浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

オイゲン・ヨッフム コンセルトヘボウ管絃團との来日公演 ブルックナー

2007年11月18日 | 指揮者
今から30年前、僕は大阪フェスティバルホールで初めてコンセルトヘボウ管絃團の演奏を聴いた。黒檀のフルートが印象に残ってゐるが、弦や木管の響きの美しさに息を呑んで聴いてゐたのを思ひ出す。その9年後にヨッフムが同オケを率いて再来日したのを僕は知らなかった。おそらく仕事に追われる毎日で、演奏会に行くゆとりさえ失ってゐたのだらう。

記録を調べると、なんと明石市でブルックナーの第7を演奏してゐたのだ。1986年9月25日のことである。そしてその翌日のフェスティバルホールでの同作品の演奏がヨッフムのわが国でのお別れの演奏となったのだった。

今、僕はこの演奏家を聴き逃したことをとても残念に思ひながら、同年9月17日の昭和女子大学人見記念講堂でのライブ盤を聴いてゐる。第1楽章最後に弦によって主題が回想的に歌い上げられる部分など、巨匠の時代の最後の指揮者・ヨッフムの白鳥の歌に聴こえる。

続く第2楽章の風格ある演奏はこのうえなく雄大なスケールで心に迫るものがある。この演奏を涙も見せずに平然と聴く人は、おそらく相当な修行を積んで、感情を殺すことのできる御仁か、音楽を全く理解せぬ凡人のどちらかだ。

ヨッフムはこれからも会場録音がどんどんCD化されるだらうし、今以上に正当に評価を受けるやうになるにはそれほど時間はかからないだらうと思ふ。

1987年9月26日、僕はいったい何をしてゐたのだ。世紀の名演奏を聴き逃した悔しさは計り知れない。

盤は、NHK提供音源によるCD Altus ALT015/6。


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