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今日の筆洗

2019年03月01日 | Weblog

 中国山東省の泰山はそびえ立つ姿のよさで知られ、孔子のゆかりなどもある世界遺産の名山だ。古くから「土壌を譲らず。故によくその大を成す」とたたえられた。小さな土も受け入れるから大きい。漢文学者村山吉広さんの著作に学んだが、度量の例えだという▼紛らわしいのは大山とも書く同じ読みの山である。勘違いする人も多い。「鳴動して鼠(ねずみ)一匹」のほうだ。ことわざの源は古代ローマで、中国とは本来関わりがない▼見上げる山の威容のような歴史的成果があらわれるか。そう思っていたら、どうも山違いだった。大騒ぎして鼠一匹ほどの成果もなく、昨日終わった米朝首脳会談である。非核化の前進に朝鮮戦争の終結宣言…。両首脳の親密な映像も期待を盛り上げた。それが、まさかの合意なしである▼ただ目先の成果を強く求めていたはずのトランプ米大統領が、踏みとどまったのには驚かされた。無法な国の要求に妥協で応じる危険は、歴史が示してきたところでもある。予定調和に流れない交渉であったのは確かだろう▼珍しくといえば失礼にあたるのかもしれないが、得意の交渉の力が、生きた可能性はありそうだ。席を蹴飛ばして終わったわけでもない。これも交渉の人らしさにみえる▼鳴動が続く余地は残されているようだ。鼠より大きい成果が出る余地もあろう。大を成す義務がまだある交渉にみえる。

 
 

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