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今日の筆洗

2019年03月27日 | Weblog

 

 ブタがイノシシにこう自慢した。「私ぐらい結構な身分はない」。食べることから寝ることまで人間が世話してくれる。ごちそうはいやというほど食べるからこんなに太っている。「私とお前さんとは親類だそうだが、おなじ親類でもこんなに身分が違うものか」▼イノシシは笑った。人間はただで食べさせてくれるほど親切ではない。「今にきっと罰が当(あた)るから見ておいで」。イノシシの言った通りだった。間もなくブタは人間に「殺されて食われてしまいました」-。『ドグラ・マグラ』などの作家、夢野久作の掌編『豚と猪(いのしし)』である▼誇り高く、人間が与えるただのごちそうを警戒する、その物語のイノシシだが、この餌だけはどうあっても口にしてもらいたい。愛知、岐阜両県で相次ぐ豚コレラへの新たな対策として、農林水産省は野生イノシシに対しワクチン入りの餌を与え始めた▼養豚場への感染を媒介しているのは野生のイノシシではないか。そう判断しての作戦らしい。日本での野生動物へのワクチン投与はこれが初と聞く。感染防止の効果を期待する▼問題は食べてくれるかどうか。イノシシの食べ物がそれなりにある自然環境の中、トウモロコシの粉などをまぶしたワクチン入りの餌に手というか鼻先を伸ばしてくれるか少々心配となる▼食べても罰は当たらないよ。そうイノシシに向かって念じるばかりである。

 
 

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