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今日の筆洗

2020年12月22日 | Weblog

 古典落語に登場する地方出身者はあまり、格好良く描かれない▼「百川(ももかわ)」の百兵衛はなまりがきつく、何を言っているのか分からぬ。「蒟蒻(こんにゃく)問答」の権助(ごんすけ)は親切だが、どこか間が抜けている。「化け物使い」の杢助(もくすけ)は化け物を異常に恐れる▼「神田の生まれよ」と江戸生まれを自慢した、かつての江戸っ子たちはどこかで地方出身者を下に見ていたか。そういう世界で地方出身を誇り、売った方である。落語家の林家こん平さんが亡くなった。七十七歳。出身はキャッチフレーズでどなたもご存じ、新潟県刈羽郡千谷沢村(現・長岡市)の「チャーザー村」である▼出囃子(でばやし)も新潟の「佐渡おけさ」。「チャラーン」のギャグも、元はその唄からと聞く。噺家(はなしか)は江戸弁でなければという当時の空気の中、くやしさをこらえ、あえて田舎者を強調し「チャラーン」と口にしていたそうだ▼地方出身の引け目にも、精進と辛抱で人気者の座をつかんだ。古典落語ならば、越後からわずかな銭を元手に身を起こし、大店(おおだな)の主(あるじ)となる「鼠穴(ねずみあな)」の主人公を思い出す。土性っ骨の人だったのだろう▼声は大きく、明るい芸風。弟子の林家たい平さんが語っている。うそかまことか、本来はしんみりと演じるべき人情噺の「芝浜」のサゲをこう教えたそうである。「ああー、よそうっ! またぁあ夢になるといけなあああいいいい!」。聴きたかった落語 

 芝浜なかった。

「おしゃべり専門」 林家こん平