東京の花卉市場では、6月以降、鉢物の売り上げが前年同月比3割超えた生花店では、10月は前年同月比6割増だった。観葉植物など鉢物の市場取引が、巣ごもり消費で伸びているのです。花卉園芸市場では、オフィス向けの需要は鈍いのです。でも、家庭向けが市場をけん引しています。コロナ前までは、手間のかからない多肉植物の人気が高かったのです。コロナ過の渦中にあっては、手間のかかる植物が売れています。家で過ごす時間が増え、鑑賞したり、育てたりしたい人が増えているわけです。コロナショック時においても、癒しの効果がある切り花への需要が増えているのです。コロナの第3波が始まっています。花卉市場は、さらなる消費の拡大に向かうかもしれません。
多くの植物の花は、芳しい香りを放ちます。被子植物は昆虫や鳥などを惹きつけるために、独特の形や色、そして香りをもつ花を咲かせます。植物の香りは、主にテルペン類、みどりの香り、フェノール系芳香物質に分類されるようです。テルペン類のメントールは、ミントの香り成分です。ミントやシソの香り成分には、癒しや薬効の成分が含まれています。ミントやシソの香り成分を飲むと、腸などの臓器の炎症に効くことは経験的にわかっています。シソの葉の抽出物は、鎮静剤や、消化不良に有効な漢方としても使用されています。フェノールには、細菌の増殖を抑え、紫外線などのストレスから体を守る作用もあります。花の香には、人を癒し、体に良い効果をもたらす物質も含まれていることになります。人も、昆虫や鳥のように植物に惹きつけられているのでしょうか。新型コロナの環境の中では、頼りになるツールのようです。
トマトといっしょにニンニクを植えることで香り成分であるアリシンが病害虫を防ぎます。万能薬であるルチンを、トマトの果実で増やす研究が行なわれています。ルチンには抗菌活性や抗癌作用といった薬理作用もあるのです。植物の匂いは、害虫の天敵を惹きつけ、周囲の植物にも危険を知らせる警報の役割を担うことはよく知られているところです。今後研究次第では、いまだ特効薬のない難病にも効くアロマ成分が見つかるかもしれません。香り成分をフレグランスとして置くだけで、癌などの病気を克服できればすばらしいことです。映像に合わせて、風や匂いを感じる体験型アトラクションは、今や当たり前になっています。このような体験型の仕掛けを、一般家庭用薬品に商品化する話も夢ではないようです。蛇足ですが、どなたか、観葉植物を家に置いている方と置いていない方の新型コロナの発症率を調べてもらいたいものです。観葉植物が感染抑制に役立つという結果が出れば、面白いこといなります。一つの花卉市場のビジネスチャンスを作り出します。
欧米では、伝統的に心理療法が盛んです。日常生活の中で、心の安らぎが得られないケースが多いのでしょう。欧米人は、喧騒の中にありながらも、静寂を保てる生活を求めているようです。そんな欧米人に、日本の茶道が注目されています。茶の湯は、精神の安らぎを求める支柱として禅宗の思想を模倣し、独自の発展を遂げました。彼らは、茶の湯から得られる安らぎに、大きな価値を見いだしているようです。茶道は、心の安らぎが得ることを満たしているのかもしれません。日本人が知らないうちに外国人が、日本文化の特異性に関心を持つようになっています。茶室飾られた一片の草花に、注意を払う欧米人がいれば、日本文化に精通した人と認められるようです。
切り花の世界市場は、キクやバラ、カーネーションなどがよく知られています。福島県の南部にある塙町は、東京の大田市場に年間20万本以上のダリアを出荷しています。この町はダリアのほかに、季節に応じて山から切り出したドウダンツツジや桜を出荷しているのです。塙町の農協は、2020年の東京オリンピックに向けての販路拡大に意欲を持っていました。この祭典前の2017年9月に、花卉栽培の国際認証システムのMPSの仮認証を受けています。MPSは、人にも環境にも配慮した花卉認証システムになります。この認証取得には、農薬、肥料、重油、電気、水、そして廃棄物などの管理が求められます。生産者は、竹の粉末や貝化石肥料を入れた土壌で栽培をするなどの工夫をしているのです。もちろん、消費者の要請があれば、花の香にある薬効を高める栽培も工夫していくでしょう。その工夫が、感染抑止のビジネスチャンスになっていくかもしれません。栽培技術の進歩と共に、アロマ成分の薬効も開発されていくことになるでしょう。
コロナ過は、生死に直面した人たちに自分の持つ最高の能力を発揮できる場を用意したともいえます。人類は、穀物生産を向上させることにより、飢えからの解放を実現しました。現代文明は「快感」のために、生存上必ずしも必要ではない「無駄」を行っています。生理的な快感を追いかけるだけでは、有用な人間とはいえなくなってきています。人間は文化と文明を手に入れてしまいました。極限状態の中で、文化と文明の英知を有効に使えば、今まで到達できなかった高見のステージに到達することができます。新型コロナウイルスワクチンの開発にしても、最高のアイデアと最高のスピードで実現できる場が用意されている環境だということです。極限状態がもたらすコロナショックの克服は、人類を心身とも豊かにすることでしょう。
ヒトは進化の過程で、「快感」と飢えからくる「不快感」に対応できる仕組みを獲得しました。技術の発達により、快感のみを受け入れる環境が整いすぎました。私たちは、不快感に耐える必要がなくなったのです。疲れたら休み、腹が減ったらお腹を満たすという快感だけを味わっていれば良い環境になりました。でも、地球には不都合な状態が生じてきています。この不都合な事態には、経済の「右上がり」の原理を見直すことで対処する人たちが現れました。人類の不都合は、大量の炭素の排出が原因とされています。そこに、新型コロナのパンデミックが加わり、全世界が緊張状態に陥っています。現在の不都合な極限状態は、人類がめったに経験しない未知の環境です。大正時代に関東大震災が発生して、その直後の復興のときです。人々は食べることや着るもの以上に、映画や芝居をなどの娯楽を熱烈に求めたのです。今回の極限状況を通り抜けるには、癒しという花弁が一つの杖の役割を果たすかもしれません。