙では、改憲勢力がまた2/3以上の議席を確保しないように、改憲反対勢力がむしろ2/3以上を確保するように運動していきたいものである。改憲阻止のためには是非必要であろう。

  以上のように、講演で説明されなかった後半の資料だけでも大変長い資料部分でしたが、1/3程度に要約してみました。講師の山内敏弘氏の熱意を受け止めて、今後とも平和運動は諦めないで続けていきたいと改めて思います。(土)