現代において、成功すると言われる人は、大学などの高等教育を受けている人たちが多数になっています。多くの子ども達は、その多数派になるために勉強に励んでいるようです。そこで、この多数派に少ない努力でなる方法を考えてみました。大学受験は、100点を取る必要はありません。大学の試験問題は、60~80%で合格ラインに達します。試験勉強は、最小の努力で最大の成果を上げることに尽きます。授業に集中していても、すべてを理解することはできません。でも、試験を合格点で切り抜けようと割り切れば、より簡単な方法もあります。配られたプリントから、かなり高い確率で試験に出題されます。配られたプリントは、すべてファイルしておくことも、試験対策には有効です。プリント類は、週に1~2回復習しておくなどの対策を体が自然に行うようになれば、試験期間中は楽に過ごせるものです。高校での中間試験や期末試験の問題は、大学受験の基礎となるという捉え方ができます。大学受験には、一定の知識を記憶し、それを使いこなすという勉強が必要になります。この記憶と実践の反復が、受験期間の勉強になるともいえるわけです。
たとえば、英語は、暗記量が多い科目になります。受験科目の中でも、得点が高く設定されています。英語を制する者は、受験を制するとも言われています。一般的には、単語を4000から5000語を記憶することが求められるようです。でも、高校の教科書に使われている単語は2000から2400語です。そして、その主要な単語を1800語程度記憶すれば、大学受験で求められるレベルになります。名詞、動詞、形容詞、副詞などは、同じような意味です。名詞1語を記憶すれば、他の3つは理解できます。つまり、1800語を覚えれば、4000から5000語を覚えることが容易になるわけです。英単語の学習時間は、30分間で英語20単語くらいが目安になります。1 日 30分で単語20個、毎日やれば1週間で140個、1ケ月で600個、3ケ月で1800個の単語を暗記できる計算になります。
学習において、自分の目指すレベルに至るまでには、必ず「退屈で単純なプロセス」が存在します。英語の単語1800語を覚える作業は、単調で反復の多いものになります。この習得を実現するためにやるべきことの大半は、基本の反復、すなわち簡単で退屈なことになります。「退屈で単純なこと」を投げ出さずに続けるためにはどうしたら良いのでしょうか。「力を伸ばすこと」と「力を維持する」のバランスをとることが難しいと言われます。要は、1800の単語力を維持しながら、英語力を伸ばす勉強をすることが求められるわけです。この単純な勉強をする過程には、スランプやモチベーションの低下が必ずやってきます。単純な学習で大切なことは、スランプをなくすことではなく、スランプの期間をできるだけ短くすることになります。調子のいいときと悪いときに訪れる大きなスランプの波を、できるだけ少なくすることになります。
受験生の不安は、人間は忘れる生き物であることを悟ることなのです。基本的に、人間は時間がたつと一度記憶したものも忘れてしまいます。受験で大事なことは、覚えた記憶が必ず忘れることを計算に入れて覚えなければならないことなのです。たとえば、暗記を達成期日まで10日間があるとします。暗記をする1回目は3日間、2回目は2日間、3回目と4回目は1日、4回目と5回目は半日ずつ、6回目と7回日は最後の2日間のうちの短時間といった具合に時間配分することにします。はじめの1~2回日は時間がかかるのですが、暗記の作業を重ねるたびに必要な時間も短縮できます。でも、このような単調な作業は、楽しくありません。できれば、1800語の単語を使った楽しい物語を作る発想が浮かびます。1800語の物語は、グーグルの音声機能では、5分以内で終わります。通学の時にでも、繰り返して聞けば、1800語の単語は忘れないことになります。もっとも、ビジネスの視点からは、物語を3つ程度にして、600語程度で楽しい物語やエッセイをつくることも可能でしょう。1か月間で覚えた600の単語を、5分間の物語を聞くことで、繰り返せるということです。
余談ですが、記憶には、明確ものと曖昧ものがあります。一般に、この記憶のレベルを4つに分類できるようです。それは、「親近感」、「見分ける」、「再生する」、「自動的習熟」になります。「親近感」というのは、一番弱い記憶になります。曖昧で、「ほとんど覚えていない」状態の記憶ともいえます。「見分ける」は、五択のような選択肢があれば正解がわかるレベルになります。自力では思い出せないけれど、選択肢を与えられればどの言葉が入るか思い出せるレベルになります。受験生のなかには選択肢の多い問題は良くできるが、記述式の問題は良くできないないというレベルの子どもがいます。このような子どもが、「見分けるレベル」になるわけです。「再生する」は、単語を聞いたら、すぐに意味もスペルも発音正確に答えられるレベルになります。受験生の目標は、この「再生する」のレベルになります。最後の「自動的習熟」は、思い出そうとしなくても、すぐに浮かんでくるレベルになります。いつも使っている言葉とか知識というものが、「自動的習熟」の記憶になるわけです。受験では、「親近感」のレベルを、「見分ける」、「再生する」、「自動的習熟」のレベルまで高めることになります。高める過程に達成感や楽しみが見いだせれば、充実した受験生活がおくれることになります。
全体像を理解していることのほうが、記憶がスムーズにいきます。一般的には、全体が俯瞰できる優しい教材を選びます。このような問題集を行えば、学習がはかどります。大局的な見地から、受験科目の試験範囲に目を通し、まずイメージとしてとらえることになります。大学入試などの勉強を始める場合、できるだけ早い段階で大学入試過去問題集(過去問)を実際に解いてみることが、最も効果が高いと言われています。これは、最終的にどういう問題を解ければ良いか知ることになります。出題される問題のレベルが分かれば、日々の問題を解くモチベーションが高くなります。過去問は基本の反復が多く、その基本問題に習熟しておけば、本番での高得点が約束されるわけです。最終的にどういう問題を解ければ良いか知ることで、努力の方向性が決まります。無駄な努力をする必要がなくなります。一般に、やさしい問題の中に難問を解く鍵が隠されており、やさしい問題をする中で難問に対処できる力がついていくようになります。ここで、注意しなければならないことは、一つの難しい問題に時間をかけすぎないことです。一つに固執すると、全体の繰り返しができなくなり、記憶の視点からマイナスになります。
基礎固めには、飽きがこないよう薄い問題集を繰り返し数多く演習することになります。様々な問題集がでていますので、自分に合ったものを選んで毎日続けることです。覚えようとする勉強の内容に興昧を持てば持つほど、記憶はスムーズになります。もし、得意科目を持っているならば、その科目の記憶は効率的に進みます。教材はなるべくやさしいわかりやすい入門書を選ぶことが良いようです。難問に固執しないで、そのような難問は飛ばして、やさしい問題で自信をつけた方がモチベーションは上がります。もっとも、一度できた簡単な問題は、2度目は飛ばして行うことになります。1冊の問題集は、繰り返すごとに、理解が進み、問題を解くスピードは上がっていきます。
受験勉強だけやっていても、頭をよくすることはできません。学業の成果は学校、家庭、塾のトータルによって決まるようです。授業に集中していても、分からない点は当然出てきます。このような場合、どんな些細なことでも、その日のうちに理解することが、とても大切になります。その日に理解したことは、忘れていくことが記憶の宿命です。でも、その日に習ったことは、その日のうちにマスターする習慣をつけることが重要です。これは頭で考えてやることではなく、体が当たり前のように行うようにしておくことが成功の秘訣です。勉強するためには頭を働かせるのではなく、身体が自然に動いてしまうようになれば、人生の成功を勝ちとったともいえるかもしれません。