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今日の筆洗

2022年07月02日 | Weblog
中国を専門とする記者や研究者らは長く、香港発の中国報道を「香港情報」と呼び、関心を寄せた▼数ある香港の新聞はスタンドや歩道上で売られたが、裏付けの甘い眉唾ものの記事から正確なスクープまで玉石混交が特徴。英国統治時代から報道の自由を謳歌(おうか)したメディアは人脈を駆使して北京の内情にも迫り、統制下の中国メディアが書けないことを書いた▼研究者の故中嶋嶺雄氏は一九六〇年代に中国で始まった政治闘争・文化大革命をめぐって、指導者の毛沢東の動向をつかんで日本の新聞や雑誌で明らかにしたが、香港で関係者から入手した情報に助けられたという。著書『香港 移りゆく都市国家』で知った▼香港が中国に返還されてきのうで二十五年。北京の政府は香港の高度な自治は「五十年不変」と約束し、報道の自由も保障されたはずだが、近年の報道締め付けで当局批判を辞さぬ新聞は廃刊に。「香港メディアの魅力はなくなった」と中国通の同僚は言う▼中嶋氏の先の著書は、中英両国が返還で合意して間もない八五年の発行。返還後の香港の姿に関し「中国がこれからどのような国になっていくのか、という大きな歴史的課題と不可分」と書いていた▼屈指の大国としての地歩を固めながら、権威をもって民を治めることを躊躇(ちゅうちょ)しない巨龍。街角に「玉」も「石」も並んだ日々は、もう戻ってこないのか。