ファンタジアランドのアイデア

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試行錯誤を繰り返す中で、人も企業も成長していく  アイデア広場 その1473

2024-10-07 16:38:39 | 日記


 認知心理学の分野では、「メ夕認知」の能力を高めることが学力向上に役立つと言われています。メタとは、「何々をする方法」という意味になります。確かに、自分の学力を上げるためには何をすればよいかを知っている人は、大体成績が良い傾向があります。できる子どもは、自分が何をすべきかを知っているようです。逆に、何をすれば成績を高められるかを知らない子どもは、なかなか成果を得られない傾向があるのです。ここで言うメタ認知能力は、非認知能力の中の1つになります。この非認知能力は、一般的な知能指数や受験学力とは異なり、 意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーションなどの測定しにくいものになります。より具体的には、ストレスへの耐性、道徳心、自己肯定感、行動力、好奇心、探究心、我慢強さ、失敗を恐れずに失敗から学ぶ姿勢などになります。 勉強が本当にできる子どもは、生活の中で、そして学校生活の中で数多くの非認知スキルを獲得していると言われています。
学力を高めるためには、直接勉強とは離れている我慢強さや協調性などが大切になります。この能力は社会状況の中で、人的資本、無形資産、そして生産競争力を高める要素と重なってきます。生産性を高めるという目的に対しては、自分が「どうすれば生産性を高められるのか?」という課題が常にあります。生産性が高い人や企業と同じことをしても、高い生産性が得られるとは限りません。トヨタのかんばん方式を採用した企業では、半分以上が生産を落とす状況になりました。成果を生み出せ、業績を上げろと叫ぶことはあっても、「How to」はなかなか教えてもらえないものです。生産性という問いに対して、何か自分なりの方法を発見することが、課題解決の処方箋となるようです。この処方箋は、ベストでなくてもよいのです。コツコツと解き続けるプロセスの中から、実践的処方箋が生まれてきます。ここでは、何となく。答えがわかるようになるということが大事だと言われています。課題解決に役立つものは、直接的に絡んでこないインスピレーションのような格好で現れてきます。もっとも、コツコツと解く姿勢がなければ、このインスピレーションは出現しません。
 努力する子ども達に対して、親や教師は支援をします。この支援の仕方によって、子どもは、非認知能力を高めたり、低下させたりすることが分かってきました。米国コロンビア大学の心理学者が、この支援、具体的には「ほめ方」の実験を行っています。この心理学者は、クラウディア.ミュ一ラー教授とキャロル・デュエック教授になります。実験は、難易度の低いテストを公立小学校の5年生の児童400人に受けてもらうことから始まります。この成績に関わらず、「各児童には80点以上だったよ」、と結果を伝えます。そして、この児童を、無作為に3グループに分けます。1つのグループには、「頭が良い」と能力をほめました。もう1つのグループには、「よく頑張った」と努力をほめました。3つ目のグループには、「何もほめない」という対応をしました。結果は、意外なものでした。能力をほめたグループは、徐々に難しい勉強を避けるようになり、その後の成績が下がったのです。努力をほめたグループは、さらに難しい勉強に挑み成績を伸ばしていきました。そして、「何もほめなかった」グループに、興味深いことがおきました。何もほめなかったグループの方が、能力をほめたグループより難しい勉強に励むようになったのです。ほめ方によっては、その後の子どもの意欲や結果を左右することが分かります。ほめ方を間違うと、かえって害になる可能性があることを示す実験でした。
 これに似た有名な実験もあります。子どもが期待に沿う方向に変化することを、心理学では教師期待効果(ピグマリオン効果)といいます。この効果の研究が、幼稚園児と小学校1~5年生に対して知能検査の形式で実施されました。実験の責任者が、担任教師に「ハーバード大学習能力予測検査」を実施したと偽りの情報を与えるのです。「これらの子どもたちは、将来能力が伸びる子どもたちです」と偽りの情報を告げたのです。この偽りの情報は、実際の能力とは無関係にランダムに選ばれた子どもの名簿を提示することになります。半年後、同じ子どもたちに対して知能検査を実施したのです。驚くべきことに、伸びると教師が信じ込まされた子どもたちは、実際に知能指数が伸びていたのです。このピグマリオン効果の実験の結果が発表されるやいなや、心理学界、教育学会には大きな衝撃が走ったそうです。教師の期待だけで、子どもが伸びるという事実に驚きが起きたのです。
 でも、さすがに専門家は、結果だけでなくその経過も把握していました。教師を観察していたのです。対象の教師は期待の高い子どもに対して、称賛する割合が高く、叱責する割合が低くかったのです。期待の高い子どもに、多くのほほえみやうなずきを与え視線を向ける傾向がありました。暗黙のうちに行う期待に基づいた教師の行動が、子どものモチベーションを高めることに影響を及ぼしたことがわかりました。一方、期待の低い子どもに対しては、友好的なやりとりをしない傾向が指摘されています。これらの子どもに対しては、授業中に指名することも少なく、成功してもほめる回数はすくなかったのです。期待の大きさと少なさが、教育効果に影響を及ぼすことを示したことで、一つのエポックになった実験でもありました。この期待の効果は、何も子どもに限ってみられるものではありません。大人の研究からも、期待が有能感の形成に影響を及ぼすことがわかっています。
 子どもをほめれば、子どもはポジティブになって右肩上がりに成長するという考えは単純すぎます。ほめることだけが良いとされた場合、失敗は挑戦として許容されます。でも、何でもほめられる場合、失敗の問題点を分析できない子どもになります。失敗してもほめられるから、問題点を分析できないので、解決も改善もされなくなります。教師や大人は、「やった」行動や挑戦した気持ちをほめて、必要に応じて助言することが求められます。このような助言を受けて成長した子どもは、失敗を力に変えたり、反省を力に変えたり、悔しさをばねできるようになります。日頃から失敗と成功の両方を経験している子どもは、どんなことも自分で考えて行動ができるようになります。失敗や反省、悔しさ、そして成功体験を多く経験していれば、逆境をどう乗り越えるか分かる子どもになります。彼らは、ポジティブな感情とネガティブな感情との間を、大きく行き来きしながら成功にたどり着くという経過をたくさん経験しているとも言えます。この経験が、非認知能力を高めるとも言えるものです。
 最後になりますが、高い生産性を獲得するための定型化した方法はないと言われています。トヨタのかんばん方式は、高い生産性を誇っています。でも、この方式を今のレベルで稼働させるには、多くの人々の知恵と改善をつぎ込んできたのです。この知恵と改善の積み重ねた経験が、一人一人の工員の方にスキルとして持っていなければな、かんばん方式は成立しないものでした。それは、かんばん方式を取り入れた企業が、半分以上が失敗していることでも明らかでしょう。明快な解決方法がないから、様々なところからアイデアを集めて、試行錯誤を繰り返しながら、漸進的に解決に向かうことがベターになるわけです。自分に合った方法を少しずつ実践しながら、改善していく試行錯誤が求められます。人生100年の時代を迎えました。そのような中で、試行錯誤の活動を、幼児期、小中高校、大学、そして社会人になって、さらに、定年になってからも続けていきたいものです。