TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」118

2018年11月23日 | 物語「約束の夜」

「いらっしゃい」

受付のおねえさんが現れる。

「今日はどうされるのかしら?
 あら、ふふふ。二人で休憩していく?」
「ええっと?
 そうね、休憩です!!」
「京子、違う。
 そういう休憩ではない」

チドリはため息をつきつつ、
カードを出す。

「今日は“おしゃべり”に来たんだ。
 席を準備してくれないか」
「はぁい。
 2名様ご案内」

京子はチドリの後に着いていきながら
辺りを見回す。
煌びやかな雰囲気の店内だが
大騒ぎしている人は居ない。

「こういう所は
 初めて入るわ」
「そう。
 まぁ、折角だから楽しんでいけば」

ここ、結構料理も美味しいから、と
チドリが腰掛け、
京子も続いて座る。

「こんにちは」

と、数人のおねえさんが
飲み物や料理を持って現れる。

「あら、その子、西一族ね。
 チドリが女の子連れてくるなんてめずらしい」
「京子って言うんだ。
 かわいいだろ」
「だからって、からかっちゃダメよ。
 ふふ、京子ちゃん、こんにちは」
「こ、こんにちは」

凄いなぁ。
綺麗な人達だな、と
京子は雰囲気に圧倒される。

満樹やツイナが来たら、
ツイナははしゃぎそうだな、と
思い少し可笑しくなる。

「チドリ、最近どうしていたの?」
「どうも何も」

ふぅん、と、彼女たちの会話を横で聴く。
何だかチドリは通い慣れてる。
もしかして結構な頻度で来ている?

「ところで、京子は人捜しで
 北一族の村に来ていて―――」

ふと、チドリの言葉にハッとする。

「待って!!
 ちょっと、ストップ!!」
「「「!??」」」

京子はチドリをひっぱり
席を離れる。

「???
 どうしたんだ、京子。
 兄を捜しているのだろう」

「そうだけど」

分かっている。
チドリは情報を仕入れようとしてくれている。

けれど。

「けど?」
「あの」
「うん?」

「お兄ちゃんがこう、
 もし、このお店に通ってましたよ~って情報なら
 ちょっと心の準備が必要というか」

「そこ!?」
「そこよ」
「耀だって男だぞ」
「分かってるわよ!!」

でも、そこは大事だもの、と京子は言う。

「じゃあ、聞くの止めとく?」
「うああ」

暫く一人で自問自答して
京子は深呼吸する。

「情報は聞いておきたい。
 もう大丈夫。うん。
 なんであれお兄ちゃんはお兄ちゃん」

よし、戻りましょ、と
気合いを入れ直した京子とは反対に
チドリはその場に留まる。

「チドリ?」

「なぁ、それなら
 俺はこういう店に通い慣れてる訳だけど」

なんだかとても距離が近い。

「がっかりした?」


NEXT