浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

チェルカスキー グノーの「ファウスト」よりワルツ

2009年11月28日 | 洋琴弾き
シューラ・チェルカスキーのHMVへの全録音を収めたCDアルバムを入手した。1956年から58年に録音されたもので、残念ながらSP録音ではない。ショパンのバラード3番の2種のテイクが入ってゐたりして何か儲けた気がする。

ショパンの小品が5曲あり、どうしても此処から聴き始めたくなるのは洋琴好きは皆同じだらう。特に作品27-2の夜想曲では極上の恍惚感にひたることができる。不用意な音は一切無い。どの音符も音色、音価など周到に準備されてゐるやうに聴こえる。しかも全体の流れからは前時代の浪漫の香りが漂ふ。とても聴いてゐて心地よい演奏だ。しかし、今日は好きなショパンではなく、グノーのワルツにより惹きつけられたので取り上げたいと思ふ。

グノーが歌劇「ファウスト」を発表して2年後に、リストが早速洋琴用の小品に仕立て直した作品である。3つの場面からエッセンスを抽出して、あの有名な円舞曲をメインテーマに豪快さと繊細さを巧みに取り混ぜて愉しませてくれる。チェルカスキーに正にぴったりのショウピースだ。

こんなのを演奏會のアンコールなどで生で聴けば、さぞ満足感と幸福感で腹一杯になって帰宅することができるだらう。そのやうな妄想をしながら聴いてゐる。友人宅をお邪魔した際、江戸でチェルカスキーを聴いたときのことを聞かせてもらったが、其の内容はうらやましい限りだった。当時の僕は「貧乏金なし」(金が無く、仕事を探しに行くこともできないのでいつまでも金が無いこと)の状態で、とても江戸まで聴きに行くことは叶わなかったのだ。チェルカスキーは今年が生誕100年の節目に当たり、僕の祖母の2歳年下だが、江戸での公演の後、間もなくこの世を去った。

明日は、日曜日だといふのに対談形式のステージが待ってゐて落ち着かない。台本を見直して準備しやうと思ふと余計に音楽を聴いたり本を読みたくなるものだ。いっそのこと、潔く、普段読まない哲学書などを読み耽ってみやうかと思ってゐる。

盤は、英國First Hand RecordsによるリマスタリングCD FHR04。


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