東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2022年07月11日 | Weblog

十六代米大統領のリンカーンがひげを生やしたのは、一八六〇年の大統領選挙の直前だそうだ。十一歳の少女がリンカーンに手紙で助言した。「ひげを生やせば、やせた顔が立派に見えます。そうすれば大統領になれます」。ひげを生やしたリンカーンは当選した▼ひげはともかく、人柄が有権者にどう映るか。それが選挙戦に大きな影響を与えることは間違いない。自民党を率いる岸田首相は国民にどう映ったか。昨日投開票の参院選は自民党が勝利を収めた▼ウクライナ情勢や経済運営などかじ取りの難しい時代にあって有権者は自民党主導の政治を今変えることには慎重になったか。安倍元首相が撃たれ、亡くなるという出来事も自民党への同情を誘ったかもしれぬ▼大胆に勝因を分析すれば岸田さんのイメージも大きかろう。この人には立派に見えるひげはない。あくまで印象の話だが、決断力があるようにも見えず、失礼ながらどこかおどおどしている印象すらある▼それが魅力的に映る。この人なら、強引なことも独善的な判断もしまい、武張った自民党をなだめてくれるかもと思わせるところがある。優柔不断のその顔に奇妙な安心感を覚えるとは言い過ぎか▼「聞く力」を掲げる首相だが、少女の手紙をまねるなら生やしてほしいのは国民の意見を聞く感度の高い「耳」である。独断のひげでもいかめしい眉でもない。