浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フェリックス・ガリミア弦楽四重奏団のラヴェル

2006年11月05日 | 提琴弾き
ラヴェルの弦楽四重奏曲の自作自演盤と云へるレコヲドがある。演奏はフェリックス・ガリミア率いるガリミア弦楽四重奏団によるものだが、作曲者自身がスーパーヴァイズを行って録音されてゐる。1934年、巴里での録音。

1910年5月12日に維納に生まれたフェリックス・ガリミアは維納コンセルバトアールでカール・フレッシュに学び、トスカニーニの下で演奏したのを機に米国に渡った。NBC交響樂團の第1提琴奏者を経て、1954年から56年にはSymphony of the Airのコンサートマスターを務めた。その後、ジュリアード音楽院で教鞭をとり、多くの名演奏家を輩出した。

そのガリミアが維納在住時代にポリドールにいくつかのレコヲドを残してゐるが、これらは殆ど忘れ去られてゐる。ドライな録音であるため、豊かな響きを期待してはいけないが、その分、作曲者の同時代の息遣いがより生々しく伝わってくるやうに感ずる。第1楽章の甘美な歌と激しいテンポの揺れ動きは、これがラヴェルの意図してゐたものなのか、とあらためて感じ入るものがある。

抑揚の付け方、明確な縦の線とアンサンブルも見事だ。それもそのはずで、メンバーを見ると、第2提琴がアドリーエ・ガリミア、ヴィオラはレネ・ガリミア、そしてセロがマルグリーテ・ガリミア、つまりガリミア・ファミリーによる演奏だったのである。唖然とさせられる。

このCDにはダリウス・ミヨー監修によるミヨーの弦楽四重奏曲第7番も納められており、こちらも歴史的に貴重な録音である。

盤は、米国Rockport Records社によるSP復刻CD RR5007。


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