TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」173

2019年10月22日 | 物語「約束の夜」

「は~、落ち着く」

ハーブティーを一口啜り
ふはー、と息を吐く京子。

「女子ってハーブ好きだよな」
「アロマ、とか」
「加湿器とかにいれるやつ?」
「俺、普通の茶を飲みたい」
「クセがあるからな」

俺の知り合いにも苦手な奴がいる、と
頷く満樹。

「そういうの、
 このお店で言うのどうかと思うわ」

ちくり、とマサシ。

女子向けの、行列ができる、
パンケーキとかの
スウィーツなお店。

「ま、京子ちゃんと耀は
 久しぶりの再会でしょう。
 二人っきりで積もり積もる話しをしたらどう?」

ね、と
席を立つマサシ。
そうでしょう、と満樹とチドリにも目配せをする。

「そうだな、先に出ておくよ」
「兄が一緒なら大丈夫だろうし」

続いて立ち上がる満樹とチドリに
気を使わせて申し訳無い、と
京子がお礼を言う。

「2人ともありがとう。
 えっと、マサシも」
「どういたしまして」

ばちん、とウインク。

「…………、ちょっと、満樹」

満樹の腕を引いて、
いったん、店の端に移動する京子。

「あの、マサシって人は
 なんなの!?」

なぜ、当然のようにメンバーに居るのか、と
そりゃそうだ、な質問をする京子。

「なんかどこかで見た様な顔立ちだけど」
「うん、そうだな」

本人はあまり気付いていないが
京子とマサシ、
並んでみると確かに似ている。

「マサシにも手のひらにアザがある」
「ええっ!?」

そうなの!?と
驚く京子。

「マサシもアザ―ズだったのね」
「なんだアザ―ズって」
「アザを持つ私達の事よ」
「アザ―ズって」

ネーミングセンス。

「と言うことは
 マサシも裏一族に狙われているのね」

なんだか、凄いわ、と
京子が言う。

「私達って
 それぞれの一族に1人ずついるのかしら」
「………」
「満樹、ちょっと、満樹!?」
「あ、いや、なんでもない。
 耀とちゃんと話しをしてこい。宿で待ってるから」
「うん、ありがとう。
 行ってくるね」

耀の言うことを信じるのならば、
京子は妹で、
手のひらにアザを持つ者達は
皆同じ父親。

「ねえねえ、
 元気ないわよ満樹、どうしたの?」

煮え切らない満樹を心配して
マサシが声をかける。

「耀はどこまで京子に話すのだろう」
「それは、お兄ちゃん任せね。
 兄妹の事だもの。
 隠し通すってのなら、話しを合わせましょう」
「京子、は」

裏一族と戦いたい訳じゃない。
兄を捜していただけだ。
そして、
その兄もこうやって見つかった。

「俺は京子を西一族の村に
 返してやるべきだと思う」

「争いには巻き込みたくない、と」

満樹は頷く。

「ここからは、
 俺達だけで対応すべきだ」

「そう言う訳にはいかないな」

黙って2人の後を付いてきていたチドリが
話しを遮る。

「どういう意味だ」

なに、単純なことだ、と
チドリは言う。

「京子がそれで納得するかな。
 もっと京子の気持ちも考えてやれよ」
「危ない目に会うかもしれないのに」
「俺達が守ってやればよい。
 だいたい、耀を置いて
 京子が1人帰ると思うのか」
「そうねえ」

絶対納得しなさそう。

「無理にでも、だな」
「まあそう急に兄貴ぶるなよ。
 ツイナやヨシノもまだ帰って来てないのだから」

仮に京子を帰すとしても
2人に挨拶も無しにとは行かないだろう。

「まあ、そうだけど」

「あなたはあなたで
 京子ちゃんの事考えてるのね」
「ああ、本気で考えているよ」
「ラブ、かしら」
「ラブだね」

いいわ~、素敵だわ~、と
しばしマサシがうっとりした後

「おおっと、ちょい待ち!!」
「うお、声、低っ!!」
「ワタシの地声のことはいいのよ」

マサシはチドリに問いかける。

「あなた、手のひらにアザとか
 無いでしょうね!?」

「?」

「いいから、見せて!!」

そうだ、と満樹もハッとする。
手のひらにアザを持つ者は
同じ父親だと言う。

つまり、チドリも京子とは。

「なんだ、急に、ほら」

チドリが手のひらを見せる。






NEXT