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今日の筆洗

2020年12月27日 | Weblog

 オランダの風車は言葉を話すそうだ。戦争中、ある地域では風車の言葉がドイツ軍の行動を無線より早く住民に伝えた。無論、人間の言葉ではない。風車の羽根の位置によって「言葉」を伝える▼風車の羽根は反時計回りに回転する。例えば、羽根が頂点に差しかかる直前の位置で止まっていた場合、それは未来や希望、喜びを表す。逆に羽根が頂点を過ぎていたら過去や悲しみの意味だそうだ。気候学者吉野正敏さんの『風の世界』(東京大学出版会)に教わった▼日本のこの風車。羽根が未来の希望を示す位置にあることを願いたい。二〇五〇年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府の「グリーン成長戦略」。洋上風力発電を脱炭素化の主軸に位置付けた▼「いなさ」「ならい」「はえ」「東風(こち)」。日本には約二千の風の名があるそうだ。風に恵まれた環境ながら、日本のこの分野での取り組みは、EUなどに比べ、遅れていた。やっと風をつかまえたか。脱炭素化に向け、風穴をあけたい▼三〇年までに発電容量を一千万キロワット、四〇年までに最大四千五百万キロワットまで増やすという。原発四十五基分に相当する。野心的な目標である▼達成までの道程は順風満帆とはいくまい。技術開発の難しさ、沿岸漁業者との交渉など厳しい向かい風もあるだろう。国全体で強い追い風をおこし、安全でクリーンな風のエネルギーを集めたい。