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今日の筆洗

2022年07月21日 | Weblog
青森・上野間の「寝台特急ゆうづる」と書いて「オッ」と反応してくれるのは鉄道ファンばかりではなく、相撲ファンもだろう▼「出世列車」。すでに廃止となっている、この夜行列車をそう呼びたくなるのは一九六八(昭和四十三)年六月の同じ日、同じ青森から同じ夜行列車で上京した若者二人のいずれもがその後、横綱昇進を果たしたことによる▼一人は二〇一一年に亡くなった、第五十九代横綱の隆の里。夜行列車のもう一人の「少年」が亡くなった。第五十六代横綱二代目若乃花。六十九歳とは早すぎるだろう▼『大相撲と鉄道』(木村銀治郎さん・交通新聞社新書)によると、青森駅を出たのは二十一時十五分。こんな逸話が残る。二人の若者を連れた当時の二子山親方(初代若乃花)は夜汽車の中で一睡もしなかったそうだ。「特急が停車するたびに逃げられるのが心配で監視していた」▼幕内優勝は四回と微妙な数字かもしれぬが、優勝回数以上に心に残る力士だった。横綱昇進前の若三杉のしこ名の方が思い出深いというファンもいるだろう。同じニッパチ(昭和二十八年生まれ)組の北の湖の「剛」に対し「柔」と「技」で挑んだ数々の名勝負。様子のよい人気の横綱でもあった▼けがや病に悩まされた現役時代だった。苦しみながらも重ねた稽古をレールにして走った相撲人生を思う。汽笛が聞こえた気がした。