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今日の筆洗

2022年07月01日 | Weblog
炎昼(えんちゅう)は、夏の炎天の昼間を表す語。太陽に灼(や)かれて、人の往来もまばらになった都会の舗装道路などが想像される。<炎昼のおのれの影に子をかくす>日下部宵三▼『大歳時記』によると、山口誓子(一九〇一〜九四年)が、一九三八年に出した第三句集を『炎昼』と名付けて以来、季語として定着したようだが、この句集の中には炎昼を用いた句はないという。ただ、夏の灼熱(しゃくねつ)を蜥蜴(とかげ)を題材に表現している。<灼くる地に蜥蜴はおのれ出(で)て灼くる>▼灼かれるような暑さが続いている。首都圏や東海ではきのう各地で気温が四〇度に迫った。東京都心は三六・四度に達し、六月としては過去最高という▼熱中症で搬送される人が各地で相次いでいるが、きょうはさらに暑くなるようだ。名古屋の最高気温は四〇度との予報を昨夜のニュースが伝えていた▼誓子には周遊記『四季吟行』があり、吉野などを訪れた際の紀行文に「暑さを消すことはできないが、暑さから逃げることはできる」と書いている。神社で修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)の木像に見入り、伝説にあるようにそれが自在に空を飛ぶさまを思い描けば、その間だけは「暑さから逃げていられるように思われた」という▼空中遊泳の想像による避暑は、俳壇の巨匠ゆえできたことか。まねてみるかはともかく、大事なことはまず、炎昼の戸外になるべく出ないことだろう。