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今日の筆洗

2020年12月06日 | Weblog
 ある政治家が演説のコツについて書いている。大切なのは語り手の「まなざし」らしい▼どんなに大きな会場でも、小さな会合でも出席者すべての人間を個々にながめるよう努力するのだという。そうすることで人をひきつけ、自分もまた人からエネルギーをもらえるそうだ▼伝えたかったのは演説のコツではなく、政治家としてのコツかもしれない。群衆全体ではなく、ひとりひとりの顔を強く意識し、語りかける。書いているのは先日亡くなった、元フランス大統領のバレリー・ジスカールデスタンさんである。九十四歳▼現在のサミットにつながる先進国首脳会議を提唱したほか、欧州統合への下地づくりなど外交上の成果を残した。国内においては、女性の権利向上に取り組み、女性閣僚を積極的に起用した大統領でもある▼さて演説などで個々の顔を見るように努力した結果、その人にどんな効果があったか。恋に落ちたそうである。「七年間の大統領在任中、私はすべてのフランス女性に恋していた」。お国柄もあろうが、ここまで言い切れる政治家はいないだろう▼どこかの国の首相の記者会見を見た。うつむきがちなこの人の「まなざし」はだいたい手元の原稿用紙に向けられている。それを読み上げるばかりで、質問には正面から答えようとしない。見ている方は恋はおろか、大切に思われている気もあまりしない。