浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ヨーゼフ・レヴィーンの明快な様式美と完璧なテクニック

2006年10月25日 | 洋琴弾き
ヨーゼフ・レヴィーンといふ露西亜生まれの洋琴家との出会いは数曲のショパンのエチュードの圧倒的な演奏が最初だった。高度なテクニックをひけらかすどころかそのやうな低次元なことは意に介さず、完璧が当然と言わんばかりのオクターブの連続を猛烈なスピードで簡単に弾いてのける作品25の10。今聴いても、30年前に初めて聴いたときの興奮が蘇る。

1890年、16歳のレヴィーンはアントン・ルービンシュタインの指揮の下、エンペラーを弾いてデビューしたといふ。ラフマニノフ、ホロヴィッツなど露西亜の洋琴界には大物が揃ってゐるが、レヴィーンもそれ以上の評価をされて然るべき巨匠である。しかし、残念なことにレヴィーンはLP1枚に全録音が収まってしまふくらい録音が少なく、今では全く忘れ去られてゐる。

豪快なショパン演奏には賛否両論があるだらうが、レヴィーンの演奏は少なくとも他の露西亜洋琴家のやうな荒っぽくてやたらガンガン叩きまくるショパンではない。ベートーヴェンのエコセーズなどの可愛らしい小品ではその音楽性豊かな表現に息を呑む。

レジーナ夫人とのデュエットにも名演が残されてゐるので、別の機会にご紹介したい。

音源は、米國Novello Recordsのカセットテープ NVLC902。



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