TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」171

2019年10月15日 | 物語「約束の夜」

「……女の、勘」

満樹と耀はざわざわする。

「一番アテにならないやつ」
「ちょっと女の勘をなめないでよ」

いやそもそも、
マサシ男だし。

「まあ、とりあえず、
 マサシの意見を聞こうじゃないか」
「うふふ、ありがと」

ワタシが考えるに、と
マサシは歩きながら語り出す。


「多分、パフェとか食べてるわ」


バチーン!!

「え!?ぶった!!
 無言でぶったよこの人!!」
「俺は冗談は嫌いだ」
「すごい、人を見下すようなこの視線!!」
「落ち着け耀。マサシも。
 今のは、俺も、ちょっとモヤっと来た」

もしかしたら、いま京子は大ピンチかもしれないのに。

「理由だけでも聞いてよ」
「………それなら、まぁ
 言ってみろ」

なんで京子が帰って来なかったのか、
理由は色々考えられるけれど。

「きっと気は張り詰めているかもね。
 それなら、甘い物食べて気分をリセットしたいじゃない。
 今この時期ならちょっと冷たいスィーツとか良いわよね」

「「…………」」

うーん、そうかもしれないし。
そうじゃないかも。

「まだ、この村に居るのならば、だけど」
「もしかしたら、2人とも
 裏一族に襲われたとも考えられるな」

連れ去られたのならば
探しようが無い。

「………満樹はチドリの事
 もっと何か知らないのか」
「あまり詳しくは。
 北一族ってだけで、あ」

そうだ、と満樹は呟く。

「何か思い出したのか」
「そういえば、
 卸しの仕事をしていると言っていたな」
「その店を当たってみよう」
「そうだな、こっちだ!!」

「ちょっと、スイーツのお店は!?」

マサシの女の勘は却下された。


「あぁ、チドリね。今日は来てないよ」

以前チドリと出会ったレストランの店員は
首を振る。

「………そうか」
「ここでもない、となると」

チドリも、姿を見せていない。
これは結構逼迫した状況なのでは。

そう言えば遊郭にも通じていた、
次はそこを当たるか、と
満樹と耀が考えている所に、店員が言う。

「いやいや、そもそも
 ウチの仕入れは3日に一回だからね。
 違う人が来ることもあるし」
「あ、ねえねえ、あそこなら
 毎日来ているんじゃないか」
「そうだね、
 回転が速いから毎日納めないといけないって
 言ってたね」

店員達がそうだそうだ、と口にする。

「「????」」

あそこならば、と言われ辿り着いたのはあるお店の前。
ちょっとおしゃれな、ふわふわのパンケーキとか有名なお店。

行列とかもできていて、男子入りづらいやつ。

「結局スイーツの店に」
「ほらあ、だから言ったじゃない」
「うわぁ、………帰りたい」
「行くわよ、京子ちゃんの情報があるかもなんだから!!」

3人は恥を忍びつつ、女子だけの行列に並ぶ。

男子だけだね、
友達同士で来たのかな、と
回りの女子の会話を心を無にして聞き流しつつ。

「この時間、無駄じゃないのか」

マジ女子信じられない、と
耀が頭を抱える。

「ああ、チドリね」

やっと巡り巡って、
店の中に入った所で、店員に問いかける。

「今日は別の人が納めに来たよ。
 なんでも急にお休みしてるって」
「そうなのか」

これは、いよいよもって。

「まずいんじゃないの?」

「あでも、ほら」

あっちと店員は指差す。

「今日はお客さんとして来てくれてます」

「え?」
「お客?」
「うん?」

すすす、と指差す先を見る3人。

窓際のテーブル席。
外の景色も眺めつつ、角の席だから
ちょっと2人だけの空間も楽しめる、
そんなベストな席に。

「チドリ、と」
「あ、あれって」

あーん、と大きな口でパフェを食べている京子。

「「パフェ食べとる!!!!!」」

「ほらー、だから言ったじゃない!!」
「京子、おま、おまーー!!」
「お客様声が大きいです!!!」

思わず大きな声が出る満樹。
マジか、と、声を無くす耀。

「あ、あれ?満樹!!」

うわーっと京子も驚く。

「どうしたの、予定より随分早い」
「どうしたの、はこっちのセリフだ。
 宿に行ったら戻ってないと言われて
 随分探し回ったんだぞ」

「え、えっと」

京子はスプーンを持ったまま話す。

「先日裏一族に取り囲まれて、
 チドリの魔法も破られちゃうし、
 これ、結構、危ないのかなって」
「京子は宿に1人だろ。
 夜狙われたらいけないと、行動を共にしていたんだが」
「一晩共にしたって事!?」

そこんところに食いつくマサシ。

どちらさま、と戸惑う京子に
チドリがフォローを入れる。

「俺はソファで寝てたよ」
「あの、ベッドはゆずってもらっちゃった」
「ホントに!?ホントに!?」

「今回は襲撃に備えて
 そんなムードでも無かったからな」

はーっとため息をつく満樹。

「京子、とは言え、もうちょっと、
 警戒という物をだな」

「それは、そうなんだけど、
 チドリなら大丈夫かなって」
「おまえ、チドリから花まで貰っておいて
 それはあんまりというか」

もうちょっと汲んであげて
男心という物を。

「そういうのが迂闊だって言うんだ。
 恋人でもないだろ、お前達」

「そそそそ、それは」

そう言う話しは止めてよ、と
赤くなる京子。

「俺は、大歓迎だぜ!!」

ははは、とチドリ。

「京子、男は狼なんだぞって、
 前にも言っただろうが!!」

お気をつけなさい、と満樹。
今日はちょっとおかあさんモード。

いや、これお兄さんモードなのか。

「もう満樹、急にお兄ちゃんみたいな事」

そこで、京子は
満樹の後ろ、マサシの影に隠れていた人に気付く。

「…………うそ」

あ、と言葉を無くす。

色々言おうと思っていたのだろうが、
ふー、とため息をつき
耀が声をかける。

「ひさしぶりだな、京子」






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