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今日の筆洗

2022年07月25日 | Weblog
『西遊記』の孫悟空が天界から追放されたきっかけは「桃」だった。孫悟空の天界での仕事は蟠桃(ばんとう)と呼ばれる桃の管理人。この桃には不思議な力があり、三千年に一度だけ熟すものを食べれば仙人になれる。六千年に一度だけ熟すものなら空を飛べ、長生不老の身となれる▼桃管理人の悟空さん、まじめに働いていればよかったが、この桃を勝手に食べるわ、「蟠桃勝会」なる桃の宴会に招待されなかったと腹を立てて大暴れするわ、とやりたい放題。天界の怒りを買い、結局、釈迦如来(しゃかにょらい)によって五行山に五百年にわたって、閉じ込められる▼その桃に長生不老の不思議な力はなかろうが、不届き者に勝手に持ち去られてはたまるまい。桃の名産地山梨県。高級品種「日川白鳳」「みさか白鳳」などの桃が大量に盗まれる事件が相次いでいる▼収穫前に畑に侵入し、まだ青い実をもいでいってしまうらしい。暑い日に寒い夜。丹精込めて育てた桃が持ち去られる。生産者にとってはわが子を連れ去られたも同じだろう。許し難い▼同県では桃に続いて今度は高級スモモの盗難被害も報告されているそうだ。季節に応じて狙いを定めているのか、どこまでも人を食った盗人である▼農家を泣かせる一味が悟空のように退治されることを願おう。桃の香りが漂う平和な「桃源郷」が盗みによって、「桃減郷」となってはしゃれにもなるまい。