浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ショパンコンクールの生みの親 ジュラヴレフによるショパン「スケルツォ第2番」

2009年09月12日 | 洋琴弾き
ショパン競技会の生みの親であるジュラヴレフのCDを取り寄せて聴いてゐる。波蘭周辺の洋琴家は世間ではあまり知られてゐない。しかし、大手レコヲド業界から発売されるありきたりの無難な演奏には無い実に面白い表現や興味深い演奏解釈が犇めき合ってゐる。「ほんまか?ほんまか?日本、文化国家!」の歌詞で有名なあの作品一つとっても新鮮な発見の連続である。

ミハウォフスキの弟子でショパン音楽院の教授だったジュラヴレフの演奏は痛快なほど切れ味のいいテクニックと豪快な解釈によるデモーニッシュな展開を存分に愉しむことができる。中間部や再現での主題のピアニッシモの美しさは、豪快さとのコントラストが大きく、更にドラマティックな表現に感じるのである。僕の中ではこの作品の決定版に決まった。コーダに突入する際に、一瞬のパウゼに度肝を抜かれる。このやうに演奏するのには何らかの理由があるのだらう。

ショパンの演奏解釈については、即興的なパラフレーズやアゴーギグだけでなく、楽譜そのものによる違いがある。ショパンの楽譜については、研究家や演奏家が様々な研究成果を発表しあっており、自筆譜に始まってナショナル・エディションに至るまでには、「初版」「ミクリ版」「パデレフスキー版」「ザウアー版」「1000部限定版」「ねこにおばん」や「ショパン」など実に沢山の版がある。こういったことを研究したり演奏したりしながらショパンの実像に迫っていく仕事は夢があって素晴らしい。次に生まれ変わったときには、是非やってみたいと思ってゐる。

盤は、波蘭SeleneによるSP復刻CD CD-s9806.42。


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1 コメント

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ショパンの演奏解釈 (夏目)
2009-09-24 10:43:49
ご無沙汰しておりますが、お元気そうでなによりです。
ジュラブレフから話は逸れてしまいますが、
先日、浜松楽器博物館の館長さんの講演を聴く機会がありました。
ピアノという楽器とそれに伴う演奏スタイルは、「進歩」したのではなく、「変化」したのだというお話をわかりやすく解説しておられました。
私も全く同感です。

今のピアノやピアニストの、ゴージャスでシリアス(ナルシスティック)な演奏を善否定する気はないのですが、それが正当的なショパンの姿であると思い込んでしまうのはクラシック音楽界にとっても取り返しのつかない事だと、もっと多くの人に気がついてほしいと思います。


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