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今日の筆洗

2020年12月20日 | Weblog

「冬の春」という耳慣れぬ季語がある。今の人がそう聞いて連想するのは冬の季節にたまたま訪れた春のように暖かく穏やかな日か▼ちょっと違う。「冬の春」とは「年内立春」のこと。これも今やなじみが薄いか。新暦の立春は二月四日前後で旧暦では一月になりそうだが、暦のズレで十二月にやって来ることがしばしば起きる。冬の十二月に来る立春なので冬の春▼思い浮かぶのは古今集の歌だろう。<年のうちに春は来にけり一年(ひととせ)をこぞとやいはむ今年とやいはむ>在原元方(ありわらのもとかた)。年の暮れに春=正月が来たが、この一年間をもう去年(こぞ)と言うべきなのか、まだ今年と言うべきなのかと迷っている▼暦とは関係のない話だが、あまり良い年だったとは言いにくい今年である。まだ十日以上残っているが、もう終わらせて、「去年」にしても構わぬ気分もあろうか。よい手がある。ちょっと早い初詣である▼コロナ感染対策として初詣の分散参拝が提唱されている。それはそうだろう。いつもの年のようなあの混雑に出ていくのは心配だし、気も引ける。気の早い初詣に神さまはへそを曲げないか。気休めにもならぬが、自分が神さまなら人のことを思い、密集を避けた「年内初詣」には一段と御利益を弾むだろう▼年の内に初詣を済ませてめでたき新春を先取り。<年の内に春は来にけり猫の恋>一茶。良いことがありそうな気はする。