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今日の筆洗

2019年03月10日 | Weblog

 <グローブの土手を叩(たた)いて春よこい>。野球俳句がお得意な作家のねじめ正一さんの句にこんなのがあった。グラブの「土手」という言葉と河川敷グラウンドの土手がなんとなく重なっていかにも春らしい光景が浮かぶ▼プロ野球はオープン戦に突入し、まさに球春という季節だろう。「球春」。それだけで特別な季節や浮き立つ気分を表す言葉は野球の本場米国では見当たらぬので、おそらく日本生まれの表現かもしれぬ▼語源は分からないが、ひょっとして、この句と関係がないだろうかと想像する。<春風やまりを投げたき草の原>。当時、野球に夢中になっていた正岡子規の句である▼一八九〇(明治二十三)年四月の句で「まり」とは野球のボール。長い冬が終わり、春が来れば、まりを投げたくなる。そんな気分は「球春」のわくわくする語感に近い気がする▼再生の季節の春がめぐってきてプロ野球は新シーズンへ。昨年の不振も絶望も関係なく、また最初からスタートしペナントを競い合う。自分の応援するチームは今年こそ優勝するかもしれぬ。この季節、ファンの心を占めるのは前向きな期待と夢ばかりであろう▼大リーグ格言に「四月と九月に見るものを信じてはならない」というのがある。四月の好調もシーズン終盤の追い上げも長くは続かないという意味だが、「球春」に見る夢だけはつい信じたくなる。

 
 

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